其の四 ありがとうでござる!の巻
「そうじゃな、最後の勝負は・・・」
椿姫は手をあごの下に持ってきて、考える仕草をする。
!
「隠れ身の術で対決じゃ」
「隠れ身の術?」
ひげ太夫はいぶかしげに聞きなおす
「さようじゃ、ソチも妖術使いならば、姿を消すことぐらいできよう?」
「当たり前だ、そんなもの朝飯前よ」
「ほほう・・・」
「ルールはいたって簡単。姿を消して先にわらわが見つけたほうの負けじゃ」
「・・・要はかくれんぼか?」
「それを言っては元も子もない!」
「まあいいだろう・・・。このワシの妖術が負けるはずがないからな」
「決まりだな」
その時、椿姫が小声で月影に語りかける。
ボソボソ・・・
(ふもとの村の神社に来るのじゃ月影・・・)
(何故でござるか・・・?)
(いいから言うた通りにせい・・・)
(ギョイでござる・・・)
「なにをコソコソしておるのだ?」
「なんでもない!準備はいいのかハゲ太夫?」
「もちろんだ!このワシに準備など必要ない」
「よかろう、では始め!」
ドロン!
ドロン!
モワモワモワ~
椿姫の掛け声と共に、月影とひげ太夫の姿が消える。
「おお!どこじゃ二人とも全く姿が見えんぞ!」
シーン・・・
椿姫の語りかけに返事は返ってこない。
二人とも煙に紛れて、遠くに行ったのは間違いなさそうだ。
「これでよし!」
椿姫は一人つぶやくと、林道のあぜ道を駆け下りていくのだった。
-時は夕暮れ-
辺りは薄暗くなって、村祭りはクライマックスにさしかかっていた。
人でにぎわう神社の高台に椿姫の姿があった。
「月影、月影はおるか?」
「ハッ、ここに」
ドロン!
モワモワモワ~
煙と共に月影が姿を現す。
「勝負はどうなったのでござるか?」
「勝負?そんなもの、ハナからする気はないわ」
「んな!?」
「ヤツはバカじゃから、いつまでも隠れたまま暫らくは、姿を現すこともあるまい」
椿姫の言葉に呆れ返る月影。
「月影これを」
そう言いながら椿姫は、小さな袋を月影に手渡す。
「これは?」
「ハゲ太夫から巻き上げた金じゃ。この金でさらわれた娘たちを買い戻して、村に返してやるとよかろう。足りない分は爺のヘソクリでまかなえ」
―その頃、お城では―
「へっぶしょ~い!誰かが噂をしておる」
爺やは鼻水をたらしながら、鼻をすする。
「ひめ~、姫はまだか?月影は一体なにをしている?」
そう言いながら、お城の廊下をウロウロするだけの爺や。
「そしてヤツの似顔絵の手配書を村に配り、娘たちに気をつけるように伝えておけ。もしもわらわを探しに城へ来たなら、とっ捕まえるように城の者にも手配書を配ってな」
「ギョイでござる」
その時、ふもとの神社で歓声が上がる。
「おっ、いよいよ始まったようじゃ!」
「?」
パーン!
村の子供たちの歓声と共に、小さな花火があがる。
「わらわは、これが見たかったのじゃ」
そう言いながら椿姫は、隣に立つ月影の手をそっと握ってくる。
高台の上で小さな花火を眺める、椿姫と月影。
花火が上がる度に子供たちは喜び、大人達は笑顔でそれを見上げている。
「日々の生活も楽ではなかろうに、こうして明るく過ごしてくれておる。まっこと、ありがたい事じゃ。かと思えばハゲ太夫のように、人々を苦しめ楽をして金を稼ごうという者もおる・・・」
だが椿姫は花火を見上げながら、それ以上何も言わなかった。
小さな花火は十数発であっという間に終わってしまったが、椿姫はご満悦のようすだった。
「ありがとうじゃ・・・、月影。楽しいひと時であった」
そう言いながら椿姫は、月影にチョコンと頭を垂れる。
「もったいないお言葉。椿姫のためならば」
「ふふ・・・、帰ろう。爺がヤキモキしながら心配しておるであろうからな」
「ギョイでござる」
そう言いながら二人は手を繋いだまま、神社の高台を後にするのであった・・・。
―その頃、お城では―
「へっぶしょん!」
鼻水をたらし、大きなくしゃみをする爺や。
「ひめ~、姫はまだ戻らぬか!?」
おしまい
連載中のマブイ【魂】プロジェクトで濃厚すぎる展開に、ちょっと息抜き感覚で書いてみました。(伏線張りすぎの自業自得 笑)
いかがだったでしょうか?
自分自身も書いてて楽しかったので、またいつか同じ設定で何か書ければなぁ、とも思いつつ・・・。
読んでいただき、ありがとうございました!




