終章 三十五歳、人生文化祭は続いていく
大晦日。
美咲と悠人は、こたつに入って今年一年を振り返っていた。
美咲は短歌イベントに参加した。
人前で朗読した。
千春という師のような友人に出会った。
読者から手紙をもらった。
図書館で作品を展示した。
そして、悠人も短歌を始めた。
「今年は楽しかったね」
美咲が言うと、悠人はうなずいた。
「僕も。まさか自分が短歌を書くとは思わなかった」
「来年は、夫婦で歌集を作る?」
「それはいいね」
「題名は?」
悠人は笑った。
「『夫婦げんかも五七五』」
美咲は吹き出した。
「それ、売れるかもしれない!」
二人は笑い合った。
美咲は日記を開き、最後の一首を書いた。
三十五歳、最後の歌
言葉から
始まる縁が
花となり
人生文化祭
明日も続く
窓の外では、冬の夜空に星が輝いていた。
美咲は思った。
人生は、誰かと競う競技ではない。
好きなことを見つけて、仲間と出会い、失敗しながらも続けていく。
その過程そのものが、人生の文化祭なのだ。
そして、来年もまた新しい出会いが待っている。
第六巻・完
巻末付録 夫婦歌人・花うた&悠人の合作短歌
お題:月曜日
美咲:
月曜日
会社の時計
見つめつつ
心の中は
日曜のまま
悠人:
月曜日
妻の目覚まし
鳴り響き
僕の布団は
まだ夢の国
お題:夫婦
美咲:
ありがとう
その一言が
うれしくて
今日も一緒に
ご飯を食べる
悠人:
皿洗い
僕がやるよと
言った夜
妻の笑顔が
何よりこわい
お題:幸せ
二人の合作:
幸せは
特別じゃなく
日々の中
笑って食べて
また明日へ行く




