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龍になったので会社辞めました ~ヒト化したら美少女で、今は巫女やってます~  作者:


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第4話 巫女服

 神社の朝は、思っていたよりもずっと早かった。

 社務所の小部屋で目を覚ました時、瑞月はまず、自分が人の姿のままで眠っていたことに安堵した。昨夜も途中で龍へ戻るかもと不安に思っていたが、朝までこの姿を保てていたらしい。


 肩へ落ちた銀髪を払い、薄い布団から起き上がる。まだ完全に慣れたわけではない。だが、少なくとも昨日よりは、この身体の重さが馴染んでいた。

 腹の減り具合も、思ったほど酷くはない。空腹感が消えたわけではないが、ヒト化した直後のあの遠慮のない腹の鳴り様とは違う。朝食前らしい、ごく普通の人間的な空き方に近い。白龍の姿でブレスを吐いた後の、内側をごっそり削られたような飢えとも違っていた。


 窓の外には、冬の朝の光がまだ白く差している。白龍辰巳神社の空気は静かで、冷たい。けれどその底に、目には見えない流れがあることを、今の瑞月はなんとなく感じ取れた。玉藻が言うところの龍脈だ。ここで眠り、ここで起き、ここで同じ姿を保っていると、器の収まりが少しずつよくなる――昨夜の説明を思い浮かべながら、瑞月は身支度を整え、簡易和装の襟を直していた時、襖の向こうで宗佑の咳払いがした。

「起きてるか、瑞月さん」

「はい。どうぞ」


 襖が開き、宗佑が箱を抱えて入ってきた。妙に丁寧に風呂敷で包まれた、細長い箱だった。

 瑞月はその時点で、なんとなく嫌な予感がした。

 宗佑は、もったいぶるように一歩前へ進み、その箱を座卓の上へ置く。

「用意した」

「何をですか?」

「何をって、そりゃお前」

 少し誇らしげな顔だった。

「巫女服だよ」

 その一言で、瑞月の思考が止まった。


 “巫女服”

 その存在は、もちろん知っている。というか、ずっと前から知っていた。見たことも、想像したことも、人並み以上にある。けれど、それが今、こうして自分の目の前へ現実のものとして置かれると、単語ひとつの破壊力がまるで違っていた。


 宗佑は反応の止まった瑞月を見て、少し慌てたように言葉を継ぐ。

「いや、ほら。神社で動くなら、正式な格好があったほうがいいだろ。今のその白いのも似合ってるけど、あれは最初に出来上がってたやつだし……」

「そう、ですね……」

「その、別に急かすつもりはないが、形から入るのも大事だからな。人は見た目で納得するところがあるし」

 最後の一言に、だいぶ本音が混ざっていた。

 だが、間違ってもいなかった。


 瑞月は箱を見つめたまま、小さく息を吐いた。嬉しい。まずそれがある。次に胸の奥が、馬鹿みたいに浮き立っている。長い間、妄想の中で着ていたものが、今は自分のために実物が用意されている。それだけで、頭のどこかがくらりとした。


 その一方で、躊躇いもある。これを着るということは、ただ可愛い格好をするという話ではない。白龍辰巳神社の巫女になる、ということだ。ヒト化した白龍が神社に居候しているだけの存在から、一歩先へ進むことでもある。


 宗佑は微妙にそわそわしながらも、それ以上は踏み込まなかった。箱だけ置くと、「じゃ、俺は表を見てくる」と言い、逃げるように社務所の外へ出ていく。

 襖が閉まると、静けさが戻ってきた。

『逃げたわね』

 いつの間にか窓辺にいた玉藻が、呆れたように言った。

「逃げましたね」

『あれでも気を使ったつもりなんでしょうよ。ああいう時だけ妙に常識的なのよ』

「常識がないよりは助かります」

『そういう返しが、もうだいぶ板についてきたわね』


 瑞月は答えず、風呂敷へ手を伸ばした。

 風呂敷を解き、箱の蓋を上げる。中には白衣と緋袴が、きちんと畳まれていた。白は真っ白すぎず、少しやわらかい色味で、緋は冬の朝に火を落としたような深みがある。決して豪奢ではない。だが、神社の空気と並べた時、自然に馴染みそうな質感だった。


(巫女服だ)

 あたりまえの感想しか出てこない。

(本物の巫女服だ)

(俺が、いや……私が、これを着るのか!?)


