表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Gestalt 〜魂のカタチ〜  作者: どこぞの暇人
Chapter.1 《記憶》のカタチ
9/9

Ep.9 六天魔族

ステンドグラスの向こう側では、終わる気配のない雷雨が激しく降っている。

絶え間ない稲光が部屋の中を断続的に照らす。

雷鳴が鳴り響く度に地面が大きく震え、

玉座の間を灯す数々の紫炎が揺れ動く。



神代暦3525年、秋月72日。





冥界。魔王城。



玉座の前には6つの影があった。


炎を宿す影。

静かに冷気を放つ影。

雷光を纏う影。

疾風の如き影。

威圧感と共に佇む影。

闇に揺らめく影。



そして玉座に座る人物は、その影たちに話しかけた。




「こんにちは。

実に10年ぶりですね。


『六天魔族』の皆さん。」



炎を宿す影───

グリューエンは、玉座に座る人物に話しかける。



グリューエン

「我らが主。

本日は重大な報告を致したく参りました。」



その言葉を聞いた玉座の人物は、興味深そうに彼を見た。



「ふむ。その内容を教えていただけますか?」


グリューエンは口を開く。



グリューエン

「フィル大陸南西部、エネル森林にて…

『プロヴィデンスの眼』を確認致しました。」


「おぉ、遂に見つかったのですか。

…して、その行方は?」



グリューエンは目を伏せ、少し間を置いてから答える。



グリューエン

「それが…通りすがりの旅人に持ち去られてしまいました。」



玉座の人物は少し目を伏せた。

そしてこう答える。



「…通りすがりの旅人に?」


グリューエン

「本当に申し訳ございません。

俺とした事が…」


「いえいえ、謝らないで下さい。

ですが…まさか貴方程の方がそんな失敗をするとは。


その持ち去った旅人の情報は?」


グリューエン

「はい。

旅人は恐らく三人。

俺が見た所では、全員人間でした。


赤黒い髪をした男が一人。

こいつは恐らく近接戦特化の武闘家。

水色の髪色の女が一人。

彼女が『プロヴィデンスの眼』を持ち去ったと思われます。

あと一人は部下に任せていた為、見た目や特徴はあまり分かりませんでした。」


「分かりました。

…フィル大陸の南西部でしたよね?」


グリューエン

「はい。」


「…そうですね、

では、


一旦こちらからは動かずに様子を見ましょう。」



グリューエンは顔を上げ、玉座の間に座る人物の方を向く。



グリューエン

「ちょ…ちょっと待って下さいよ!

相手は所詮人間です。

早くこちらから仕掛けた方が──」


「グリューエン。」



言葉を遮るようにそう言われ、すぐに彼は黙り込んだ。



「『プロヴィデンスの眼』を持っているのなら、迂闊に我々が手出ししても返り討ちに遭うだけでしょう。

あちらを徹底的に調べ上げて、虎視眈々と狙う。


それが最も確実でしょう?」


グリューエン

「…仰る通りです。」


「それでは…

グリューエン。

ハーゲル。

ブリッツ。

オルカーン。

フェルゼン。

アーベント。


『プロヴィデンスの眼』を持ち去った旅人の調査、そしてその奪還をここに命令します。」



名を呼ばれた各々が敬礼をした。



「仰せのままに。

我らが魔王、


プルート様。」



─────



六天魔族達は玉座の間を後にした。

その後、彼らは魔王城の一室で会議を行っていた。



グリューエン

「という訳だ。

最初に奴らを見つけたのはこの俺。

ということで、俺はフィル大陸南西のエネリット周辺を見るぜ。」



グリューエンは高らかにそう宣言する。

それを聞き、雷を纏う魔族が声を荒げた。



ブリッツ

「ちょっと待てよ。なら俺が行く。

俺がやった方が確実だ。」



『《滅雷》のブリッツ』。

雷の六天魔族。



グリューエン

「はあ!?お前は黙ってろ!

最初に見つけた俺が()るんだよ!」



そうして二人は言い合いを始めてしまった。

その時、突然彼らを制止するように机が凍り付いた。



ハーゲル

「あなた達またそうやって喧嘩して何の意味があるって言うの?

前回もそれで失敗したじゃない。」



声を上げたのは氷の六天魔族、『《絶氷》のハーゲル』。


グリューエンは彼女の気迫に押されながらも返答する。



グリューエン

「それは…そうだけど...

いやあれはこいつが悪いんだよ!!」


ブリッツ

「違うだろ!元はと言えばお前が…」



そうしていると、背後から明るい声が聞こえてきた。



フェルゼン

「まあまあ落ち着きなってみんな~。

とりあえずグリューエンが見つけた人間共をぶっ殺す方法を考えればいいわけでしょ?

簡単じゃあん!」



その重々しい雰囲気からは予想出来ないほど軽快で明るい口調で彼女は話す。


地の六天魔族、『《剛壁》のフェルゼン』だ。



ハーゲル

「フェルゼン...あなたはねぇ...

もっと計画性を持ちなさいよ3人とも!」



彼女が話す度、部屋の床や壁に氷が伝っていく。

すると、彼女を止めるように一人が声を掛けた。



オルカーン

「ちょっと、ハーゲル様も落ち着いて下さい。

一旦、私たち全員で話し合うべきではないでしょうか。」



彼女は静かに話す。


『《旋風》のオルカーン』。

風を纏う六天魔族だ。



グリューエン

「分かってるけどよぉ...」



その時。



「...静まれ。」



部屋の隅で椅子に座らず立っていた影。


闇の六天魔族、『《幽影》のアーベント』が静かに話し出した。


取っ組み合いをしていたグリューエンとブリッツも、全員をまとめられず苛立ちを覚えていたハーゲルも、誰もが彼の方を向いた。



アーベント

「我は感じるのだ。

この大陸に灯る、微かな光。


かつて、『勇者』が現れた時と同じものだ。


我々は、必ずあの『プロヴィデンスの眼』を取り戻さなければならない。


…我は、そう感じるのだ。」



部屋の中が静まり返る。



ハーゲル

「つまり…『勇者』が再び現れたってこと?」


アーベント

「…我には分からぬ。

しかし、プルート様が油断するなと仰ったのだ。


あの方もまた、何か勘付いているのかもしれぬ。」


ブリッツ

「…なるほどな。

まぁどちらにせよ、あの『プロヴィデンスの眼』とやらはすぐに取り戻さなきゃならないな。」



そう言いながら、ブリッツはテーブルの脇に置かれたフィル大陸の地図を持ち上げ、それをゆっくりと開く。



ブリッツ

「例の旅人が居そうな地域はグリューエンに任せる。

交戦経験のあるお前が、万が一の時も考えると一番の適任だ。


他の俺たちは別行動。

こっちの方でもやる事があるからな。

つっても、アーベントの力ですぐ全員集合は出来る。


どうだ?」



大陸地図を広げ、ブリッツはそう話した。



ハーゲル

「そうね…

私は賛成だわ。」



他の六天魔族も、皆彼の言葉に頷いた。



グリューエン

「決まりだな。

それじゃ、俺が行ってくるぜ。」


ハーゲル

「一番の目的は情報収集よ。

そこは履き違えないで。」


グリューエン

「分かってるって。」



彼は笑いながらそう答えた。


そして、6人は魔王城の出口へと歩き始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