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「モヤシに肥料ですか…?」
「気にしないでっ!この子は伯爵家に貢献する事を、そう言っているだけなの」
「そうよ比喩表現よ!」
「比喩…」
「お姉様方、私も最初は確かに「マザコンはちょっと…」と思ってましたけど、実際にお二人にお会いしてみたら、アレをエンターテイメントとして見るのは面白いかもと思ったわ。マザコン以外は私達にメリットしかないのでしょう?」
「そうよ!ローラ」
母は顔を輝かせている。
なんせ相手は金持ちで持参金など要らないと言っているし、子供さえ産んでくれればいいと最低限の要望しか言っていないのだ。
しかも伯爵家は皇家縁の公爵家と縁戚になる。そうすれば兄の配偶者も直ぐに決まるだろうし、公爵家との結び付きは特に姉の嫁ぎ先の子爵家の商売にも良い影響が出るだろう。
それに万が一、公爵家が私にとって辛い環境だったとしても子供さえ産めれば…その後は離婚してくれるかもしれないし、望めば別居も可能だろう。
だったら良いことの方が多い結婚を選ぶのは当然のことじゃないだろうか?
他の結婚でもリスクはあるものだし。
「マザコンは大丈夫なのね?なら他の部分は受け入れられるの?」
「う〜んそうねぇ…」
公爵様は黙っていれば、かなりのイケメンだ。だから子作りはイケると思う。それ以外は、あまり二人に関わらなければ大丈夫なんじゃないだろうか?
あの二人が“お互いファースト”である事は、すでに分かっているんだし。
ローラが決心すると、それからトントン拍子に話が進んで婚約が決まり、学園の卒業後、ローラは直ぐに結婚して公爵家に入る事になった。
婚約後も予想通り公爵様のマザコンは絶好調で、会話の端々にマザーは主役級で登場した。
「母なら、こう言うかな〜」
「母に聞いてみるか」
「母ならこれを選ぶだろう」
「母が〜、母も〜」
これは…母親思いと言うよりは、公爵様の判断基準がマザーなんじゃないだろうか?マザーが主軸で、そうかそうで無いのかを判断しているんじゃない?
彼の私生活の行動全てがソレだと感じた。
「母」ってワードを口に出さずに、心の中で考えればバレないのに…。
でもだけど…だったら仕事面ではどうなの?
まさか職場でも“マザー発言”を連発なさっておいでなのかしら?
「ブランドン様は職場でも、ロージィ様のことを考えながら、お仕事なさってらっしゃるの?」
マザーはまさか国の指針にもなっているのか?!
「ああ。流石に仕事中は母の出番はないよ。仕事に集中しないといけないからね。だから皇室典範やマニュアル、法律書や過去の議事録などを常に目を通しているよ。専門家にも意見を聞くしね。母は仕事には無関係だろ?」
それを聞いてちょっと安心したわ。
「だが、そこまで母の事を気にするなんて、君はもしかして結婚後の公爵夫人の仕事を心配しているのかい?」
違うわよ。母を気にしているのはあなたでしょ!
「まあ急がないけど、公爵家の仕事は母や家令に学ぶといいよ」
案外普通の回答だったわね。
でもこの人、もしかして四角四面のマニュアル男なんじゃないかしら?だから私生活のマニュアルがマザーなんじゃないの?
いつか彼の仕事の同僚にも話を聞いてみたいわね〜。
だけど、それならマザーの方はどうなのかしら?と思っていたら、直ぐに公爵邸にお招き頂いた。
「ロージィ様、お招き、ありがとうございます」
「ローラ、よく来てくれたわね。私のことはお義母様と呼んでくれてもいいのに」
案外まともだ。しかも私を歓迎してくれて、嫁と認めようともしてくれている。
「ええ、でも伯爵家は姉達がローザ、ローゼとか皆似たような名前でございますでしょう?なのでロージィ様とお呼びする方が、実の姉のように思えまして親近感がありますの」
「まあまあ!姉だなんてぇウフフフ」
喜んでる?良かった…弱小伯爵家の姉妹ごときと並べるな!とお怒りを買うかと思ったわ。
良い方には転んだけど、ちょっとチャレンジし過ぎだったわよねぇ。
「ねえローラ、息子に聞いたのよ。あなたが公爵家の仕事を気にしているって。私達は子供の事しかあなたに望んでいなかったけど、でも意欲を持つことは良いことだわ」
えっ?!ちっともやる気じゃ無かったんですけど!
「いきなり全ての公爵夫人の業務をこなすのは無理だわ。でもまずは公爵家の事を、しっかり学んでもらえばいいかと思って」
今更「いいです」って断れないわよね?
「これから結婚まで、この家の熟練執事と侍女を教師として付けるわね。学園の卒業単位は大丈夫だと聞いているから、明日からでも放課後に我が家に寄って…いえ時間がもったいないわ。公爵家から学園に通うのはどうかしら?」
はいっ?!住み込みで勉強って事?!
ヤバい!ヤダ!絶対嫌ですわ!
「あの…とりあえず両親に相談してみますわ。それにブランドン様にも相談…」
「あらそうねぇ。ブランドンは私の意見に反対はしないわよ」
それは知ってます。
「でもご両親は寂しがるかもしれないわね」
絶対、寂しがりません。直ぐ行けって言います。
「では今日、帰ったらご家族に相談してみてね。こちらからも手紙を送っておくわ」
「おっ恐れ入ります…」
そして私の公爵家へのプレ嫁入りが決定した。




