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令和女流歌人・花村美咲の和歌日記365日 ~三十歳、独身、会社員。笑って、怒って、恋をして。今日も五・七・五・七・七~  作者: さざ波和音


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第七章 海の向こうの読者

 秋のある日。


 海外の日本文化交流イベントで、美咲の短歌が紹介された。


 会場では、日本語の原文と英語訳が並べて展示された。


 紹介された歌は、あの月曜日の歌だった。


 月曜日

 会社の時計

 見つめつつ

 心の中は

 日曜のまま


 英語訳には、音数ではなく、休みの日の心がまだ残っているという情景が表現されていた。


 イベントの担当者から写真が届いた。


 そこには、展示の前で立ち止まり、歌を読んでいる人々の姿が写っていた。


 そして数日後。


 美咲のもとに、一通のメールが届いた。


 差出人は、海外の大学で日本語を学んでいる女性だった。


 彼女は、翻訳された短歌を読んで、こんな感想を送ってくれた。


「私も月曜日が苦手です。仕事に行く朝、心だけはまだ日曜日にいたいと思います。日本語の短歌を読んで、遠い国の誰かと同じ気持ちを持っていると知りました。あなたの歌を読めてうれしかったです」


 美咲は何度もその文章を読み返した。


 遠い国の、会ったこともない人。


 けれど、同じ月曜日を思い、同じように小さなため息をついている。


 美咲は返信を書いた。


「読んでくださってありがとうございます。私も月曜日が苦手です。あなたの毎日にも、花が咲く時間がありますように」


 その夜、悠人にメールを見せた。


 悠人は嬉しそうに言った。


「すごいな。美咲の歌が誰かの心に届いたんだね」


「うん。なんだか不思議」


「じゃあ、僕の歌も送ってみようかな」


「どの歌?」


 悠人は自信満々にノートを開いた。


 妻の機嫌

 天気予報より

 難しく

 晴れの日続く

 祈る毎日


 美咲は無言でノートを閉じた。


「世界に出す前に、家庭内審査があります」


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