七月・下旬
期末テストが終わった。
終わった、というだけで、点数がどうなったかはまだ分からない。
分からないので、終わったことだけを喜ぶべきである。
そんなことを考えている僕である。
七月も終わりかけの月曜日、夏休み開始の直前。でも二年生以上は夏休み開始日から補習が始まるから、間にスポッと空いた、ほんの少しの休みだ。
部室には、少しだけ変な静けさがあった。
一年生の二人はいない。
一年生向けの進路行事があるらしい。
大学生を外部講師として呼んで、文系だの理系だの、国公立だの私立だの、推薦だの一般だの、そういう話をしてもらう会だと聞いた。
京子ちゃんは担任に「ちゃんと聞いておきなさい」と言われたらしい。
渉君は、なぜかその会の音響機材を運ぶ側に回されているらしい。
一年生なのに、もう音響まで学校側に頼りにされている。
何をやっているのだろう。
もしかしたら、池田電機が納品したシステムなのかもしれない……なんてことを考えるけど、さすがにそれはないだろう。
杉宮は、さっき部室を出て道場に行った。
囲碁将棋部の部室には、僕と畑中だけが残った。
机の上には折り畳みの将棋盤が出ている。
畑中に将棋講習をしていたのだ。
駒は既に片づけてある。
廊下側のドアは開けてある。
部室の冷房は古くて弱いから、廊下の冷房を少しでも取り込もう、というつもりだった。
幸いこの部屋は、メインの教室棟からは離れた建物にあるから、ドアを開けていても覗き込んでくる生徒はいない。
いや、別に覗かれて困ることはやっていない。
ちゃんと、囲碁将棋部の部活をやっているんだから。
……ついさっきまでは。
文化祭の話も、歌詞の話も、クリックの話も、テスト期間中はいったん止まっていた。
止まっていたというか、止められていた。
さすがに期末テストの前に、ドラムの八分がどうだとか、ベースが揺れるとか、歌詞の母音がどうだとか言っていると、教師にも親にも怒られる。
だから僕はこの一週間、テスト勉強の合間に、家で練習パッドだけ叩いていた。
音の出ない場所で、細かい前ノリの右手の指の動きだけを確かめていた。
畑中に言われた通り、練習パッドでいい音を鳴らせなければ、生ドラムでもいい音は鳴らない。
それは、もう僕の中に染みついていた。
ただし、テスト勉強の合間にやると、英単語のリズムや古文の活用形まで、均一に、タイトになってしまった。
それが勉強に良いのか悪いのかは、分からない。
古典ロックで高校受験を突破した僕だから、きっと良いことなのだろう、と思い込んでおく。
「持田君」
ドラム練習パッドが置いてある部屋の隅に行った畑中が言った。
畑中は、ベースのギグバッグを床に寝かせて、ファスナーを開けていた。
中から赤いムスタングベースを取り出して、当然のように部室に持ち込まれていた頑丈なスタンドに、きちんと置く。
それから、やっぱり部室に置きっぱなしに案っている小さいアンプの、トランスミッターを、ベースに差し込んだ。
この畑中が持ち込んだ小型ベースアンプ。
手のひらに乗るぐらい小さくて軽いのに、しっかりベースの低音が鳴って、さらにベース本体との間は無線通信なのだ。
しかも、スマホから音楽も無線で飛ばせる。
おまけに、大陸の方のブランドの製品で、かなり安いんだそうだ。
凄い時代になったもんだ……と技術に疎い僕は考えてしまう。
「久しぶりに、ちょっと合わせよ」
「久しぶりって言っても、一週間しか空いてないけど」
「テスト期間の一週間は長いんだよ。体感で三週間ぐらいある」
「んなことはないだろう」
「ある」
畑中は言い切った。
しょうがないので、僕もそちらへ向かう。
本物のドラムセットではない。
