Ep.10 陽気な旅人
神代暦3525年、秋月82日。
フィル大陸西部の町、ホーリッド。
朝食を終えたソラ達は、それぞれの買い出しの割り当てやこれからの旅の計画を話し合っていた。
エリアス
「さて、あとは…武器くらいか。
みんな大丈夫そう?」
ソラ
「私は大丈夫だよ。魔法の杖だし。」
エリアス
「リュウガは?」
リュウガ
「俺はこの拳一つで十分だよ。」
エリアス
「グローブかなんかくらいは買っときなよ…」
エリアスは苦笑して答える。
エリアス
「じゃあ次。これからの旅について。」
彼はそう言うと大陸の地図をテーブルいっぱいに広げた。
エリアス
「まず、僕らは多分魔族に狙われてる。
エリーゼを連れてるからね。」
それを聞いたエリーゼは首を傾げ、きょとんとした表情を見せた。
エリアス
「なので、多分これからは魔族から逃げながらの旅になると思うよ。」
ソラ
「えぇー…」
リュウガ
「おいおい…」
2人はつまらなさそうに彼を見る。
エリアス
「まあまあ。そんな気を落とさないでよ。
あいつらも誰かの命令で動いてる以上、下手に行動は起こせないはず。
最初はこっちの情報を集めてくると思う。
だから、監視の目さえ振り切れば…
あいつらを撒けるはず。
とりあえずどう逃げるかを考えなきゃね。」
エリアスはまた地図を見つめる。
ソラ
「でもどう動くか分かんないよ?
飛行魔法で動くならまだ撒けそうな気はするけど…」
リュウガ
「そうだな。どれくらいの速さで追ってくるかが大事な気がする。」
エリアスは2人の言葉を聞き、少し考える。
そしてこう答えた。
エリアス
「そこら辺は…まぁ大丈夫でしょ!
見つかってもどこかに逃げ込めばいいし。」
リュウガ
「無策が過ぎるだろ…」
リュウガは呆れたようにエリアスを見つめた。
ソラ
「まぁ逃げることは出来ると思うけど、その後にどこに逃げ込むかだよね…」
ソラは大陸地図をまじまじと見つめる。
すると、ソラの目にとある文字が飛び込んできた。
ソラ
「…エリアスさん。
ここって…」
ソラはある町を指で差し示した。
『聖都グルダリア』。
エリアス
「聖都グルダリア?
…あぁ、なるほど。
ここなら聖結界が張られているから、魔族も入り込めないって話?」
グルダリアはフィル大陸各地から女神を信じる聖徒や神官が集まる、いわば聖地のような場所だ。
そこを守るために結界が都市の周りに張られていても、おかしい話ではない。
エリアス
「なるほど、考えたね。
しかもグルダリアならエリーゼについての資料もあるかもしれない。」
リュウガ
「こいつについて何か分かれば、それを追う魔族の狙いも分かるって寸法か。
俺は大賛成だぜ。
…あの炎の魔族について分かるかもしれないしな。」
エリアス
「とりあえず、グルダリアまで何日掛かるかな…」
そう言いながら、彼は地図上のグルダリアまでの道のりを指で辿る。
エリアス
「ざっと50日かな。
冬が始まっても、南部諸国は雪もあまり降らないし大丈夫そうだ。」
リュウガ
「そうと決まりゃ、すぐ出発しようぜ。」
エリアス
「うん。出発は明日の朝。
今日一日は、みんなそれぞれで旅立ちの準備とかしといて。
次の大きな街は貿易都市アルノス。
かなり遠いから、買えるものはここで買っておこう。」
エリアスの言葉に、リュウガとソラは頷く。
ソラ
「流石エリアスさん。やっぱり旅についてはエキスパートだね。」
エリアス
「それほどでもないよ。
これでもまだ、旅を始めて8年くらい。」
ソラ
「8年かぁ。」
(あれ?そういえばこの人何歳だ…?)
ソラはエリアスをまじまじと見つめる。
思い返してみれば、エリアスのことについて自分はまだ何も知らない。
見た目はごく普通の青年に見えるが…
エリアス
「…ソラ?どうかした?」
ソラ
「あぁ、その…
エリアスさんって、何歳なのかなぁ…って。」
エリアス
「年齢かぁ…
そういえばあんまり僕のことって話してないよね。」
ソラ
「うん。だからちょっと知りたくなってさ。」
エリアス
「んー…
話すって言っても、別にこの通り普通の人間だよ。
子どもの頃は、小さい村で家族の手伝いとかしてた。
旅に出たのは…気まぐれって所かな?
気付いたら、こんな流浪の旅人になっちゃってたって訳さ。あはは。」
エリアスは陽気に笑った。
そんな彼をソラは呆れたように見つめる、
ソラ
「なんか…エリアスさんってそういう所あるよね。
たまにめっちゃ適当だったりとかさ…」
エリアス
「えぇ?そうかなぁ?」
そう言ってまたエリアスは笑った。
エリアス
「はいはい。話は終わりー。
そろそろ買い出し行かないとね。」
ソラ
「はぁーい。
えーと…買わなきゃいけないのは…っと。」
ソラはペンとメモ帳を取り出し、何を買うか考えながら宿を後にした。
─────
エリアスとソラの二人は、買い出しの道すがら雑談をしていた。
ソラ
「前に私を守ってくれた時は凄く強かったけど…あれは?」
エリアス
「あの竜がソラの方を見てくれてたからさ。
奇襲で何とか倒せたって感じかな。
一撃で決めないとソラも助けられなかったし、僕だって死んでたかもね。」
エリアスはそう言うと、背中の剣をゆっくりと抜いた。
黒い刃が日光を鈍く反射して光る。
ソラ
「黒い剣…それは?」
エリアス
「貰い物だよ。
黒曜石でできた剣なんだって。
あの竜を殺せたのもこれのお陰かな。
特殊な魔力加工を施して、特有の脆さを克服した剣らしい。」
そう言って彼は刃の部分を優しく指でなぞる。
よく見ると、所々刃毀れしているのが分かった。
ソラ
「かなり使い込んでるみたいだけど…」
エリアス
「この剣自体はあんまり使ってないよ。
魔力加工を施したとはいえ、普通の剣より脆いのに変わりはないからね。」
ソラ
「なるほど、そうなんだ…」
ソラはエリアスの剣を凝視する。
ソラ
「折れそうで心配だね…」
エリアス
「まぁ、折れる前にこれをくれた人の所に行くよ。
その人もちょうどグルダリアに居るからね。」
ソラ
「なら、なおさら急がなきゃだね。」
エリアス
「そうだね。
…っと、次のお店はここだ。」
そう言って彼は目の前の店を指差し、その中へと歩いていった。




