悪い奴、悪だくむ
この者は苛立っていた。
「まだ見つからないのか!」
マリイ王女が城を出て、すでに2か月が経つ。
「調べたところ、これまでに両替商に持ち込まれたサンリク金貨は全部で33枚。
宝石商が5枚、豪商が20枚、不動産屋が8枚だ。
身元を確認させたが、怪しい者はいない。
まあ、あのお姫様に両替する知恵があるとは思えんがな」
「王女の身柄にはサンリク金貨1枚、情報にすらサンリク銀貨1枚の報奨金が掛けてある。
これだけ何の知らせもないのは、おかしいではないか!」
「何の知らせもないわけではない。
報奨金が高すぎて、情報が多すぎるのだ。
真偽を確かめるのに、時間がかかっている」
八つ当たりを受け止めているのは、サンリクの大臣。
焦る様子を見せない彼に、この者は一層苛立ちを募らせた。
「手配書はちゃんと行き渡っているのか?」
「国境付近、市街地と、場所を変えて毎日バラまいている」
「だったら、とっくに見つかっているはずであろう!
言い訳をするな!
全ての関所を封鎖してでも見つけるのだ!
もはや、生死は問わぬ!」
とうとうこの者は言い切った。
「――いいのか?」
「ああ、いや――、……そうだな」
この者は、我を失っている自分に気づいた。
しばし考えて、言葉を変える。
「むしろ、死体の方が都合が良い。
サンリク市民に殺害されておれば、なお良い」
「……」
大臣は気づかれぬように軽くため息をつき、
「手配書を、『生死を問わず』に改めさせよう」
と言い、部屋を出て行った。
日暮れ時、サンリク城の西側にあるこの部屋は夕焼け色に染まり出す。
手元にある王女の手配書をじっと眺め、不気味に笑みを浮かべた。
「どこにいる、マリイ?
金貨が災いして、盗賊にでもさらわれたか?
ああ、マリイ……、早く出ておいで――」




