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「じゃあ若奥様?ああ違ったローラお嬢様?どちらも見習いだっけ?行ってらっしゃいませ」
一言多い護衛騎士のノアに見送られて学園に登校する。
「ローラ、おはよう。聞いてはいたけど、実際に公爵家の馬車で来るのを見ると、現実なんだと実感するわねぇ?」
友人達がローラを見つけて集まってくる。
「ねぇ公爵様のマザコンぶりは大丈夫?息子を取られた的なマザーの嫁いびりとか無い?」
皆、好奇心もあるのだろうけど、本気で私を心配してくれているのが分かる。
「皆、ありがとう。今のところ何も無いわ。それに公爵様には先に「お母様に聞いてみるわ」って先手を打ってるし、マザーにも「公爵様の意見を聞いてから」と言っているから大丈夫よ」
「さすが世渡り上手なローラね!」
「どちらも大事にしてますアピールは重要よね?私も婚約者の実家でマネするわ」
「確かにマザコンじゃなくても必要な措置ね」
良い友人達のお陰で、学園生活が唯一の息抜きの場所になりそうだ。
ローラが公爵家に居を移して一ヶ月もすると、皆も公爵家の馬車に慣れてきた。
「ねえ護衛の騎士様カッコ良くな〜い?!」
「私も思ってたわ!カッコいいわ」
「マザコンやめて、そっちに乗り替えたら?」
「皆、冗談が過ぎるわよ?それにあの男…見た目だけだわ。余計な一言が多くて結構面倒なのよ?」
「マザコン発言より?」
「ちょっとヤダー!!」
毎日、そんな感じで学園では楽しく過ごしていた。
公爵家でも、私がチョイチョイ壊れるくらいで、日々、平和に公爵家の事を学んでいる。
最近では公爵様も少し早く帰ってくるようになって、夕飯をご一緒できる日も増えた。彼との交流が増えてから気付いたのだけど…公爵様はマザーが絡まなければ、案外、普通の男性なんじゃないだろうか?…と思えなくもない。
それに以前よりも「母なら、母に、母が、母の、母と、母も」の母六段活用が減ってきているような気もするのよね。
それはマザーも同じで…
「ブランドンが毎日、早く帰って来るのも何だか鬱陶しいわねぇ」と仰ったのだ。
「!!」
マザーが溺愛する我が子を……
執事頭のジムも、副侍女長のケリーも鉄壁の表情が一瞬崩れたわ!
そして学園の登校前、また私が、いつものようにノアに揶揄われていると、ムスッとした表情の公爵様がやって来て「ノア、今日から私がローラと一緒に行くから、お前はもう良い」と仰った。
ノアは「おや?」という表情を一瞬見せたけど、直ぐに一礼して去って行った。
それから私と公爵様は毎朝、一緒に通勤通学する事になった。
「じゃあローラ、勉強頑張って」
「行って参ります。ブランドン様もお仕事頑張って下さいませ」
学園は公爵家とブランドン様の仕事場である皇城の道中にある。
この朝の光景は私の友人だけじゃなく、学園中の皆様を驚かせている。だって前婚約者の公爵令嬢とも一緒に登校したことは無かったそうだから。
帰りの馬車はさすがに護衛騎士のノアが迎えに来てくれるんだけど。私の専任の侍女も副侍女長で忙しい身なのにケリーが付いてくれている。
朝起きて、身だしなみを整えながら、他の侍女やメイドを紹介してくれて、時には屋敷を散歩しながら色んな使用人を紹介してくれる。
私のポンコツな頭が覚えるまで根気強く何度でも。
それにお茶の時間には厨房や食料庫、ワインセラーなどにも案内してくれて、シェフやパティシエ、ソムリエらの紹介までしてくれた。洗濯場も厩舎や馬場も庭園まで伯爵家とは段違いだ。
働いている人数も専門職も、恐らく実家の伯爵家とは比べものにならない。ゼロが二桁は違うくらいの使用人が働いている。さすが皇家縁の公爵家ね。
恐らく領地の規模も一つの小さな国と変わりないんだわ。
マザーからは礼儀や作法を学んでいる。
伯爵家でも普通に習ってはいたが、今は主に皇家や他国の王族を前にしても恥ずかしくない作法を学んでいる。
外国語が出来なくても挨拶とお礼は言えるようにと、私の脳みその低容量をわきまえて出来るところから教えてくれている。
「ローラ、だいぶ作法も身に付いたわねぇ。だから次は隣国の会話も学びましょう。皇太子妃殿下は隣国ご出身だから、あなたも話せると良いと思うの」
「はいロージィ様、でも私がブランドン様と社交界に出る事がありますでしょうか?足手まといと言われるかもしれませんわ。だからブランドン様にお伺いしてから…」
「ローラ!何て事を言うの。あなたは公爵夫人よ。日陰の身にはさせないわ。あの子だってきっとそうよ。それに私の決めた事には文句は言わせないわ」
「ローラ、次は隣国のお茶の作法を学びましょう」
「はいロージィ様、でも私なんかが皇太子妃殿下のお茶会に呼ばれますでしょうか?ブランドン様のお顔を汚すかもしれませんわ。だからブランドン様にお伺いして…」
「ゥローラァァ!」
まあ!マザーまで巻き舌!
「あなたはブランドンの顔色を窺い過ぎよ!」
近頃は毎回、そう言われるようになって、私から公爵様のお名前は出さないようになったの。