『顔に出てるわよ』

「出てません!」

『出てるわ』

 玉藻は箱の前へ寄ってくる。

『浮かれてるのと怯えが半々。見ていて退屈しないわね』

 まるで楽しんでいる。実際、楽しんでいるのだろう。

 瑞月は箱の中の白衣へ指を伸ばした。さらりとした布の感触が、指先へやさしく返ってくる。


「……これ、どう着ればいいんですか?」

『そこからなのね、あなた』

 玉藻が半眼になる。

『理想の巫女を散々こね回しておいて、実物の着付けは素人?』

「想像するのと着るのとは別でしょう」

『その言い分は正しいから腹が立つわね』

 そう言いながらも、玉藻は立ち上がった。

『いいわ。今日は教えてあげる。どうせ見よう見まねで着られても、ろくでもないことになるもの』


     ◇


 襖を閉め、瑞月は小部屋の中央に立った。

 着替えのために、いま着ている簡易和装の紐を緩めようとする。その動作に、やはり一瞬だけためらいが混ざる。だが、昨夜のようにそこで立ち止まることはしなかった。すでに鏡の前で一度、自分の身体とは向き合っている。いまここで瑞月が越えるべきなのは、その身体そのものではなく、その身体に何を纏うかだった。


 “巫女服”

 その白と緋は、ただ可愛い衣装ではない。白龍辰巳神社の名を背負い、人前に立つための装いだ。自分が憧れていた巫女の姿と、実際にこの神社の巫女になることのあいだには、想像していたよりずっと大きな隔たりがある。

 鏡の前へ立つ。綺麗だ、とは思う。思ってしまう。けれど、その感想だけでは足りない。似合うかどうかより先に、ちゃんと立てるかどうかが気になっていた。


「これを着たら、もう完全にそっち側ですね」

 小さく漏らすと、玉藻が鼻で笑った。

『今さら何を言ってるの』

『とっくにこっち側でしょうに』

「そういう意味じゃなくて……」

 瑞月は自分でもうまく説明できず、言葉を探す。

「見た目の話じゃなくて。役目、というか」

『ああ』

 玉藻はそこで初めて、少しだけ真面目な声になった。

『ようやくそこまで辿りついたのね』

 瑞月は何も返せなかった。


 見た目だけなら、もう十分すぎるほど出来上がっている。けれど、自分が瑞月という姿を得たことと、その姿で誰かの前に立つことは、似ているようで別の話だった。

 箱の中の白衣と緋袴へ、もう一度視線を落とす。

 胸の奥にあるのは高揚だけではない。気後れもある。怖さもある。だが、その全部を抱えたままでも、着てみたいと思っている自分がいる。

『なら、着なさい』

 玉藻が白衣を持ち上げる。

『憧れを着るのと、役目を纏うのは違うわ。でも、違うからこそ意味があるの』

 その言葉は、思った以上に胸へ落ちた。


 瑞月はひとつ息を吸い、頷く。

「……はい」

 玉藻は白衣を差し出した。

『ほら。そこへ腕を通して。合わせは右前じゃないわよ』

「ええと、こうですか」

『逆』

「あ、逆でしたか」

『死に装束にする気? 朝から縁起でもないわね』

 ぱしり、と玉藻の指先が襟元を直す。

『力任せに引かない。その布は繊細なのよ』

「すみません」

『謝る前に覚えなさい』

「はい」

 返事が妙に素直になるのは、今の姿のせいか、玉藻の手際が見事だからか。

 襟が整う。背筋が伸びる。紐を結ぶ位置、力の入れ方、裾の落とし方。ひとつ手順が進むたび、鏡の中の自分が少しずつ "それらしく" なっていく。


『紐はそんな力任せに締めない。形が崩れるでしょう』

「難しいですね……」

『まったく。理想の巫女を語るわりに、着付けは素人なのね』

「語った覚えはないのですが」

『念話で漏れてるのよ。いまさら惚けない』

 最後に、緋袴が腰へ落ち着いた。


 その瞬間、瑞月は息を呑んだ。

 そこにいたのは、美少女の姿をした誰かではなかった。

 白龍辰巳神社の巫女として立つ、自分だった。

 同時に、不思議なことに、胸の奥の収まりも少し変わった。劇的に何かが固定されたわけではない。ただ、白衣と緋袴を受け止めたことで、人の形の器がほんの少しだけ落ち着いたような感覚がある。


『そう』

 玉藻が鏡越しの瑞月を見た。

『その顔よ』

「……何がですか?」

『ただ可愛い格好をして浮かれてる顔じゃない、ってこと』

 玉藻は肩を竦める。

『名を受けて、姿を受けて、そこへ役目まで乗れば、器は少し馴染むものなの』

『まだ定着しきったわけじゃないけれど、昨日よりはましでしょう』

 瑞月は鏡の中の自分を見た。

 確かに昨日よりは少し、しっくりくる気がする。


     ◇


 襖を開けると、宗佑がちょうど廊下をうろついていた。様子を窺っていたようだ。 だが瑞月が姿を見せた瞬間、その浅ましい気配はきれいさっぱり吹き飛んだらしい。宗佑は目を見開いたまま、言葉を失う。


