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「ロージィ様は公爵家の一人娘でらしたんです」
ジムに前公爵様の事を聞くとそう答えてくれた。
そうか前公爵様は皇弟殿下だったから、公爵家にムコに入られたんだわ。
「ロージィ様はとても優秀な方でらしたのに、女性は家を継げない。そのせいでとても歯痒い思いをなさったと思います。でもムコに入られた皇子殿下もとても優秀な方でしたので、お二人は協力しあって公爵家を盛り上げていこうと、とても仲睦まじくお過ごしだったのです。ブランドン様というご嫡男も授かって、これからという時に…」
「お亡くなりになったのですか?」
「いいえ」
はい?ここは話の流れ的に、亡くならないといけないところではないの?!
「前公爵がお亡くなりになったのはブランドン様が8歳の時です」
十分早死にじゃない!
「ローラお嬢様、ブランドン様がご誕生されてから、ロージィ様と前公爵様との間には…」
そうか二人目のお子様ができなかったってこと?
「前公爵様は直ぐにお二人目が欲しかったようなのですが、ロージィ様は公爵家の政務に忙しくされておりました。それこそ後継の事が解消されて、水を得た魚のようにお仕事に邁進され、ついには皇弟殿下だった前公爵様の身分を利用して、女性も家を継げるように法律を変えようと動かれたのです」
でも、そうなってはいないって事は失敗に終わったのね。
「その法案は一番の理解者であるはずの夫の前公爵様が、一番の反対者に回られてしまったのです。そんな事をせず早く二人目を産めと」
何て酷い…きっとロージィ様はショックを受けられてしまっただろう。
「もちろんロージィ様は反発なさいました。すると前公爵様は他所で子供を儲けると仰られたのです」
何ですって!
「ロージィ様にはその事の方がショックであられたようです。もし前公爵が他所で子供を作られ、その子が後継ぎになってしまえば…」
それは公爵家の乗っ取りだわ…。
「しかし、その前に前公爵様は病でお亡くなりになった訳ですが」
早く死んで良かったわね!
ハッ!いっけな〜い!私声に出して無いわよね?!
「では前公爵様が早くにお亡くなりになられたから、二人で公爵家を必死に守ったと言うのは違うのね?」
「左様でございます。ロージィ様はそれ以前から、前公爵様に他所で子ができても公爵家を奪われまいと、ブランドン様と必死になられていた訳です」
それは必死になるわよね。
「ですがロージィ様は少し、後悔もしておいででした」
「何をですか?」
「ブランドン様の婚約者の公爵令嬢のことです。ロージィ様は自分と似たような、向上心のある自立した女性をお選びになりました。しかし結果は…」
「少し向上心があり過ぎる方でらっしゃったのですわね?」
「ええ、相手を支えると言うよりも、自分を優先し相手を自分の良いように従わせたい方でらっしゃいました。だから当然、ブランドン様とは合わなかったのでしょう」
マザコンじゃなくても、合わなかったのかもしれないのね。
でも公爵令嬢にしてみれば、自分じゃなく、母親に従う婚約者の方が余計に腹が立ったんだわ。公爵令嬢が向かった国は、身分制度がなく国民の代表が国を治める民主主義国家なのだという。
男爵令息と友人の皆さんと、向こうで幸せにお過ごしだと良いわね。
私が公爵様と学園に登校するようになると、最初はマザコン公爵と婚約した私を同情するような目で見ていた皆の視線も、最近は少し変わってきた気がするわ。
「ローラ、公爵様と上手くやっているのよね?」
教室に向かう途中、友人達が声を掛けてきた。
「何がかしら?公爵家の勉強の事?だったらまだ領地は小麦の生産が国内三位っていう事くらいしか学んでないわよ」
「あ〜…」
友人達が何だか残念そうな目で見てくる。
でもどうでもいいわ。そこに使う私の労力がもったいないのよね。
すでに脳がオーバーフロー気味だし。
「ローラ、公爵家の勉強が大変なのはよく分かるわ。でも気を付けて」
「何を?」
「あなたが公爵様と上手くやっているのを、面白く思っていない高位貴族の令嬢が何人もいるわ」
「そうよ。多分あなたに嫉妬しているわ」
「‥‥‥」
だったら何で最初から、あなた方が嫁に名乗り出ないの?
でも、今からでもお譲りしてもいいかもねぇ。
だから早く名乗り出てね?
それまでは…
「もう、そこにも構ってられないわ」
「ローラ!仕方ないわねぇ」
「だったらローラ、あんまり一人で行動しないでね!」
「ありがとう」
持つべきものは頼りになる友達ね。
ちゃんと信頼できるお友達がたくさんいて良かったわ。




