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46.水害








 何を言っているのかよく分からないと思うけど、そのまんま私が居た場所周辺が水に覆われたのだ。

 突然海の真ん中に放り出されたような。

 なんでこんなことになってるんだ?

 あの恐竜に魔力は碌に残っていないはず。属性を使って水を生み出したって可能性があるけど、それも魔力を消費するはずだ。こんな量の水を生み出すなんてあの恐竜には不可能だ。

 かと言って海の真ん中に転移されてはいないっぽい。

 それは探知でわかった。


 この岩場があった場所の周辺の国までもが水色に塗り潰される。

 …いや、はあ?

 あの恐竜がやったと思えないし、それこそ精霊か神の所業だ。


 …ん?神?


 記憶に新しいのはユリーナが死んだ時。

 忘れかけてたけど、セレンは水もとい、水の女神に気をつけろみたいなことを言っていた。

 ええ、なんの目的で?


 と、悠長に考えている時間はない。

 必死に上に向かって泳いでいるけど、水面が全く見えない。

 水の中にある空気(かぜ)を口に集めて息を繋いでたけど、もうあんまり集まらなくなってきた。

 一気に防御(バリア)の弱さが浮き彫りになるなあ。

 殺意のある魔法、動きは止められるけど、この量の水は殺意って認識出来なかったのだろうか。

 うーむ、紙一重。


 しかし、こうも水面が見えないってなると、結構やばい状況だ。

 出来るかどうか分からないけど、転移してみるか。

 この海(仮)の底に転移されそうな気しかしないけど。

 残った息を吸い込んで、はっきりと口にする。

「転移」

 目標は直上。


「っぷは」

 久しぶりの空気、まじで美味しい。

 次々と私の魔法の弱点が浮き彫りになるから、てっきりダメだと思っていた。

「…ごほっ」

 飲み込んでしまった水を吐く。

 ちなみに、この水は海水みたいにしょっぱくはなかった。

 

 つまり、この日、世界が暗闇に包まれた頃。

 この岩場周辺は、大きな湖の底に沈んだ。


 …うん。

 現実味がなさすぎる。

 とりあえずとんでもないことが起きているな。

 ちなみに私は今、必死に自分の体を浮遊させてなんとか溺れずにすんでいる。

 泳ぎ方は知っているけど、この体で泳いだことがないので泳げない。

 ていうかこの感覚、浮き輪を使っているときに似ている。


 暗いから灯りをつけておこう。

発光(ライト)

 弱点こそあるものの、やっぱり私の魔法さんは強い。

 うーむ、この防御(バリア)の設定みたいなのを自在に変えられたらもっと強くなるんだけどなあ。

 …いや、多分出来るわ。

 私の魔法はおそらく、この世界に存在する魔法を自由に使えるものだ。

 今が中世だと仮定して世界に一千万人程度はいると考えたら、私は一千万個の魔法を使えるのだ。


 この広い世界だ、付与魔法みたいなのもワンチャンある。

属性付与(エンチャント)

 対象は私の防御(バリア)魔法。追加する機能は防水。

 歯車がハマったような感覚がする。

 と、私の周り、バリアの範囲内の水が消え失せた。

 魔力がちょっと回復したから、魔力として還元させたみたいな感じかな?


 ただ、頑張って浮いていた私の体が下に落ちる。

 …あー、さらに沈んじゃう感じね。

属性付与(エンチャント)

 防御(バリア)に浮遊機能を追加。

 予想通りに水面に浮いてくれた。

 なるほど、この付与魔法めちゃくちゃ有用だ。


 どっかで見たような感じでぷかぷか浮かぶ。

 ふう、落ち着いた。

 

 現状を打破する方法を考える。

  とりあえず、先生に報告はするべきかな。

「探知」

 ケルト先生を探す。

 こればっかりはいそうな場所を片っ端から探してみるしかない。

 意外なことに学園の調理室で書類を眺めていた。

 この先生のことだからどっかのダンジョンに篭ってるのかと思ってたよ。


「転移」

「…あら、セーレじゃないの。どうかしたの?」

 先生の前で何回も転移してるからか、微塵も驚かれない。

 これはこれでなんか嫌だな。

 継続的に驚かせるには頻度を落とした方がいいかもしれない。

 それはともかく。


「先生、私が飛ばされたのってゴーガン岩場であってますよね?」

「あーそうね、あなた結構強いようだから、魔物が大量に発生する場所でも別にいいかなと思って。もしかしてピンチだった?」

「ピンチじゃないわけではないんですけどね。それより、こういう感じの魔物って存在しますか?」

 先生は人の思考を覗ける魔法を持っている。

 こうやって言えば、察して私が思い浮かべている恐竜の姿を見ることができるはずだ。


「…いや、どの文献にも多分載っていないわね。ドラゴンのようだけれど。そんな水害を引き起こせるとは考えられないわ」

 うむ、記憶まで読まれている。

 私が知られてもいいかな、と思っている程度のこと以外は分からないって言ってたけどどうだろうか。

 嘘をついているような感じがするのは気のせいだろうか。


「…それを調べて欲しいのね。分かったわ、色々調べてみる」

「ありがとうございます」

「はい」

 肩に先生の手が置かれる。

「…はい?」

「あら、転移でそこに連れて行ってくれないの?」

「あ、そういうことですか…」

 人使いが荒い先生だな。


「あと、トラブルが起こってしまったのなら仕方ないわね」

 お、実習期間消滅か?

「別の場所で頑張ってくれる?」

「………はぁい」

 不服。


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