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無魔法地帯の踏破ガイド 〜転移先は、山岳救助のスキルだけが頼りの異世界でした〜  作者: 紅一文字


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第十三話「拡大し続ける枯れ谷の記録」

資料に記された数字を、涼介はもう一度、最初から目で追った。


百年前までは、枯れ谷の拡大速度は、ほとんど観測できないほど緩やかだった。


それが、ある時期を境に、明らかに加速している。


数字の並びを見ているだけで、その変化が一目で分かるほどの差だった。


「この変化が始まったのは、いつだ」


「およそ十五年前だ。お前たちが見つけた『消えた迷い人』の記録と、時期が近い」


ファルコの言葉に、涼介は思わず視線を上げた。


「偶然、ということもあるだろう」


「もちろん、その可能性も排除はできない。だが、十五年前を境に、迷い人の出現頻度も、枯れ谷の拡大速度も、両方が同時に変化している。これを単純な偶然と見るのは、研究者としては難しい」


ダグが、腕を組んだまま、低く呟いた。


「ということは、お前がここに来たのも、その流れの延長ってことか」


「分からない。だが、その可能性は否定できない」


セイラが、資料の別のページを指差した。


「先生、この拡大の仕方……一定方向に偏っていませんか」


ファルコは、その指摘に目を細めた。


「気づいたか。そうだ、拡大は無作為ではない。特定の地域に向かって、明らかに進行方向がある」


「向かっている先に、何がある」


「現時点で判明しているのは、いくつかの古代遺跡の位置と、ある程度重なっているということだけだ」


涼介は、自分が見つけた遺跡のことを思い出した。


もしあの場所が、拡大する枯れ谷の「目的地」の一つだとすれば、これは単なる自然現象ではなく、何らかの意志を持った進行だということになる。


「このままの速度で進むと、どうなる」


涼介の問いに、ファルコは少し言葉を選んでから答えた。


「このままの速度を仮定するなら、五十年以内に、いくつかの主要な街が、枯れ谷の影響範囲に入る。魔法に依存した社会基盤は、その時点で機能しなくなる」


部屋の空気が、わずかに重くなった。


アレンが、誰にも聞かれないような小さな声で呟いた。


「五十年なんて、僕らが生きてる間に、起こることじゃないですか」


「悪化を前提にした話だ。今すぐ対処すれば、進行を遅らせる、あるいは止める余地はある」


ファルコの言葉に、ミラがわずかに安堵した表情を見せたが、その表情はすぐに引き締まった。


「他の国々は、この件をどう見ているんだ」


涼介の問いに、ファルコは一度、深く息を吐いた。


「それが、厄介な部分でもある。国によって、見解も対応も、まったく一致していない」


ファルコは、新しい地図を取り出し、大陸全体を示した。


そこには、いくつもの国境線と、各国の枯れ谷への対応を示す印が記されていた。


ある国は積極的な調査を進め、別の国は情報そのものを隠そうとしている――印の種類だけで、その差が一目で分かった。


「次は、それを説明しよう」


―― 第十四話「各国の対応は、まったく違う」へ続く ――


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!


この作品が少しでも楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。


これから毎日更新を目標に投稿していきますので、主人公たちの物語を一緒に楽しんでいただければ幸いです。


感想やブックマーク、評価をいただけると、執筆の大きな励みになります。


それでは、また明日の更新でお会いしましょう!

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