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48.交換条件






 私はあの時、死んだユリーナに対して憎悪を抱いた。

 よくよく考えれば恨むべきはカタリナだし、なんで私はああまで憎んでいたのだろうと。

 殺されたのは一番の要因だけど、別にそこまでの憎悪を抱く必要はないのでは、と思ったのだ。

 …いや、殺されるのはめちゃくちゃ憎むべきだな。

 魔物を殺しすぎたのかな?私がどんどんヤバい奴になっている気がして否めない。


 私の周辺が死を最も恐れるべきものと思っていないのも大きいかもしれない。

 現代的な価値観だと死んでしまうのはほとんどないし、死ぬのは悪いことだって感じだった。

 でもなんか、この世界の人々は死よりも侮辱されるのが一番嫌だみたいな人が多いっぽい。

 ぼちぼち戦争も起こってるし、魔物を殺すなんてざらにあるし、そういう理由なのかな?

 はあ、複雑。


 それはさておき、そういえばずっと前にも憎悪に飲まれていた時期があったな。

 ユリーナに復讐するって決めたこと、あれはよくよく考えてみれば論理的な考え方じゃ無かったはずだ。

 おかしかったのは(セーレ)じゃなくて、(シラル)の方だった気がする。

 そう考えると納得だ。


 シラルはいい人だった。

 客観的に見て、めちゃくちゃ優しかったと思う。

 人を無条件に信じていたから、人に裏切られて生を絶たれた時、(シラル)はどう感じただろう。

 絶望し、また生が与えられ、絶望が憎悪に変わった。


 …ああ、なるほどね。

 私が時々おかしくなるのは前世の私が出てきたからか。

 ほうほう、なんかどうでも良くなってきた。


「えー、で、今はフシルスだっけ?とりあえずここに来るまでの経緯を説明してくれる?」

「…死んで、レナリア、さん?に会って、引っ張られた感じがして、気づいたらここにいた」

「何の参考にもならないね」

 レナリアってのが誰だか気になるけど。

「ちなみに、レナリアというのは魂の管理人である大精霊の名前よ」

「何その死神みたいな役割」

「体を失った魂を預かる役割よ」


「…とりあえず、私の分身を乗っ取ったのは不問にしてあげる。仕方なかったっぽいし」

「ありがとう?」

「で、お前はこれからどうするんだ?」

「…え?あんたが養ってくれるんじゃないの?」

「はあ?」

 早速本性が出てきたか。


「このクソ女神、てめーの精神年齢何歳だ?一人暮らしぐらい余裕だろ。そもそも、神になったんだからどっかで漂ってろよ」

「…こわぁ」

「ああ?なんか文句あるか?」

「あるわよ…」

 ちぇっ。ヤンキーみたいなこと言っても変わらんか。


「まず!私がここに来たのはあなたが分身を生み出したから!」

「そうだけど…」

「つまり、私が神として生まれたのはあなたに直接的な原因があるってことよ!」

「それがどうしたの?」

「あなたは私の親よ!親は無条件に子供を世話する必要があるでしょ?」

「…ああ、だから世話しろと…」

 こいつ傲慢だな。


「しかも、私はあなたの料理の味見をしてあげるし、家事だってやるわ!」

「いや、家事は私が魔法を使ってちゃちゃってやるよ…」

「…えっと、まあでも味見してくれる人がいるのはいいでしょ!」

「てめーなんで私に課題があるのを知ってるんだ?」

「記憶を覗いたけど、何か悪い?」

 …あー…。こいつ神だったわ。


「つーか闇属性ってどんな魔法があるん?」

「いや、知らないわよ」

 くそ、役に立たねえ。

「なんかこう、ないの?魂入れ替えとかやってたじゃん」

「…ちょっと待ちなさい」

 フシルスが頭を抱えだす。

 …めっちゃ悩むじゃん。こいつ、全然頼れないな。

「あ、私の能力結構強いわね」

「え、分かったん?」


「改めて自己紹介するわ。私はフシル、もといユリーナ。神となって名前がフシルスになったみたい。司るものは闇と文明。七番目の女神ね」

「…いや、私が知ってる女神ってフシルス含めて六人なんだけど」

「そう。それは私も思ったわ。だけど、問い合わせたら私の前に"光と感情を司る女神"が誕生していたらしいのよ」

「気になるところはそれ以外にもあるけど、問い合わせって誰にしたの?」

「誰にって…この世界の生みの親とされるヤリスだけど」

「あー、全知全能神(ヤリス)ね」


 誕生した女神にある程度の知識を教える仕事とかなんだろうか。

「で、なんでその"光の女神"は認知されてないの?」

「そこからは私が説明するわ」

 セレンが口を開く。


「セーレには水の神が怪しいって言ったわよね」

「ああ、あったね」

「彼女が何を思ったかは分からないけれど、光の女神のことを公開しないようにしたのよ」

「なんで?」

「分からないわ。そして、多分その流れだとここにいる闇の女神のことも公表しないつもりね」

「神様だって威張れないのね…」

「フシルス、てめー何考えてんだ」


「まあそれはともかくして、問い合わせしたのなら自分の能力が分かるんじゃない?」

 確かに。

「まあ、想像通り闇というか影を操れるわね。それに、光さえなければ夜は闇に包まれてるから、夜になれば私は最強よ」

「あと、神様だったら闇属性の天啓みたいなのも使えるのでは?」

「そうそう、そういうことよ」


 …うーむ。

 ユリーナへの恨みってのは少なからずあるけど、別にそんな強い思念ではないんだよなあ。

 しかも、神が味方についたら最強だな。

「…まあ、いいんじゃない?ここがフシルスの家ってことで」

「え、ほんと?」

「うん。ただそのかわり、私の味方になれ」

「…えっ」

「交換条件って大事だと思うんだ」


 神の取り込みに成功。






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