出勤前
今日の朝食は定番の簡素な和食だ。
俺の作る和食は彩香も絶賛するもので、得意料理となっている。
それはまあ、就活失敗続きで父子家庭の家に引きこもっていれば料理スキルくらいは身に付く。
そんな絶品朝ご飯であるが、俺はイマイチ食欲が湧かないので、彩香に「食べ終わったら食器は下げとけよ」と言い残して自室で眠る。
ーーアリサも、このマンションでこれから眠るのだろうか。
目を覚ますと日が沈みかけていた。
朝寝の夕方起き…無職時代にも似たような生活パターンで生活していた事があったな。
専ら、あの頃の徹夜は仕事ではなくオンラインゲームだったが。
「ただいまー」
彩香の声がする。
「おかえり」
返答をすると、彩香が俺の部屋に入り込んできた。
「お兄ちゃん!お兄ちゃんも案外隅に置けない男だね!」
いきなり訳のわからない事を言われてちんぷんかんぷんな俺。
「このマンションに入る時金髪ショートの美人さんから連絡先を書いた紙を貰ってさ、これをお兄ちゃんに渡すようにって」
相手はなんとなく察しが付いた、アリサだろう。
「ああわかった、わざわざ伝えてくれてありがとな」
「どいたまー!」
早速その連絡先をケータイに登録…してみたはいいがメールもLINEも送る内容が見つからない。
よくよく考えなくとも俺とアリサは知り合ってまだ2日目だ、アリサが彩香の事を俺の妹だと理解出来たのは、彩香の制服の右胸に付けられた「叶海」と書かれた名札から察したものだと勝手に解釈。
まぁ…適当に送っておこう。
『こんにちは、こんばんはかな?どっちでもいいけど昨晩はお疲れ様。よく俺の妹がわかったね』
こんなところか。
しばらくして返信が来る。
『叶海なんて珍しい苗字の名札ぶら下げてたらわかりますよ。あ、今夜は私と一緒に出勤しませんか?私こう見えて二輪の免許持ってるんですよ』
俺はこれまで出勤はバスで行っていた。
そう、低学歴資格無しの無い無い尽くしで車もバイクも運転出来ないからだ。
足にするようで申し訳ないが、バス代が浮くと考えるとアリサと一緒に通勤する事にはメリットしか感じない。
というか待て、金髪ブロンド美女から2人きりでの通勤のお誘いとかこれはフラグなんじゃないか?
なんて下劣な事を考えながらも対応は紳士に、を徹底して返信をした。
『いいよ、じゃあ時間になったら電話して。これ俺の電話番号ね。』