 白衣の白は銀髪によく映え、緋袴は翡翠の瞳を際立たせる。正統な装いだ。派手でも奇抜でもない。だが、正統であること自体が、立っている本人の見目の強さをむしろ際立たせていた。


「……すげえな」

 ようやく出た感想が、それだった。

 瑞月は少しだけ眉を下げる。

「語彙を増やしてください」

「無理だろ!」

 率直すぎる。だが、宗佑の反応としてはむしろ自然だった。言い方に助平さはない。ただただ、神社の空気が急に "それらしく" なってしまったことに圧倒されている表情だった。


 宗佑は一歩引いて、もう一度全体を見る。それから、極めて真面目な口調で言った。

「いや、本当に。神社の巫女って言われたら、誰でも信じる」

「それは、喜んでいいんでしょうか?」

「いいに決まってるだろ。うちにとっては」

 そこで宗佑は咳払いをした。


「もちろん、その……無理に表へ立てって話じゃない。ただ、もしお前が大丈夫なら、まずは少しずつ、な…」

 営業の匂いはする。だが、露骨に押しつける感じではない。瑞月はその言葉を聞きながら、鏡の前で感じた高揚と重みを、もう一度胸の中で整理した。


「やってみます」

 そう答える声は、自分で思っていたより落ち着いていた。

『まあ、似合っているわよ』

 玉藻が横から言う。

『腹立たしいくらいに』

「褒め言葉として受け取っておきます」

『図太いわね』

「今さらです」

 宗佑には、そのやり取りは見聞きできない。だから瑞月がふと虚空へ微笑んだようにしか見えず、少しだけ怪訝そうな顔をしたが、深くは聞かなかった。


     ◇


 最初の "役目" は、思っていた以上に小さなところから始まった。いきなり参拝客の前へ出るのではない。まずは境内の掃き清めの手伝い、授与所の戸を開けること、氏子が持ってきた差し入れを受けること、そういう地味なところからだった。


 それでも、その効果は目に見えてあった。

 近所の老夫婦が、手水舎のあたりで瑞月を見るなり足を止める。

「あらまあ、宗佑さんとこの新しい巫女さん?」

「いえ、まだお手伝いというほどでも……」

 瑞月がそう答えると、老婦人は目を細めた。

「えらい綺麗な子だこと。神様みたいねえ」


 内心で、瑞月は飛び上がった。

(神様みたい、いただきました)

(いや実際、半分くらい神様みたいなもんだと思うけど…)

(それはそれとして効くな、これ!)


 外面は、にこりと穏やかに笑うだけで済ませる。

「ありがとうございます」

 その一言だけで、老夫婦の機嫌がさらによくなる。ほどなくして、甘酒の入った小さな保温ボトルまで差し出された。

「冷えるでしょう。外に立つなら、少し飲んでおきなさいな」

「そんな、いただいてしまっていいんですか?」

「いいのいいの。若い子は、あったかくしてなきゃ」

 あざとく両手で受け取り、会釈する。

(美少女特権きたーっ!)

(いや、これ本当すごいな)

(顔がいいって正義だわ)


 甘酒はやさしい甘さで、米麹の匂いが鼻腔へと抜けていく。龍になってから、こういう香りに妙に惹かれる自分がいることを思い出し、瑞月は危うく目を細めかけたが、どうにか持ちこたえた。


 その日の昼には、商店街への買い出しにも出かけることになった。

 宗佑に頼まれたのは、半紙や細紐など、神社で日常的に使う細かな消耗品の補充だ。もっとも、初めて巫女服のまま外へ出る瑞月を、ひとりで行かせるのはさすがに不安だったらしく、宗佑も付き添いとして同行していた。

「目立ちませんか?」

「目立つだろうな」

「目立ちますよね」

「だが、たぶん悪い方向には目立たん」

 宗佑は妙に言い切った。

 実際、その通りだった。


 商店街の文具屋では、品物を受け取るだけで店主が背筋を伸ばす。

「白龍辰巳神社さんとこの…?」

「はい。半紙と細紐を頼まれておりまして」

「いやあ、最近ちょっと人が戻ってきてるらしいじゃないですか。よかったですねえ」


 ついでに小さな紙袋が一つ、追加で差し出される。

「これ、おまけ。干支のしおり。縁起物なんで」

「え、でも…」

「いいんですよ。綺麗な巫女さんが来てくれた記念です」


 内心で瑞月は、またも大騒ぎだった。

(おまけ追加きましたーっ!)

(すごいな。笑って礼を言うだけで世界がやさしい)

(これが "見られる側" の景色か…)

 だが、うまくいきすぎる時ほど危うい。


 店を出て、宗佑と並んで商店街を戻っていた時、通りの向こうから女子高生らしい二人組の声が聞こえてきた。

「ねえ、あの人すごくない?」

「髪、本物かな。コスプレじゃなくて!?」

 その一言で、龍司の内側の承認欲求がむくりと頭をもたげた。

(聞こえた!)