ハイハット用として使う小さい練習パッドと、スネア用として使う大きい練習パッドが、スタンドに付いている。
右足は本当に踏むところだけのもの。スポンジがついていてふむとグニャッとする。
だけど、二つのパッドの方は、きちんと叩いてあげれば、小さくきれいに響く。
部室練習は、だいたいそういうものだ。
ここは軽音部の部室ではなくて、囲碁将棋部の部室である。当然大きな音は出せない。
畑中もそれは分かっているので、小さいアンプの音量を、さらにかなり絞っている。
耳に近い位置、つまり机の上にちょっと低い台を載せて、その上に置けば、耳にダイレクトに届くから、そのぐらいの音量でも十分だった。
弦を一度鳴らすと、部室の空気が少し変わる。
音量は小さい。
でも、畑中の音だ。
「クリック、使う?」
僕が訊くと、畑中は少しだけ眉を寄せた。
嫌そうな顔だった。
でも、嫌だとは言わなかった。
「使う」
「使うんだ」
「使うよ」
僕は、自分のスマホを机の上に置いて、練習のためのケーブルを探した。
テスト期間中に渉君から送ってもらった、練習用の仮のトラックが入っている。
シンセの簡単なパートと、クリック。
本番で杉宮が、どういう機械をどう繋いで鳴らすのかは、僕にはまだ分からない。
ただ、今はその代わりに、左からはクリック、右からはシンセの音が出るように、練習用のトラックは作られている。
渉君が置いていったケーブルを使って、充電ケーブルを挿すところから取り出したイヤフォン用のケーブルを分岐させて、クリックは僕のイヤフォンに、シンセの音は部室側のオーディオに突っ込む。
これで、クリックを僕だけが聴き、その僕のドラムを聴きながら畑中が合わせる、という形の練習になる。
再生ボタンを押して、ちゃんと接続できているか、確かめる。
カッ、カッ、カッ、カッ。
僕の左耳の中だけに響くクリックは、貧弱で不安さを感じさせる。
でも、貧弱だから優しい、というわけではない。
クリックは、どこで鳴ってもクリックである。
待ってくれないし、慰めてもくれない。
一度止める。
「いくよ」
畑中が言った。
僕は頷いて、もう一度再生ボタンを押してから、スティックを構えた。
クリックに合わせて、カウントを出す。
始まった。
最初の四小節で、僕は少し変だと思った。
畑中が、遅れない。
いつもの畑中なら、小節の二拍目裏で、少しだけ後ろにためる。
一度、気持ちいい場所を通る。
それから三拍目の頭で、ぐっと戻ってくる。
その戻ってくる感じに、僕は合わせてきた。
でも、今日は違った。
畑中のベースは、最初からそこにいた。
まるで、音の粒が、最初から同じ大きさに切りそろえられているみたいだった。
畑中のベースに、コンプレッサーがかかったみたいだと思った。
コンプレッサーが何をしている機械なのか、僕はまだ正確には分かっていない。
ただ、渉君と畑中が話しているのを聞いて、音の粒、つまり一つ一つの音量や、エレキギターやベースの場合には音色までそろえてしまうものだということだけは知っている。
つまり、畑中の今日のプレイは、音量や音色だけの話ではなくて。
強い音と弱い音の差が、変に暴れない。
八分の間隔が、揺れない。つぶれない。伸びない。戻りすぎない。
クリックの少し前。僕のパッドの音のすぐ横。
本当に前ノリをしっかり維持できる場所で、粒立ちがそろって、ひたすら『刻んでいる』。
今日の畑中は、たぶん、自分の手でそれをやっていた。
それはすごいことのはずだった。
すごいことのはずなのに、僕は少しだけ、寂しいような気もした。
「止めていい?」
僕が言うと、畑中はすぐに弦を押さえた。
クリックだけが、二拍ほど鳴って、スマホの停止ボタンを押すのと同時に、僕の左耳がクリックから解放される。
「何」
畑中が訊いた。
