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姫様、お逃げください!!  作者: 一本松
7 暗殺兄弟
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北の町、ウバクロ

 景色が平地から山道にと変わる。

 マリイたちは順調に旅を続けていた。


 どの町でも五、六泊しながら物を売って物を仕入れ、商売をした。


「通行証の効力は絶大だな。

 待たされることなく検問を通過できるのって、気分いい!」


「あたしは申し訳ない気持ちでいっぱいだわ。

 お役人さんを騙して手に入れたようなものだもの」


 役人の隊長は、マリイを王女と間違えたお詫びとして通行証をくれたわけだが、実際、マリイはマリイ王女なのだから、被害者ぶった詐欺師のようで心苦しい。


「おまえは、検問の面倒くささを知らないからそんなことが言えるんだ。

 ヤツら、積み荷を全部ひっくり返して捜し物をするんだぞ?

 しかも、散らかしっぱなしのまま出ていく。

 三十キロ走るごとに売り物を台無しにされる気持ち、味わってみたいか?」


「……。

 ちゃんと後片付けしてくれれば良いのにね」


「まあ、それをやられたらやられたで、時間がかかってもっと腹が立つんだけどな。

 とにかく、検問はすり抜けられるなら、それに越したことない。

 ……だいぶ昔の話だけど、田舎から朝取りのアスパラとか鶏の卵を安く仕入れて、町に売りに行こうとした時に検問があってな、」


「うん?」


 機嫌がいい時限定だが、グリーンは自分の話をしてくれるようになっていた。

 マリイはそれを聞くのが楽しい。


「幌の中で役人が滑って転んだもので、卵は割れるわ、衣料品は汚れるわ、大変だった。

 更にひどいのは、検問に4時間もかかったせいで、せっかくの野菜が傷んで売り物にならなくなったんだ。

 それでも役人は弁償してくれない。

 あれ以来、俺は青果に手を出していない」


「だから、グリーンが仕入れるのは金物や雑貨なのね。

 焼き菓子も置いてくれたらいいのに。

 結構いるのよ?

 『前のホダンにあったカップケーキが食べたい』ってお客さん」


「焼き菓子を仕入れたら、みんな、おまえに食べられてしまう」


「そんなには、食べないわよ」


「ちょっとは食うんだろ?」


「そりゃ……」


 馬車の旅は楽しい。

 マリイの定位置はすっかり馭者台の、グリーンの隣の席になった。

 日焼けは気になるが、もう、一人で幌の中にいようとは思わない。


「次の町が見えてきた。

 ウバクロだ。

 ここは治安があまり良くないから、泊まるだけな」


「お店はしないの?」


 残念がるマリイ。


「その代わり、宿は立派でサービスが良いぞ。

 思う存分、ハンカチ作りに勤しんでくれ」


「えー……」


 最近のマリイは、手芸よりも接客の方が楽しい。

 相変わらず計算は苦手だが、色んなお客さんから情報をもらい、店を閉めた後、評判の果物やらお菓子を買い歩くのだ。


「ウバクロでは、フラフラ出歩くなよ。

 おやつは宿で調達すること」


 グリーンにはバレている。


「つまんないの」


「なんだよ、最初の頃はルームサービスがいいって言ってたのに。

 贅沢になったなー」


「贅沢じゃないわよ。

 外で買った方が安いじゃない。

 ルームサービスで食べるお団子代で、アイスやプリンまで食べられるのよ?」


「宿の飯には、安全代が含まれてるんだ。

 今回は大人しくしててくれ」


「ウバクロは焼き菓子が安くて美味しいって聞いたから、いっぱい買い食いしようと思って、お小遣いを節約してたのに……」


「…………」


 グリーンは思う。


 このお姫様、変に貧乏くさくなってしまった。

 もう、お城には戻せないかもしれない……。


 馬車は、宿屋を目指して走る。 

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