第20話 にゃ〜〜ん
/宝城シレネ、鷹城葵視点/
ーーー時は少し戻り放課後夕暮れ時ーーー
「「………」」
泰祐、百桃とは違いとても静かな帰り道。
{…何か話題…話題ないかなぁ}
{…話すことが、ありません…}
別に話題がないわけではない。話せることはたくさんある。しかしそれを言い始めることが難しい。特に意味があるものでもないからだ。
{…話しずらい…まあ、いいか。一緒にいられるだけいい}
{…今のこの時間を、大切にしましょう}
2人揃ってこの静かで甘酸っぱい時間を噛み締めることにしたようだ。そこへ
「にゃ〜〜ん」
一匹の黒猫が通りかかった。
「あら、こんなところに。珍しいですね」
「だね。首輪もないし…珍しいね」
今時都会の野良猫というのは珍しく、滅多に見ないものである。
「あ」
「行っちゃったね」
「もう少し見ていたかったです」
野良の猫は警戒心が強く、人前には滅多に出てこない。とても幸運なことだ。
「また会えるといいね」
「ですね」
2人で猫がいなくなった細い路地を眺める。
「そういえば鷹城くんは猫飼っていましたよね。元気にしていますか?」
猫繋がりで葵が猫を飼っていることをおもいだしたシレネ。
「元気してるよ。まあたまのイタズラはやめてほしいけどね」
ゴミ漁ったり紙噛みちぎったり、と言うと
「あの子がイタズラしているんですか?とても想像できませんね」
葵の飼っている猫の写真を見たことのあるシレネは、驚いたようにそう言う。
「とても人見知りだからね。未だに宅配のピンポンでビビって隠れちゃうから」
「それは…可愛くていいじゃないですか」
そんな可愛らしい場面を想像してくすりと微笑むシレネ。
「…まあ、今度見に来る?うちに」
何の気なしに聞いてみると
「え?…いや…いいですよ。大丈夫です。お心遣い感謝します」
とても律儀に断りを入れられた。
「なんでそんな他人行儀になるかなぁ」
葵は特に考えずにそんなことを言ったが、時間が経ってそのことに気づく。しかし
{あ、まあ、いいか。うん}
しかしシレネはそんなこともなく
{え⁉︎お誘い⁉︎家に⁉︎嘘⁉︎…でもそんなこと考えずに純粋に誘ってそうだなぁ、お母さん主婦ですし…}
葵のお母さんは主婦のため、そんなことは考えてなさそうだなぁ、と思ったシレネだった。
{断らなかった方が、よかったかもしれませんね…親にも…}
何やら別のことも考えていそうなシレネであった。
葵は知識としては豊富だけど経験がないから先に天然が発動して後から何やったか理解するタイプ。シレネは知識はあって経験はないものの天然が発動しないから何やったか最初から理解するタイプ。しかし2人ともいろいろと隠すのが上手いので、お互いに照れていても片方が照れていても何かあってもそうそう気づかない。




