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第八章 千春さん、再び夢を描く
冬の初め。
千春さんから美咲に連絡があった。
「海外の短歌交流会に参加することにしたの」
美咲は驚いた。
「本当ですか?」
「ええ。オンラインだけれど、海外の人たちと短歌について話すのよ」
千春さんは、昔から書きためていた短歌を選び直していた。
その中には、若い頃に海外への憧れを詠んだ歌もあった。
異国語の
響きを胸に
聞きながら
海の向こうへ
歌を送りたし
千春さんは言った。
「昔は、夢をかなえるには遠くへ行かなければいけないと思っていた。でも今は、ここにいても、言葉を通じて世界とつながれる」
美咲は微笑んだ。
「千春さんの歌も、きっと届きます」
交流会当日。
千春さんは画面の向こうの参加者に、自分の短歌を朗読した。
少し緊張していたけれど、声はとても穏やかだった。
参加者から拍手が送られた。
一人の若い参加者が言った。
「あなたの歌には、長い時間を生きてきた人の優しさを感じます」
千春さんは目を細めた。
「ありがとう。私も、あなたの言葉から新しい景色を見せてもらいました」
美咲は画面の前で、そっと拍手をした。
夢は年齢で終わらない。
引き出しにしまった夢も、誰かとの出会いで再び動き出す。