(いまの聞こえたぞ!!)

(いや待て、コスプレじゃなくてって、それ褒め言葉としてだいぶ強くないか)


 頭の奥が、ふっと熱を持つ。

「――っ」

 反射的に額へ手をやると、宗佑が隣で眉をひそめた。

「どうした?」

「い、いえ……少しだけ、のぼせたみたいで」

『角よ』

 玉藻の声が飛ぶ。

『調子に乗るから』

(今このタイミングで言うな!)


 慌てて意識を落ち着けると、熱はどうにか引いてくれた。出かけた角も、髪の中へ戻ったらしい。けれど翡翠の瞳の奥には、一瞬だけ金が差したようで、近くの子どもが「あ、目がぴかってした!」と指をさしてきた。


 瑞月は即座に微笑みを返す。

「陽の加減でしょうか?」

 それらしい。たぶん。少なくとも、子どもの母親は「まあ、そうよねえ」と納得していた。


 宗佑はというと、その一連を見て、少しだけ引きつった笑みを浮かべる。

「お前、ほんとに目立つよな」

「好きで光ってるわけではないのですが……」

「でも、結果的には宣伝になってる」

「それを言いますか?」

「言うさ。神社やってんだから」

 俗物だ。だが、その俗っぽさは今のところ、むしろありがたかった。建前だけで綺麗事を並べられるより、まだ人間くさいていい。


     ◇


 社務所へ戻る頃には、冬の陽射しがだいぶ傾いていた。

 授与所の戸を閉める頃、空腹は思ったよりひどくなっていないことに、瑞月はふと気づいた。まったく減らないわけではない。商店街で歩き回ったぶん、普通に腹は空く。けれど、それは "ヒト化を維持しているせいで削られている" という感覚ではなく、半日動けば誰でも減るような、自然な空腹に近かった。


 そのことに気づくと、妙にほっとした。

『少しはましになったでしょう』

 玉藻が、いつの間にか廊下の柱にもたれかけていた。

『この社で同じ姿を保って、ちゃんと役目まで果たしてるんだもの。器が少し馴染んだのよ』

「今日だけで、そんなに変わるものですか?」

『今日だけじゃないわ』

 玉藻はさらりと言う。

『眠って、起きて、名前を受け取って、今日こうして巫女として立った。その積み重ねよ』

『定着っていうのは、ある瞬間に急に起きるものじゃないの。気づいたら、前より自然になってるものなの』


 瑞月は窓ガラスへ映る自分を見た。

 巫女装束の銀髪の少女が、そこにいる。

 白龍だった頃の異物感とは違う。こちらはもっと危うい。都合がよすぎて、まだ少し現実感に欠ける。けれど、人の視線も、笑顔も、言葉も、この姿ならきちんと受け取れてしまう。


 逃げ場だったはずの妄想ロールが、いつのまにか役目になり始めている。それを、瑞月は窓の向こうの自分に見た。

『表情が変わったわね』

 玉藻が背後から言う。


「そうですか?」

『鏡の前で浮かれていた時より、ましな顔をしてる』

「それは褒めてます?」

『半分だけ』

 玉藻は隣へ来て、窓へ映る瑞月を一瞥した。

『巫女服は、あなたの願望を満たすための衣じゃない』

「……はい」

『でも、それだけでもないでしょう?』

「ええ」


 瑞月は、ほんの少しだけ笑った。

「嬉しかったです」

『知ってるわよ』

「でも、思ったより怖くなかった」

『それも知ってる』

「それで、思っていたよりも、ちゃんと立つことができました」

『そうね』

 玉藻は短く頷いた。


 そこへ宗佑が、帳簿を抱えたまま戻ってくる。

「瑞月さん」

「はい」

「明日から、午前中だけでも表を少し任せていいか」

 経営者の顔だった。完全に…

「無理そうならすぐ引っ込んでいい。だが、今日見てる限り、たぶん大丈夫だ」


 瑞月は少しだけ間を置いた。

 窓へ映る自分を見る。白衣。緋袴。銀髪。翡翠の瞳。そこにあるのは、たしかに理想の一部だ。だが、それだけではもう足りない気もしていた。

「はい!」

 自然に答えが出た。

「お任せください」

 宗佑は満足そうに頷き、玉藻は横で小さく笑った。


 冬の夕空は高く、薄く、澄んでいる。

 瑞月はその空気を胸いっぱいに吸い込みながら、静かに思った。

 この姿で立つことは、もう逃げではないのかもしれない。

 まだ少しだけ、気恥ずかしい。

 まだ少しだけ、出来すぎているようにも思える。

 けれど、白龍辰巳神社の巫女としてそこに立つ自分を、もう否定する気にはなれなかった。


 風が、銀髪の先をやさしく揺らした。

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