第12話 白を灯さない
本灯の間は、白かった。
聖山の、いちばん高い堂。半年前、鈴が、灰の果てるのを見た場所。白壁。白い柱。中央に、誰も座っていない、白い座が、あった。その根元から、本灯の火柱が、立っている。八つの州灯と、八つの節を、束ねる、結び目の、結び目。けれど、その火は、細り、明滅していた。主を、欠いて。
半年前にここで見た火柱は、白く太く、夜空に届いていた。名を喰い続ける、奪う火だった。いまその火は、主を失って細り、いまにも消えそうに明滅している。八つの州を束ねてきた結び目の結び目が、誰の手にも握られないまま、ひとりでに崩かけけていた。堂のまわりの白壁には、半年前と同じ静けさが満ちていたが、その静けさはもう荘厳ではなかった。見捨てられた神殿の、底冷えのする静けさだった。
外で、大潮が、いちばん高く、なろうとしていた。
聖山の下で、潮の音が、唸っていた。八洲じゅうの沿岸が、いま毒の壁に、呑まれかけている。あと半刻。本灯が、落ちれば、八洲は、ぜんぶ沈む。
縹が、堂の入口で、膝を、ついた。
「ここが、いちばん、近い」縹は、傷痕の方角を——足元の、聖山の麓を、向いた。「八節の、糸が、ぜんぶ、ここに、集まってる。私の半分も。……合図は、ここから、流せる。八州ぜんぶに。いちどに」
縹の体は、もう半分、裂け目に、引かれていた。それでも、計器として、立つ役を、手放さなかった。
座の前に、男が、ひとり立っていた。
累だった。
◆
「ようこそ、ようこそ。本灯の間へ」累は、両手を、広げた。「お待ちしておりました。鈴どの。果樹園の、主として」
累の手に、母の頁が、あった。
「ちょうど、よい刻でしてね」累は、明滅する火柱を、見上げた。「大潮が、頂に、なる。本灯が、いちばん、弱る。いま、座れば、いちばん、楽に、繋がる。座が、あなたを、待っている。母御の、逃げた座が。……お座りなさい、鈴どの。座れば、皆、助かる。それが、唯一の道だ」
四方の節から、糸が、いっせいに鈴の右手へ、引かれた。
座れ。座れ。落ちかけた八つの節が、いちばん強い糸を、求めて。鈴を。座れば、止まる。座れば、八洲は、沈まない。座れば、四つめの州のような悲劇は、もう、起きない。座れば。鈴が、白く、なるだけで。
鈴は、白い座を見た。
灰が、果てた座。半年前、鈴に「私になりなさい」と言った人の、座。糸が、鈴の右手を、その座へ、引いている。座れば、楽だ。座れば、確実だ。座れば、誰も、死なない。今すぐ。
引きは、これまでで、いちばん強かった。八つの節が、八つの方角から、鈴ひとりの右手へ寄せてくる。四つめの州を沈めた潮が、まだ口のなかに苦かった。あのとき座っていれば、あの州は沈まなかった。いま座れば、残りの州は、ひとつも沈まない。座への引きは、鈴の優しさを正確に狙っていた。目の前で人が死ぬのを見ていられない、その弱さを。半年前、灰もこの引きに負けたのだろう。負けて座って、降りられなくなった。鈴の右手が、座のほうへ、ほんのわずか、傾いだ。傾いで——止まった。喉の奥に、紬の移した最後の音があった。流せ、と、その音が言っていた。溜めるな、と。
「——それ」鈴は、言った。「半年前にも、聞いた」
灰の声が、記憶の底から、重なった。私になりなさい。それが、唯一の救い。
「唯一じゃ、なかった」鈴は言った。「あんたたちが、唯一ってことに、しただけ。唄を、焼くやり方に、すり替えて。本当は、もう一つ、道が、あった。三百年、隠されてた、道が」
鈴は、座に、背を向けた。
座のほうでは、なく。人々のほうを。小夜のほうを。堂の外の、八洲の、網のほうを。
「座らない」鈴は言った。「——白を、灯さない」
◆
累の笑みが、わずかに、固まった。
「……唄、ですか」累は、明滅する火を、見た。「数えられないものを、まだ、信じておられる。間に合わない、かもしれませんよ。四つめの州が、沈んだように。網が、ひとつでも、欠けていれば」
