番外編 脱マザコン→嫁ゴロシ(溺愛)→子煩悩中
このお話を面白いと思って下さった皆様に感謝を込めて。
とある夏の日〜
「おやっ双子ちゃんですか?可愛いですねぇ」
「今は眠っているからね。でも起きると悪魔だよ?君の娘さんも可愛いな。君に似ているのかな?」
「ええ。私の娘で間もなく4歳になります」
「ここには初めて訪れたのだが、良い場所だな?」
「そうでしょう!ここは元々、過疎化して鄙びた田舎の町だったのですが、高地で涼しいし自然が美しい場所だったので、妻が観光に目を付けたんですよ」
「そうか、奥方が?やり手の女性なのだなぁ。ここのリゾートは最近、評判が良くて、私も友人に勧められたんだよ。特に子連れには優しいってね」
「それは嬉しいなぁ。僕はこうして育児をしながら、子育てする親目線でのアドバイスくらいしか手伝えないんだけど、妻やその友人達はとても優秀なんですよ」
「そうか。それで…民主主義の国はどうだったかな、男爵令息?今は女男爵のダンナさんかな?」
「あっ…お気付きでしたか…公爵様」
そう言いながら僕は、少しバツが悪くなって目を伏せた。
「君らが国に戻ったとは聞いていたよ。彼女は実家から男爵位を受け継いだんだったかな」
「はい。あっあの…」
僕は返答に困って黙り込んでしまった。
「うん。あの国は身分が撤廃されて民の代表が政権を担っているけど、王政から変わって歴史も浅いから、まだまだ男性主体だろう?」
「‥‥‥」
「でも無駄にはなってないよ。経験が生きている。平民でも気軽に来れて、子供と過ごせるリゾートはなかなか無いだろう?」
「でも…苦労させたんです。民主主義でも女性はなかなか活躍出来なくて…」
「だから私が彼女らに声を掛けたんだ。この国でも女性の相続を認めるようにしたぞ!ってね」
「公爵様が?」
「まあ言い出しっぺは私だが、皆で頑張ったんだよ。皇太子殿下も彼女らの元婚約者達もね」
「まさか…僕らの為に?」
「ハハハッ「そうだ」と言ってあげたいけど、違うよ。自分達の為だ。でも君らの為にもなるだろう?」
「僕達のこと…お怒りではないのですか?」
「ん?何でだい?君らは自らの手で、幸せになりたかっただけなのだろう?我々もだよ。それに私は特に、可愛い妻にも出会えて息子達にも恵まれたんだ」
「でもっ!だけど、その…公爵様が子守りだなんて…」
「そんなに驚く事かい?」
公爵様は2歳になったばかりの双子の息子達が、遊び疲れて眠ったので、ベビーカーでホテルの部屋に戻るところだったそうだ。もちろん横に乳母も護衛もいるが、ベビーカーを押しているのは彼だ。
かたや僕は娘と手を繋いで散歩中だった。
「子供はまだ一人かい?」
「ええ。妻が今は忙しいですから」
「そうか。なあ君はお父様が好きかい?」
公爵様は少ししゃがんで娘に声を掛けてくる。
娘は公爵様の問いにモジモジとしながら「パパが一番好き」と小さな声で言って、サッと僕の後ろに隠れてしまった。
無礼だと言って怒られないかな?!
娘は人見知りはしないはずなんだけど、やっぱり公爵様は眩しいよな…?
「照れ屋さんなのか…可愛いな。やはり次は娘が良いな」
公爵様はそう呟くように言うと、乳母と護衛を引き連れて戻って行かれた。
彼とこの場所に避暑に訪れた奥方は、今は妊娠中なのだと後から聞いた。
公爵様の子守りをする姿は、彼らの滞在中、あらゆる場所で見られ、僕の妻を含め周囲を大変驚かせていた。
「あのマザコンの側にマザーがいないわっ!!」
「本当だわっ!どういう事?」
「とうとう死んだの?」
「そんな筈ないわ。逝く時は一緒のはずよ!」
「あ〜…公爵様のお母上は、皇后様と一緒に皇太子妃殿下の里帰りの旅行に付き合っているらしいよ。あっちは温泉だって」
『!!』
すっかりパパ友になっていた二人に、女性陣全員が驚愕した。




