3
「ローラさん、宜しくね。私はブランドンの母でロージィよ」
まあ!“ザジズゼゾ”の“ジ”が居たわ!
ちょっと親近感。
良かったわ、まずは少しでも好きになれる部分がマザーに見つかって。ローラは嬉しくなってニコニコと夫人を見る。
「この度は、伯爵家の我が家に身に余るお話を頂きまして誠に恐縮ですわ」
母がそう言って二人で腰を落とし頭を下げると「今回の縁談は、ここに居る私の友人達の推薦でね。君がたくさん子供を産んで、公爵家の責務を果たしてくれるだろうと絶賛してくれたよ」と公爵様が仰った。
おい!それはマザコン以前の発言だわよ?!
さすがの私の母も一瞬「ビクッ」となっていた。だけど…
「むっ娘しか産まないかもしれませんが、それでもよろしいので?」
おい!お母様、そういう意味の「ビクッ」だったの?
「娘でもブランドンに似れば、きっと可愛いわ。息子のように優秀でハンサムなムコを取ればいいのだし」
早速、息子溺愛発言ね?
しかもブランドンに似なければ、可愛くないと言い切ったわよ。
「母上、きっと母上に似ても可愛いはずですよ。私は母上に似た娘なら何人でも欲しいな」
これは…お互いしか見えていないこと確定ね。
紹介した友人として同席されているお義兄様方が、さっきから青い顔で、ずっと絶句されているわよ?
さて、このマザーは一体どこまで、夫婦間に入り込んでくるのかしら?
「新婚旅行は着いて来るわよね。寝室は?ベッドも一緒?」
「フフフッ流石に、もう母の添い寝は卒業したよ。まあ眠れない時は時々、優しく背中を叩いてもらうくらいかな」
私…無意識に声に出していたのね?
でも返答内容の方が驚きだわ!
「まあブランドン!これからはもう妻にしてもらうといいわ。じゃないと跡継ぎが遠のくわ」
「そっそうか!」
それ新事実じゃないわよ、公爵様?
でも私も動揺して「おっお義母様に適切な叩き方を教わるわ」って、つい心にも無い事を言ってしまったの。
自分の空気を読め過ぎる能力が憎いわ!
その日は、終始そんな感じで顔合わせが終わったのだけど、お義兄様方はかなり疲れ切っておられたわ。
そりゃあそうよね?だってまさか、あそこまでマザコンだとは思ってなかったみたいだもの。
「君はよくあの場で顔色を変えずにいられたな?自分の事なのに」
伯爵家での報告会の最中、義兄の一人がそう仰ったのだけど…
「最初からマザコンだという情報がありましたもの」
「それはそうだが!だがしかし、我々もあそこ迄とは思わなかったんだ…」
「お義兄様、マザコンにはレベルがありますの?マザコンはマザコンでしょう?」
「君は…アレに耐えられるのか?!」
「それは公爵家との縁談を、うちが断れると言うことかしら?」
「えっ?!いやそうではなくて…それはそうだけど…」
「ねぇ、うちの娘は公爵家に気に入ってもらえたのかしら?感触が分からずに、ただお二人の馴れ合いを見せられて終わった気がするのだけど…」
「伯爵夫人!それは恐らく…あちらはすでに義妹殿を迎えるつもりでいるかと…」
「まあ、ではやっぱり断れないわね。ローラ、公爵家とのご縁なんて我が家には100年いや1000年!に一度あるか、無いかの奇跡だわ。お兄様の為にもあなたには頑張って欲しいわ」
伯爵家にそこまでの歴史は無いわよ?
「お母様!それはローラに犠牲になれってこと?!」
「そんなのダメよ!公爵家と言えど、あの親子の元ではローラが不幸にしかならないわ」
「だがっ、悪いが彼をずっと独り身にする訳にはいかないんだ!彼は皇位継承権が三番目なんだよ」
皇太子殿下の側近でもある彼らは、ブランドンの嫁取りの皇命も密かに受けていた。
「皇太子殿下には姉妹だけで弟殿下はいないわね。と言う事は二番目は陛下の叔父で、その次ってことね?」
「そうだ。陛下の叔父君のところも娘しかいない」
男しか継承権が無いからいけないんじゃないかしらね?
それに、この国の人口比率は絶対女性に傾いている気がするわ。
「ローラ!お母様も義弟達も、あなたを生贄にするようなことを言うけど、あなたは気にする必要はないのよ。嫌ならちゃんと断るわ」
「ローザ!そんな事をしたらっ」
「そうよお姉様、公爵家を怒らせたらお姉様は、お義兄様に離縁されてしまうわ」
「でもローラが!」
「お姉様、私を心配して下さってありがとう。でも私が公爵家に嫁ぐことは伯爵家のためになる事…いいえ“モヤシ”に肥料を与えるようなものでしょ?あれっ?白アスパラだっけ?」
「ゥローラァ!」
お姉様、また巻き舌…。
「ブランドン、あの子は良いわねぇ。久しぶりに好感を持てる娘に出会ったわ」
「はい母上。私も彼女が母上のことをキラキラとした目で見ていたところに好感を持てました」
「では話を進めましょう。楽しみねぇ。孫よりも先に、あの子を手懐けたいわねぇ」
「母上、令嬢は何をあげれば懐くのですか?」
「マザコンを無くせば、直ぐにどんな令嬢もあなたに懐きますよ?」とは友人達は言えなかった…。