「欠けてるかもしれない」鈴は言った。「それでも、賭ける。——縹」
縹が、傷痕の方角へ、両手を、つけた。
生きた計器が、合図を、流した。本灯から、八つの節へ。傷痕の糸を、通して。八洲ぜんぶの、呼び講の輪へ。いまだ、と。歌え、と。
小夜が、歌い出した。
護りの唄を。北の節の、上半分を。鈴が、その低い半分を、合わせた。母から継いだ血の、いちばん深い音で。姉妹の喉が、南と北を、ひとつに、繋いだ。母が、ひとりで、できなかったことを。三百年、誰も、完うできなかった唄を。
ねむれ、ねむれ、火の子。
おまえの名は、おまえの胸に。
夜が来ても、消えぬように。
夜明けが、唇に、見つけるように。
——灯は、名を呼ぶ者のもとへ、帰る。
子守唄の、五行。母が、咳の合間に、歌おうとして、歌えなかった、五行。それに、北の節が、初めて繋がった。
おまえの名を、となりが、抱く。
となりの名を、おまえが、抱く。
ひとつの火では、夜は、越えられぬ。
万の火が、手を、つなぐとき、
——帳は、誰の、肩にも、かからない。
護りの唄が、三百年ぶりに、完うした。
十行が、ひとつに繋がった。南の五行と、北の五行。母が南から運び、運びきれずに死んだ半分と、紬が北で守り、命と引き換えに渡した半分とが、姉妹の喉で、初めて落ち合った。母の咳に途切れた唄が、いま、途切れずに最後まで鳴った。鈴は、自分の声の底に、もうひとつの声が重なるのを聞いた。輪郭のない、母の声だった。腹の子のために出すのをやめた、いちばん低い音を、十六年後、娘が代わりに出している。その音の上に、小夜の高い半分が乗っている。母が一人でできなかったことを、二人の娘が、やりとげていた。堂の白い柱が、その唄を、低く反響させた。
◆
唄は、堂の外へ流れた。
縹の合図が、八州に、届いていた。灰郷の砦で、ばあさまが、南の声で、歌い出した。梶が、覚えの講の節で、逝った者の名を、添えた。汐音が、蕗が、凪が、汀が、それぞれの州で、それぞれの呼び講の輪で、歌い出した。鈴には、その声のひとつひとつが、傷痕の糸を伝って、聞こえる気がした。灰郷の砦で唄うばあさまの、しわがれた南の声。北の凍えた村で、凪と汀が覚えたての節を合わせる声。蕗が子どもらと棒きれの字を放り出して歌う、舌足らずの声。沿岸の漁師が、塩屋の女房が、炭焼きが、めいめいの仕事の手を止めて、低く声を重ねていく。誰も先導していなかった。誰も号令を出していなかった。それでも八洲は、ひとつの息で歌っていた。三百年、隠れて、間引かれて、それでも絶えなかった唄が、いま初めて、隠れずに、八洲ぜんぶの空の下で鳴っていた。
八洲じゅうの、名を呼び合う口が、いっせいにひとつの唄を歌った。
鈴は、右手を、本灯へ向けた。
引かれてきた、八つの節の糸を、座へ繋ぐのでは、なく。手放す方向へ、解いた。そのまま、最後の言霊を、本灯へ、注いだ。結界の、保ち方そのものを、名づけ直すために。一人の要石が握るものから、皆が歌うものへ。
「——お前の名は、皆の胸に」
子守唄の一行を、鈴は、世界そのものへ、向けて、言った。おまえの名は、おまえの胸に。その「おまえ」を、結界に。世界に。八洲に。お前の名は、もう、一人の白き読み手の胸ではなく、皆の胸に。
本灯の火柱が、形を、変えた。
喰う火でも、一人が握る火でも、なく。多色の糸が、一枚の唄に、織られていく。藍が、朱が、萌黄が、銀が、緋が。八洲じゅうの、めいめいの色が、唄に、編まれて、ひとつの火に、満ちた。白では、なかった。色という色が戻ってきた、火だった。
八州の、要石たちの座が、いっせいに軽く、なった。
糸が、ゆるむ。落ちる。けれど、落ちきらない。八州の網が、いちどに受けた。一州ぶんの荷が、鈴に寄る暇も、なく、八州の皆に分かれた。要石たちが、座から、降りた。八人、いちどに。三百年で、初めて。琥珀が、その新しく解かれた者たちの手を取った。座を降りたばかりで、立ち方を忘れた者たちに、立ち方を、教えるように。最初に解かれた要石が、最後に解かれた要石を、支えていた。
