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Gestalt 〜魂のカタチ〜  作者: どこぞの暇人
Chapter.1 《始まり》のカタチ
12/15

Ep.12 図書館

神代暦3525年、冬月2日。

フィル大陸西部の町、レデーナ。


冬月に入り、この地域でも最近は寒さが増してきていた。



ソラ達は宿の前に集まっていた。



エリアス

「今日一日は自由行動で。

何かあったら僕に伝えて。図書館で暇つぶしでもしてるからさ。」



この町の中心には、フィル大陸でも有数の図書館がある。

古代文明を解き明かす鍵となるような古文書から、使い道すらまるで分からない魔法が載っている魔導書まで、貸し出されている本は様々だ。



リュウガ

「おう、分かったぜ。

にしてもなんか意外だな、お前が図書館行くのって。」


エリアス

「え?そうかなぁ。」


リュウガ

「お前って根っからの冒険者だと思ってたからさ。

案外本とかも読むんだな、って。」


エリアス

「そうだね…

ほら、この大陸って色々な伝説があるじゃん?

古代文明フィルとか、勇者の伝説とかさ。」



古代文明フィルは、この大陸にかつて存在していたとされる古代文明だ。

その凄まじい技術と文明で、何千年にも渡り繁栄したという話も残っている。



エリアス

「遺跡の探索とかの情報集めが主だね。

そういう事に目が無くってさ。」


リュウガ

「何だよ、結局冒険じゃねぇか。」



リュウガは苦笑してそう答えた。



エリアス

「ま、そういう訳だよ。

じゃあね、僕は図書館の方に行くから。」



そうとだけ言い残すと、彼はふらっとどこかに行ってしまった。



リュウガ

「ソラ、そっちはどうすんだ?」


ソラ

「どうしようかなぁ。

私は魔導書でも見に行こうかな。」


リュウガ

「分かったぜ。

じゃ、また後でな。エリーゼも。」



相変わらずソラの腕に抱えられているエリーゼは、リュウガの言葉に対してその小さな腕を振る。


彼と別れると、ソラは街角の魔導書店に向かった。



扉を開くと、やはり中には様々な魔導書が棚に並べられていた。

ソラは目を輝かせながら中を見渡す。



ソラ

「この本は…『複合魔術指南書』!

ずっと探してたやつだ!

こっちは『スライムでも分かる錬成魔術の入門書』かぁ…

『体系七大魔法書 上位編』まで…」



そんな風に、棚の魔導書の名前を読み上げながら見る。



ソラ

「うっ…でも流石に高いね…

全部銀貨が数十枚単位で要求される…」



本に付いた値札を見て、ソラはそう呟く。



「何かお探しですかね?」



しわがれた、しかし優しげな声が聞こえてくる。

後ろを振り向くと、そこには杖をつきながら立つ白い髭の老人がいた。


見た所、この店の店長のようだ。



ソラ

「あ、えーと…

本は見つかったんですけど、その…私には高くて買えなさそうで…」



ソラは苦笑いしながらそう言う。



「うーむ、金額はどうすることも出来んからのう…


そうじゃ、図書館に行ってみるのはどうじゃ?」


ソラ

「図書館…この町の中央にあるあれですか?」


「そうじゃ。

あそこなら魔導書も無料で読める。」


ソラ

「魔導書もあるんですか!?」



ソラは驚き、目を見開きながらそう言う。



「あそこはここよりも断然多くの魔導書が揃っとる。

何せ、大陸中の本が集まる場所じゃからな。」


ソラ

「分かりました!!行ってみます!!」



ソラはそう言うなり、すぐに店を飛び出す。



「気を付けてな。」



老人のそんな言葉を背に、ソラは図書館へと走った。


─────


図書館に入り、立ち並ぶ棚を順に見つめる。

壁一面に広がる天井に届くほどの高い本棚には、様々な本が敷き詰められている。


そうしていると、彼女は遠くに見覚えのある人物を見つけた。

エリアスだ。



ソラ

(…そういえば図書館に行くとか言ってたっけな。)



