王子様の憂鬱
即位の前に、バルロックは王妃を迎える。
王が独り身では後継者争いの火種が消えないからだ。
候補に挙がったのは、貴族出身の大臣の娘。
リルカさんは怒るでしょうか……。
指輪の青さに耐えきれず、外してしまおうかと思った。
いや……。
私を見ていてください……。
大臣を後見人とすることは、自分の発言を優位にする。
未来の王妃との初顔合せの日、バルロックは4つ年下の彼女に聞いた。
「私には、すでに妻がいます。
あなたは王妃となるが、私の第一夫人ではない。
それでもよろしいですか?」
彼女は悲しげに戸惑った。
それでも、王妃となるべくして城に来た女である。
「私の夢は王妃となり、息子を王にすること。
それが叶うなら、愛情は望みません」
この娘と結婚し、即位した。
戴冠式は近隣諸国の王族を招いて盛大に催し、王都にてパレードもした。
どこかで、リルカさんも見ているのでしょう。
民衆に向けて指輪をはめた手を振り、泣きたくなった。
もっと泣きたかったのは、王妃の方だということは、見て見ぬふりをした。
バルロックは次々と妻を娶って力を付ける。
中でも、隣国であるサンリク王の姪を迎えたことは大きかった。
彼女のおかげで、国境の紛争が耐えなかったサンリクと平和同盟を結ぶことができた。
そして、次は北の大国セツゲンが、王女を娶らないかと打診してきたのである。
バルロックは喜んでこの姫を迎えた。
程なくして、セツゲン、サンリク、カイソクのあるシンリウ山脈の東側に、商人が自由に行き来できる一大商業圏ができあがる。
かねてより構想のあった『大陸コイン』の流通に成功したのだ。
国境を跨ぐ商人の両替の煩わしさが軽減され、経済活動は更に活発化した。
王妃が城にきて2年。
彼女は無事、王子を出産した。
バルロックはホッとした。
これで、王妃の2つ目の夢、『息子を王にすること』を叶えることが出来る。
王妃に愛情を抱くことのできないバルロックは、せめて、彼女の夢だけは叶えてあげようと心に決めていた。
その後、次々と王子や王女が生まれ、カイソク王家は繁栄する。
経済、教育、医療と、様々な改革を為したバルロックは、押しも押されぬ大王となっていた。




