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「今日から宜しくお願い致します。嫁見習いのローラです」
「まあまあっ若奥様、私共にそんな!」
「あ!嫁ではなく…若奥様見習いの方がよろしかったですか?」
「いえっ…あのっそういう意味では…」
私を出迎えてくれた侍女がオロオロしている…私、早速、困らせてしまったかしら…?
「ローラお嬢様、とりあえず公爵家の家令は領地におりますので、公爵家の歴史と領地の特色につきましては、執事頭の私“ジム”から。そして侍女やメイド、料理人、庭師、下働きの者など公爵家の使用人の管理に関しては、こちらの副侍女長“ケリー”からお学び下さい。それが学び終わりましたら、公爵家の筆頭秘書官から公爵家が携わる事業や他の貴族との共同事業などを〜」
まだ続きますの?その説明…ローラの頭は初日からすでに、説明だけでパンク状態に陥った。
元々、地頭はそんなに良くないのだから、きっと全部は無理だ。
「ローラお嬢様、大丈夫ですわ。全てを覚える事ができなくても、ローラ様をお支えする為に私共がおりますので」
ローラの様子を見かねた副侍女長がそう言ってくれる。
「左様でございます。ローラお嬢様、私、執事頭も僭越ながらお力にならせて頂きます」
「そうそうローラ嬢は、そもそも子供さえ産んでくれれば良いって、こちらは最初からそう聞かされているから大丈夫ですよ。あ、私はローラ嬢の護衛を担当する、公爵家の副騎士団長のノアと申します。ヨロシク」
「……では…私はローラお嬢様見習いという事ですわね?皆様、宜しくお願い致しますわ」
プシュー!!
「わあっ!ローラお嬢様が故障されたっ!」
「あんたナニ冷静に故障してんだよ!」
「ノアっ!敬語を使え!春には公爵夫人になられるお方だっ」
ローラの公爵家入りは、マザコン攻略より前途多難な気がするのだった。
「あなた早速、頭がパンクしたのですってねぇ」
夕食時、ローラが公爵家を訪れた時のことを、早速、マザーに突っ込まれてしまった。
「ロージィ様、お恥ずかしいところを公爵家の使用人の皆様に、お見せしてしまいましたわ」
「でも、あなたのその様子が可愛かったって皆、口を揃えて言っていたの。残念ねぇ私もその場にいたかったわ」
それって慰めなの…?
だけど「お前なんか、可愛い息子の嫁に相応しくない」って言われなくて良かったわ。
「それでねぇ、公爵家の礼儀と作法とマナーは、私が教えようと思うの」
グサっ!!
「ハッ申し訳ありません。私ったら!ついナイフをローステッドポテイトゥにぶっ刺してしまいましたわ」
「あぁコレね?確かにコレは新鮮な反応だわね。ローラ、気にする事はないわ。仔牛のステーキには、きっと刺さらなかったはずだから、付け合わせのポテイトゥに刺すのはナイス判断よ」
「おっ恐れ入ります…」
公爵家の皆様はとてもお優しい。
「ブランドンがここに居ないのは残念ねぇ。きっとあの子も見たかったはずよ」
一体、ナニを…?
「あの子は今日も帰宅が遅いそうだわ。いつもの事なの。ま〜ブランドンの事はどうでもいいわ」
えっ?!どうでもいいの?
マザーの溺愛する、大事な息子なんじゃないの?
ローラのささやかな疑問はマザーの次の発言で、また一瞬で忘れる事になった。
「そうだ!学園がお休みの日は、交流のある貴族を屋敷に呼ぶわね。直接会った方が覚えられるでしょう?向こうも、きっとあなたに会いたがるわ」
私の休みは、ございませんのね。
倒れたら休みをもらえるかしら?でも無理ね。健康は多産の次に取り柄だったわ。
ローラの多忙な生活が、ここに始まるのだった。
「やあローラおはよう」
翌朝の朝食時、公爵様に笑顔で挨拶された。
「おはようございます。ブランドン様」
この人…昨晩は一体、何時にご帰宅されたのかしら?遅かったはずなのに、早朝からお姿が眩しいわ。
「おはようローラ。昨晩は枕が変わっても寝れたかしら?」
「はい。とても素敵なお部屋を頂戴しまして、ありがとうございました」
お部屋よりも、もう色々と疲れ過ぎて爆睡しましたわ。
「そう良かったわ。でも公爵夫人の部屋の内装は、前の婚約者の好みのままだったわねぇ?」
グサッ!!
「ハッ!申し訳ありません。私ったら!ついナイフをエッグベネディクトゥにぶっ刺してしまいましたわ」
まさか私が案内された部屋は、公爵夫人の部屋だったの!?
道理で日当たりも窓からの景色も素晴らしくて、内装も豪華絢爛だったはずだわ。
そして寝室にあったナゾの扉は開けなくて正解ね…。
「なるほどコレか。確かに新鮮だ。私も早速、実際に見れて良かったよ。ああ付け合わせのプチトマトゥじゃなくて正解だったよ。きっと君のコントロールでは刺さらなかっただろうからな」
「…おっ恐れ入ります」
もしかして私は、お二人のペットかなにかの珍獣に認定されたのかしら…。まあ怒られたり嫌われたりするよりはマシなのだけど。
でもこれ以上は気を付けなきゃね…。




