第五章 初めての同人誌づくり
十二月初旬 花うた、決意する
美咲は、これまで投稿した短歌を読み返した。
気に入った作品を選び、テーマごとに整理した。
通勤の歌。
会社の歌。
夫婦の歌。
買い物の歌。
季節の歌。
小さな夢の歌。
「これ、一冊にまとめてみたいな」
悠人が言った。
「同人誌を作ってみたら?」
美咲は驚いた。
「私の歌を本にするの?」
「読んでくれる人がいるなら、形にしてみてもいいと思う」
美咲は、初めての歌集づくりを決意した。
題名は、
『月曜日にも花は咲く』
会社員として働きながら、日々の小さな喜怒哀楽を詠んだ短歌集だ。
十二月中旬 編集作業は終わらない
作品を選ぶ作業は、思ったより大変だった。
同じような内容の歌が多い。
言葉を直したい歌もある。
残したいけれど、全体の流れに合わない歌もある。
美咲は机に向かい続けた。
「うーん。こっちの表現の方がいいかな」
悠人がのぞき込む。
「どっちもいいと思うよ」
「そういう答えが一番困るの!」
推敲の歌
一文字を
直して戻し
また直す
短歌の沼は
底が見えない
表紙のデザインも考えた。
花の絵を入れ、淡い色にして、手に取りやすい雰囲気にした。
十二月二十日 印刷所へ
ついに原稿が完成した。
美咲は印刷所へデータを送った。
送信ボタンを押したあと、しばらく画面を見つめていた。
「送っちゃった……」
悠人が言った。
「おめでとう!」
「まだ本になってないよ」
「でも、ここまで来たじゃないか」
美咲は笑った。
原稿完成の歌
書き終えた
ページの向こう
待つ未来
小さな一冊
夢を詰め込む
十二月二十七日 思いがけない手紙
郵便受けに、一通の封筒が届いていた。
差出人は、短歌投稿サイトの編集スタッフ。
中には、手書きの手紙が入っていた。
「花うた様。
いつも温かな作品をありがとうございます。
あなたの歌には、日常の中にある小さな可笑しさと、誰かを思いやる優しさがあります。
実は、来年開催する短歌イベントで、一般参加者の作品を紹介する企画を予定しています。
もしよろしければ、作品をお寄せいただけないでしょうか。
あなたの歌が、また新しい読者に届くことを楽しみにしています。」
美咲は手紙を読み終え、胸が高鳴った。
「悠人!」
「どうしたの?」
「来年、短歌イベントに参加できるかもしれない!」
悠人は笑顔になった。
「すごいね。もう立派な歌人じゃないか」
「まだまだだよ。でも、挑戦してみたい」
手紙の歌
紙の上
誰かの言葉
届く夜
新しい夢が
窓辺に灯る