そう思いながら、ソラはエリアスの方へと歩いていく。

彼は歴史や伝記の本を見ているようだった。



ソラ

「エリアスさん?」


エリアス

「っ、あぁ、ソラか。」



エリアスははっとして棚から目を離し、ソラの声の方を見る。



ソラ

「どうしたのそんな驚いて。

何見てたの?」


エリアス

「歴史とか伝記のコーナーをね。

こういう勇者の本とかさ。」



彼はそう言って、ソラに手に取っていた本を見せる。

『勇者の伝承記』という題名の本だ。



エリアス

「どんな感じかというとね…」


─────


勇者。

それは女神から闇を打ち払うべく力を与えられた者。


その速さは神速に等しく、

その魔力はあらゆる闇を破るとも言う。


現在に至るまで12人の勇者が存在したとされ、彼らはいずれも人智を超える凄まじい力を持っていたとされる。

しかし文献や資料も少なく、その力はあまり良く分かっていない。


─────


まさしくおとぎ話のような話だ。

こんな人間が本当に存在すると言うのか。


別のページにはこんな記述もされている。


─────


初代勇者 ノース・フランベル

世界に生まれた最初の勇者。


神代暦2661年、当時人類を脅かしていた魔王を討ち倒し、世界を救った勇者である。

─────


一番最初の勇者についての話のようだ。

少しページをめくると、他の勇者についても書かれている。


─────


3代目の勇者 天野 明人

歴代で12人存在した中でも最強と言われる勇者。


神代暦3225年頃に突如として世界から姿を消した。

最後に目撃されたのは大陸北部地域。

フィル大陸の最北端には冥界に繋がるという伝承のある『岬の祭壇』が存在し、そこから彼は冥界に渡ったのではないかと言われている。


彼が引き連れていた3人の仲間や、彼自身の死体もまだ見つかっていない。

それどころか、彼が振るっていた剣などの遺品すら見つからない為、彼は未だ魔王と戦い続けているという伝承すら存在する。


彼の見た目や性格については、彼を知る者がかなり少ないことから良く分かっていない。

最強の勇者であり、そして歴代で最も謎多き勇者でもある。


─────


ソラ

「300年前に魔王と戦った人間がいたんだ…

しかも、まだ戦い続けているかもしれないって…」


エリアス

「まぁ、本当に冥界に行ったのなら戻ってこれてないだけだろうけどね。」


─────


7代目の勇者 ズィル・ボーデン

前述の勇者アキトに次ぐ強さと言われた勇者。

3340年頃に活躍。その後は魔族に殺されてしまったと言われている。


その圧倒的な力とカリスマ性で、まさに国家の軍隊レベルの部隊を引き連れた勇者。


彼自身も筋骨隆々の肉体を持っており、魔鉱石製の巨大な両手剣を二刀流で扱ったり、

彼一人で魔王軍を鎮圧させたという伝説まで残っていることからも、かなりの肉体派な勇者であったとされる。


─────


これらの他にも、他の勇者の伝説や勇者の正体を考察した記述もされている。



ソラ

「凄いね、勇者って。

選ばれた人ってやっぱ違うんだろうなぁ。」


エリアス

「今この時代にも勇者が居てくれたらね。


前の勇者は3460年に活躍してたのが最後だってよ。」


ソラ

「でも…」



ソラはそこで言葉を止める。



エリアス

「んー?」


ソラ

「…勇者だ何だって言ってるけどさ。

私達を救ってくれるあの勇者達はどんな気持ちで生きてるんだろう、って。」


エリアス

「なんでそんな事考えるのさ。

勇者は勇者。

みんなを救ってくれる正義の味方だよ。」


ソラ

「そうかもしれないけどさ。

…ただ、勇者になった人は、

みんなの期待とか責任を背負って生きてくんでしょ?

生まれた時からそんなのって…


これじゃ、人々が救われても…

勇者になった人は救われないままかもしれない。」



ソラはそう言い切って、黙り込んでしまった。



エリアス

「…」



エリアスも口を噤む。


考えてみればそうだ。

勇者が希望の象徴とされ、崇められる世界。


その勇者は何を心の支えとして生きればいいのか?



エリアス

「…きっと、」



静寂を破るように、エリアスは口を開く。



エリアス

「勇者様はみんなの笑顔を糧に生きてるんでしょ。」


ソラ

「そんな…おとぎ話の勇者様じゃないんだから…」


エリアス

「案外違うかもよ?

だってほら、いい事して感謝されたらこっちも嬉しくなるじゃん。


ああいう事だと、僕は思うけどね。」


ソラ

「全部知ってる、みたいな話し振りじゃん。」


エリアス

「えぇ?そんな風に聞こえたかなぁ…」



エリアスは笑ってそう答える。



ソラ

「…でも、そうであって欲しいね。」


エリアス

「うん。その通り。」



そう言葉を交わすと、二人は静かに手元の本を見つめた。



ソラ

「あ、そうだ、魔導書!!」



突然思い出してそう呟くと、ソラは魔導書が並べられている本棚へと走っていく。



エリアス

「あ!ちょっと!!

図書館で走るのはダメだって!!」



そう言うエリアスもソラを走って追いかけるのであった。

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