第六章 真理の編集会議
秋が近づいた頃、真理から連絡があった。
「美咲、ちょっと相談があるんだけど」
真理は転職後、企画や編集に関わる仕事をしていた。
美咲たちの夫婦短歌集の話を聞き、編集面で協力してくれることになったのだ。
週末、四人でオンライン会議を開いた。
美咲、悠人、真理、そして彩香。
田中さんもSNS運営の相談役として参加した。
「まず、短歌集の方向性を決めましょう」
真理は画面に企画案を映した。
タイトル案は三つ。
- 『ふたりで五七五七七』
- 『月曜日にも花は咲く』
- 『海を越える、日々のうた』
悠人は即答した。
「三番!」
美咲も頷いた。
「私も三番が好き」
真理は笑った。
「じゃあ、これで進めましょう」
田中さんが続けた。
「海外の人にも読んでもらうなら、日本語の原文と翻訳を並べるのがいいと思います。音数の説明も添えて」
彩香は言った。
「地方の暮らしの写真も入れたいな。山や川の景色を見てもらいたい」
真理がメモを取る。
「千春さんにも参加してもらいましょう。若い頃からの作品も、ぜひ載せたいですね」
美咲は胸がいっぱいになった。
これは、もう自分一人の夢ではなかった。
それぞれの人生が、それぞれの場所から集まって、一冊の本になろうとしている。
悠人が最後に言った。
「ところで、印刷費はどうする?」
一瞬、会議が静かになった。
真理が笑った。
「そこが一番大事な現実です」
美咲は大きくうなずいた。
「夢も大切だけど、家計も大切!」
悠人は小さく手を挙げた。
「僕の小遣いから少し出します」
「本当?」
「うん。ただし、来月の飲み会は減らす」
美咲は笑った。
「その決意、短歌にしておきます」
夢を追う
仲間が増えて
本ができる
予算の欄に
現実が立つ