「畑中、変わったよね?」
「うん。変えた」
畑中は、あっさり言った。
あっさり言ったけれど、その顔は、あっさりしていなかった。
「いつもの、後ろに引っ張ったり、ほんのちょっとだけ食って、揺れる感じが全くない」
「ないようにした」
「できるんだ」
「できた」
畑中は、ベースのネックを見ながら言った。
「できたけど、あんまり気持ちよくはない」
正直な畑中だった。
僕は、スティックの先で、大きい方の練習パッドを軽く叩いた。
こぉーん、と、ホントに小さい音だけど、綺麗に鳴る。
「でも、すごいと思う」
「すごくないよ」
「すごいよ。僕、一回できるようになるまで時間かかった」
「持田君は初心者じゃん」
「初心者に負けたら嫌だった?」
「嫌だった」
それも正直な畑中だった。
でも、畑中は、ふっと息を吐いた。
「嫌だったっていうのとは、ちょっと違うかも」
「違うのか」
「うん」
畑中は、耳の高さに置いてあった小さいアンプを手で取り上げて、膝の上に載せて、つまみを触った。
音量の問題ではないのに、つまみを触っている。
スタジオでも見たやつだ。
畑中は、気持ちの置き場所がない時に、アンプのつまみを触るのかもしれない。
「テスト期間中さ」
畑中が言った。
「うん」
「家でずっと考えてた」
「勉強は?」
「したよ」
「本当に?」
「したってば。赤点取ったらロックどころじゃないでしょ」
それはそうだ。
赤点とロックは相性が悪い。
いや、古いロックスターなら赤点と相性が良さそうな人達が多いけれど、少なくとも日本の高校生活とは相性が悪い。
「で、考えてたんだよ」
畑中は、ベースの弦を親指で軽く押さえた。
音は出ない。
ただ、弦が少しだけ揺れた。
「このバンド、文化祭までだと思う」
唐突だった。
でも、唐突ではない気もした。
僕は、すぐには返事ができなかった。
畑中も、すぐには続けなかった。
部室の外から、廊下を歩く誰かの声が聞こえる。
遠くで、椅子を引く音がした。
「文化祭までって」
僕は、ようやく言った。
「終わるってこと?」
「うん」
畑中は言った。
「たぶん、終わる……ちょっと違うかな。終わらせた方がいい、かも」
その声は、拗ねていなかった。
テスト期間に入る前にスタジオで聞いた、「浮気性」みたいな声ではない。
もっと、低い。
決めてきた声だった。
「京子ちゃんと渉君を、ちゃんとステージに載せる」
畑中は言った。
「杉宮君の企画も、ちゃんと形にする。外ステージを軽音部だけのものにしないって話も、ちゃんとやる。京子ちゃんが自分の言葉で歌えるようにする。渉君の曲も、ちゃんと鳴らす」
「うん」
「そこまでは、やるよ」
畑中は、僕を見た。
「私が言い出したんだから」
それは、畑中らしい言い方だった。
言い出したから、やる。
ただ面白がって、チラシを書いて、京子ちゃんと渉君を巻き込んだだけでは終わらせない。
そこに責任を持つ。
高校二年生の言葉にしては、少し重い。
でも畑中は、そういう重さを、ときどき急に持つ。
「でも、その後も続けるのは違うと思ったんだよね」
畑中は続けた。
「この形のまま続けるには、たぶん、私も持田君も無理する」
「僕も?」
「するよ」
「そうかな」
「する」
畑中は、今度も言い切った。
「持田君は、合わせちゃうから」
「合わせるの、悪いこと?」
「悪くないけど。持田君の優しくていいところ。でも、ずっと合わせると、たぶん、持田君のドラムが変わりすぎるよね」
「変わった方がいい場合もあるだろ」
「あるよ」
畑中はすぐに認めた。
一週間前のスタジオの時のように、僕が習得した新しい叩き方が、シャッフルのブルース進行に戻っても、良い効果をもたらすことは、分かった。
それを畑中も分かった。
