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そもそも自分達の婚約者が、平民上がりの男爵令息に入れ込んだのだって、ブランドンの婚約者の公爵令嬢の影響だった。
年季の入ったマザコンぶりに改善の様子が全く見受けられず、とうとう堪忍袋の緒がキレた令嬢が、自分の言いなりになってくれる美しく優しい令息にハマったのだ。それがきっかけとなり令嬢は「真実の愛を見つけた!」と言い放ち、卒業式の場でブランドンに婚約破棄を言い渡した。
「このマザコンヤロー!」
あの優雅で完璧な公爵令嬢がそう吐き捨て、卒業式の場で彼のこれまでのマザコンの歴史を暴露したのだ。
お陰でその場の全員が、一瞬で公爵令嬢に同情した。
そもそもブランドンを少しでも知る者は、彼のマザコンぶりに気付いていたのもあった。そして更に自分達の婚約者も公爵令嬢の友人だった。
気付いたら彼女ら全員が男爵令息に入れ込み、結局、全員で国外に出て行ってしまったのだ。しっかり我々に婚約破棄の慰謝料を払って。
『女って天晴れだな…』
ブランドン以外の四人全員が思ったのだが、ブランドンだけは分かっていなかった。
「アイツは何が気に入らなかったんだ?母に聞いてみるか」
そうあっけらかんと言って、その場の全員を震撼させたのだ。
マザコンもブランドンだけならまだ良かった。
重度ではあるが母親思いの良い息子で済む。だが彼の母親もブランドンと同じ重さの愛をブランドンに向けていた。
父親である前公爵が早くに亡くなり、それ以来、母親と幼い息子と二人で、手と手を取り合って公爵家を守らなきゃいけなかったのは分かる。
だがもうイイ大人が、互いに手を離さなければならない時だろう!と周囲が口を揃えて二人に言っているのだが、そのアドバイスは二人に全く響かずにここまで来た。
婚約者に逃げられても、理解しないのか!?
皇城では皇太子の政務を補佐する重職に就くほど賢いのに、なぜ分からない?!
だがもう周囲は諦めた。
きっと彼らを変えるよりも、彼らを受け入れることの出来る令嬢を探した方が早いのだ。周囲はそう理解して、とうとう伯爵家の四女ローラに声を掛けたのだった。
「ゥローラァァ〜」
長女のローザが叫びながら屋敷に飛び込んで来た。
「お姉様、かなり私の名前を巻いて発音しておられましたわよ?そのせいで何だか私、ギャランドゥが見えてしまいましたわ」
「何、訳の分からない事を言ってるのよ!」
確かに私も意味が分からないわ。でもまあイイか…。
「そんなことより聞いたわよ。公爵家から縁談の打診が来たそうね?」
「打診と言うか…恐らく断れないヤツですわよね?」
「そうだけど、まさかっ断れるなら断るつもりなのっ?!」
ローラは姉の剣幕に溜息を吐く。
「大体、お姉様は一体、何を動揺なさっているの?公爵家からの縁談?それとも公爵様がマザコンらしいって事?」
「どっちもよ!」
「やっぱり!だったら縁談はお断りしようかしら?」
「出来るわけないでしょ!!相手は皇族の親戚よ?皇太子殿下の従兄弟なのよ?」
「まぁっ!だったら結婚したら、私も皇太子殿下の従姉妹になるの?」
「ギャー!!何てコト!何てコト!」
「違うに決まってるでしょ。それにお姉様、うるさいわ騒ぎ過ぎよ」
「ローラ…悪かったわね。でも見合いをしても、まだ結婚に至るかは分からないわよ?公爵様より、きっとマザーに気に入られないとダメだわ」
「マザコンか〜。モヤシなら育てているけど、マザコンはどうやって育てればいいの?」
「…お兄様をモヤシ扱いするのはどうかと思うわよ?」
「じゃあ…白アスパラ?」
「…いずれも白いのね?だけど相手はマザコンでも公爵家よ。ちゃんと失礼の無いように準備をしておくのよ!」
「分かったわ。お姉様」
私と公爵様とのお見合いは、姉達となぜか姉達のダンナ様や公爵様のご友人達の主導の下、順調に進んでいった。
すでに学園中にもそのウワサが広がっていて、私は皆に好奇の目で見られるようになってしまった。
仲の良い先輩方には、直接、公爵様のマザコンを心配されてしまったのだけど…でもマザコンに焦点がいき過ぎて、誰にも私が公爵家に嫁ぐ心配はされなかったのよねぇ。公爵様に嫁ぐのは心配だけど、公爵家に嫁ぐのは大丈夫って事?それも違うわよね。
でも、とりあえず公爵様より「マザーに注意!」とは皆に言われたわ。
夕方頃にもう一話!




