死神契約の末路
どれくらい眠っていたのだろう? 俺は生きているようだ。正直自分自身を疑った。まさか、夢だったという話じゃないよな? 自分の顔をつねってみると、痛い。髪の毛を引っ張ってみると、痛い。俺、生きている? まさかの天国か?
周囲を見渡すと、ここは俺の元々住んでいた家、古い借家だった。鏡で自分を確認する。やっぱり見た目は冴えない以前の俺だった。ということは元に戻った? 机の上を見る。すると、俺の名前の真新しい通帳が置いてあった。こんな通帳は初めて見る。手紙が置いてあった。
「死ぬ瞬間を変わってくれてありがとう。怖がりの私は死ぬ瞬間がとても怖かった。闘病もとても怖かった。死ぬという事実が変わらないとしても死ぬ瞬間だけでも死神にお金を払って、変わってくれる人を探したんだ。最後に元に戻ることはあえて秘密にしていたよ。君が変わってくれてよかった。本当にありがとう。君は病気を経験して一度死んでいる。だから、どんな困難でも生きていけると思うよ。君は二回も死を経験する勇敢な男となるだろう。この通帳のお金は使ってほしい。感謝の気持ちだよ。苦痛や恐怖はお金には代えられない。3億以上の仕事をしてもらったと思っている。通帳にとりあえず3億円入れておいたよ。どうせ私は死ぬのだから、このお金は君に使ってほしい。入れ替わりのバイトだとおもってほしい。僕の代わりに苦痛と恐怖と死を変わってくれたこと、本当に感謝します。あなたの母親は高級老人ホームに入っています。住所はこちらです」
あぁ、俺は3億円のバイトをしたのか、誰もいない部屋で俺は静かに通帳を見つめていた。そして、俺はこの先どうやって生きていくのか、はじめて前向きに考えることができるようになったのだった。