だから、畑中は認めるしかない。
「だから文化祭まではやる。むしろ、ちゃんと変える。私も変えるよ。今日みたいに」
そう言って、畑中は自分のベースを見た。
「でも、ずっとこれだと、私はたぶん、持田君に文句を言っちゃう」
「もう言ってる」
「もっと言う」
「それは困る」
「困るでしょ」
畑中は声は真面目だった。
「文句言いながら音楽続けるの、楽しくないし、持田君も好きな音楽ができない」
でも、最後にちょっと笑った。
「持田君が好きな音楽は、私も好き、って前提だけど」
でも、すぐに真面目な顔に戻る。
「それに、京子ちゃんと渉君は、たぶん、別の形でやれるよね」
「二人で?」
「二人でかもしれないし、他の人を入れるかもしれないし、分かんない。でも、京子ちゃんはずっと歌う人になると思う。渉君は曲を作る人だし」
一呼吸おいてから、
「その方が二人にとっても良いと思う」
二人にとっても。それは、畑中の希望やバンドを終わらせることの言い訳じゃなく、ちゃんと「その方が良い」って意味だった。
「杉宮君は……」
畑中は少し考えた。
「杉宮?」
武術家の杉宮の音楽のことは別に考えなくてもいいと思うんだが……。
「杉宮君は、外ステージの王になる」
「何だそれ」
「分かんない。でも杉宮君って、そういう感じじゃん」
否定できない気がした。
杉宮は、囲碁将棋部長なのに、いつの間にか、文化部全体を繋いで文化祭の外ステージの調整役みたいなことをやるようになっていた。
しかも本人は、たぶん棋譜コントもやるつもりでいる。
部長は部長である。
何の部長なのかは、だんだん分からなくなってきているけれど。
「だからさ」
畑中は言った。
「終わらせるために、ちゃんとやりたい」
僕は、その言葉を聞いた。
終わらせるために、ちゃんとやる。
「京子ちゃんと渉君が、次のステップに行くために、私はしっかりサポートする」
終わるなら、手を抜いていい、ではない。
終わるからこそ、ちゃんとやる。
畑中は、そういうことを言っている。
「それ、僕も入ってる?」
僕は訊いた。
「何が」
「ちゃんとやるってやつ」
畑中は、少しだけきょとんとした顔をした。
それから、当たり前じゃん、という顔になる。
「入ってるに決まってるじゃん」
「じゃあ、僕もやる」
畑中は、少し黙った。
僕は、言ってから、少し恥ずかしくなった。
別に格好いいことを言ったつもりはない。
でも、少し格好つけたような言い方になった気がする。
「持田君はさ」
畑中が言った。
「そういうの、すぐ言うよね」
「ダメなのか」
「ダメじゃないけど」
「じゃあ、いいだろ」
「いいけど」
畑中は、下を向いた。
笑っているようにも見えた。
困っているようにも見えた。
「……浮気男っぽくて、腰が軽い」
小さく言った。
心外である。
「何が」
「そういうところ」
「そういうところと言われても」
「分かんなくていい」
分かんなくていいらしい。
分からなくていいと言われると、気になる。
でも、畑中がそれ以上言わないので、僕もそれ以上は訊かなかった。
「もう一回やる?」
僕が言った。
畑中は、少しだけ目を上げた。
「やる」
「クリック?」
「クリック」
畑中は、今度は嫌そうな顔をしなかった。
またイヤフォンを左耳に突っ込んで、スマホの再生ボタンを押す。
カッ、カッ、カッ、カッ。
耳の中に、また小さなクリックが鳴る。
僕は練習パッドにスティックを置いた。
畑中はベースを構える。
音は小さい。
生ドラムではない。
スタジオの空気もない。
アンプ直結の大きな音もない。
それでも、さっきより少し、二人で同じ場所に立っている気がした。
僕が八分を刻む。
畑中が入る。
粒のそろったベース。
