第四章 会社にも小さな国際交流
美咲の会社でも、新しい動きがあった。
海外の取引先との共同プロジェクトが始まり、若手社員を中心に多国籍のメンバーが参加することになった。
美咲はチームリーダーとして、会議の進行や意見の調整を担当する。
しかし、会議では文化や仕事の進め方の違いから、意見がぶつかることもあった。
「すぐに結論を出したい」
「もう少し検討したい」
「まずは全員の意見を聞くべきだ」
それぞれに考えがある。
ある日、若手社員の田中さんが会議後に言った。
「花村さん、海外の人と仕事をするのって難しいですね」
美咲は答えた。
「違うことがあるのは当然だよ。大事なのは、違いをなくすことじゃなくて、違いを知ろうとすることかな」
田中さんは少し考えてから笑った。
「花村さんらしいですね」
「そう?」
「はい。なんだか短歌みたいです」
美咲はぎくりとした。
田中さんは、すでに美咲が「花うた」であることを知っている。
「また短歌を書いているんですか?」
「もちろん。心の中では毎日ね」
その日の夜、美咲は仕事のノートに一首を書いた。
違う道
歩いてきた人
集まれば
知らない景色が
見えてくるなり
その歌を田中さんに見せると、彼女は目を輝かせた。
「これ、社内報に載せませんか?」
「えっ?」
「海外プロジェクトの紹介記事に、短歌を添えるんです。言葉の交流にもなると思います」
美咲は少し考えた。
仕事と創作は、別々の世界だと思っていた。
けれど、どちらも人と人をつなぐものなのかもしれない。




