第二章 人前で読むということ
四月 舞台の上の花うた
美咲の朗読の順番が来た。
舞台に上がると、客席が思ったより広く感じられた。
手には、短歌を書いたカード。
心臓がどきどきする。
美咲は深呼吸した。
そして、ゆっくり読み始めた。
月曜日
目覚まし時計
鳴り響く
夢の続きは
金曜に見る
読み終わると、会場から笑い声と拍手が起きた。
美咲は少し驚いた。
「伝わった……」
その瞬間、緊張が喜びに変わった。
舞台の歌
震える手
声に託した
五七五
誰かの笑顔
それがご褒美
五月 千春さんの教え
イベントのあと、千春と美咲は喫茶店で話をした。
「花うたさんは、日常をよく見ていますね」
「ありがとうございます」
「でも、日常をそのまま説明するだけでなく、読んだ人が想像できる余白を残すと、もっと深くなるかもしれません」
千春は、短歌のノートを見せてくれた。
そこには、季節の移り変わりや、家族との思い出が詠まれていた。
美咲は感動した。
「同じ五七五七七でも、こんなに表現が違うんですね」
「そう。言葉は小さな器だけれど、心は大きく入るのよ」
言葉の歌
短い歌
その奥にある
長い日々
言葉の余白に
心が宿る
六月 初めての講評
美咲は、短歌の勉強会に参加することにした。
そこで、作品の講評を受けた。
ある歌について、参加者から意見が出た。
「最後の言葉が少し説明的かもしれません」
「ここに季節の景色を入れると、印象が変わりそうです」
最初は少し落ち込んだ。
しかし、千春が言った。
「作品を否定されたのではなく、作品の可能性を教えてもらったのよ」
美咲は、もう一度ノートを開いた。
推敲の歌
直されて
初めて気づく
言葉の芽
悔しさの先に
新しい花