コンプレッサーがかかったみたいな畑中。
でも、今度はさっきより、少しだけ畑中の音に顔があった。
完全に消したわけではない。
畳んでいるだけだ。
畑中は、畑中のまま、クリックに合わせようとしている。
僕は、それを聴いた。
左耳にクリック。
右耳に畑中。
数字と、畑中。
その二つを同時に聴く。
それが、文化祭までの僕の仕事なのかもしれない。
四小節。
八小節。
十六小節。
止まらない。
絡まらない。
畑中の音が、ちゃんとクリックの中にいる。
でも、ところどころで、ほんの少しだけ、畑中の癖が見える。
Bメロの終わりの、サビ進む直前の、大きめのフィル。
畑中の、本当に小さく……そしてほんの少し揺れる音。
僕はそこを拾いすぎないようにした。
拾いすぎると、また二人だけのロックになる。
でも、まったく拾わないと、畑中がいなくなる。
難しい。
難しいけれど、できない感じではなかった。
曲が終わり、畑中は小さく息を吐いた。
畑中は、そのまま僕のスマホに勝手に手を伸ばして、リピートになっていたクリックとオケをさっと止めた。
僕の左耳の中のクリックが消える。
「今の、どう?」
すぐに畑中が訊いてきた。
「良かったと思う」
「ほんと?」
念を押すように確認してくる畑中。
「ほんと。ベース聴けば分かる。ちゃんと畑中らしさも、ほんの少しだけあった」
「私らしさ?」
畑中は、少しだけ笑った。
「フィルの所。畑中らしさっていうか、畑中の匂い」
この間畑中が言った『別の女の匂い』を思い出して、それっぽく言ってみたら、畑中はあっけにとられたような顔をした。
そして、畑中の顔が赤くなり、口先が尖る。
「上手いこと言ったつもり?」
「まぁまぁ」
「持田君のまぁまぁはね……」
「そうだね、僕にしては」
「じゃあ許す」
また許されてしまった僕である。
畑中は、ベースをスタンドに置いた。
手を離しても倒れないことを確認してから、少しだけ肩を回す。
「文化祭まで」
畑中が言った。
「うん」
「ちゃんとやろ」
「ああ」
「で、終わったら」
畑中は、そこで一度言葉を切った。
「終わったら?」
僕が訊く。
畑中は、少しだけ笑った。
「ロックやる」
「今もやってるだろ」
「違う」
「じゃ、なに?」
「私のための持田君になって」
私のための。
畑中は、わりと自然にそう言った。
自然に言ったので、僕は少し反応が遅れた。
「……ああ」
「何、その間」
「別に」
「変な持田君」
変なのは畑中の方ではないか、と思った。
でも、それは言わなかった。
部室の外から、少し騒がしい声が近づいてきた。
一年生の進路行事が終わったのかもしれない。
あるいは、別の部活の誰かかもしれない。
部室は、急に普通の部室に戻った。
将棋盤があり、古い棚があり、譜面とノートがあり、小さいアンプがあり、練習パッドがある。
そして、赤いムスタングベースが、スタンドに立っている。
文化祭まで。
その言葉は、終わりの予告みたいで、少し寂しかった。
でも同時に、始まりの合図みたいでもあった。
終わらせるために、ちゃんとやる。
僕らは、ちゃんと終わらせるために、初めて本気でこのバンドを始めたのかもしれない。
その時、廊下の向こうで京子ちゃんの声がしたような気がした。
実際には、聞き間違いだったかもしれない。
進路行事から戻ってくるには、まだ少し早い。
けれど、僕はふと、次に京子ちゃんがどんな言葉を持ってくるのかを考えた。
京子ちゃんは、自分の言葉を探している。
渉君は、それを曲にしようとしている。
杉宮は、外ステージの王になるかもしれない。
畑中は、文化祭までやると決めた。
僕は。
練習パッドの上で、スティックを一発跳ね返らせる。
こぉーんと、と小さく綺麗に響いた。