三百年、座は一度にひとりしか降りなかった。降りるとは、削られ尽くして灰になることだった。いま、八人が、いちどに、生きたまま降りた。座を立った者たちは、足がもつれ、互いの肩にすがった。何十年も座りっぱなしだった体は、立ち方を忘れている。琥珀が、その手から手へ渡り歩いた。座を降りた先達として、立ち方を教えるように。誰かが床に膝をつきかけ、別の誰かがそれを支えた。支えられた者が、次の者を支えた。荷を分け合うのと、同じだった。重みも、よろめきも、皆で少しずつ受ければ、誰も潰れない。それが、唄の世界の、立ち方だった。
累が、帳面を開いた。
唄を、数えようとして。誰が、歌い出したか。どの節を、誰が継いだか。八洲の、いちどの唱和を。筆が、走りかけて——止まった。
「数えられない……」累が、呟いた。「歌が、数えられない……!」
始まりも、終わりも、なかった。八洲が、同時に、歌っていた。誰が先か、書けない。見返りを、求めぬ唄を、書く欄が、なかった。三百年の書院の、いちばん新しい末裔が、いちばん古い唄を、前に、一文字も、書けずに、立っていた。
◆
鈴の右手の糸が、一本ずつ、唄に、解けていった。
座へ移るのでは、なく。唄に、編まれて。八州の皆の声に、分かれて。要石化の印だった、銀の糸が、ひとすじまたひとすじ、消えていく。鈴の言霊が、結界の名づけ直しに、注ぎ込まれて。空に、なっていく。
最後の糸が、解けたとき。
鈴の右手が開いた。
空の、手だった。十六年、罠を握り、一年、糸を握り、半年、名を握ってきた手が、何も、握っていなかった。鈴は、自分の内側が、静かになるのを感じた。言霊の、消えた静けさ。名づける力の、抜けた、軽さ。
ただの鈴の、静けさ。
こめかみの白は——二すじのまま、止まっていた。増えなかった。灰に、なりきらなかった。網が、荷を、分けたから。鈴ひとりに、世界の重みが、かからなかったから。白は、残った。けれど、進まなかった。
座っても白くなり、座らなくても白くなる。鈴は、そのどちらの道も、半年かけて知った。座れば、灰のように、削られて消える。座らずに一州ずつ保てば、無理がそのまま身に返って、やはり白くなる。逃げ道は、どちらにもなかった。けれど、いま、白は二すじで止まった。八州の網が荷を分けたから。鈴ひとりの肩に世界が乗らなかったから。座らないことが鈴を削るのではなく、皆で歌うことが、鈴を削らずにすませた。白が進まないということ。それが、座らないという道に、初めて差した光だった。鈴は、こめかみに残った白を、もう恐れなかった。それは、灰になりかけた印ではなく、灰にならずにすんだ印だった。
その同じ瞬間、縹が、立ち上がった。
傷痕が、唄に、塞がれていった。もともとの、塞ぎ方で。一年、裂け目の中に、置き去りだった、縹の半分が、こちら側へ戻ってきた。崩れていた体が、まっすぐ立った。生きた計器が、初めて丸ごと、こちら側に、いた。
鈴は、空になり。縹は、丸ごとになった。
縹が、見えない目を、まっすぐ鈴のほうへ向けた。
鈴が、もう白き読み手でも、名灯し様でもなく、ただの鈴になったことを。読まない目だけが、正しく、見た。
「……からっぽだ」鈴は、空になった手を、見て、ひとりごとのように、言った。
「いや」縹が、言った。裂け目から戻った体で、まっすぐ、立って。「——お前に、なった。やっと、ぜんぶ」
◆
潮が、引いていった。
聖山の下で、唸っていた、毒の壁が、低く、なっていく。八洲の沿岸が、沈まずに、残った。本灯の火柱は、細いまま、けれど、消えずに、灯っていた。皆の声が、保っていたから。一人の要石でなく。皆で歌う、一枚の唄で。
静かだった。
堂の中に、解かれた要石たちが、立っていた。琥珀に、手を取られて。八洲じゅうの唄が、まだ、低く、続いていた。誰も、座っていない、白い座が、ただ白いまま、空に、なっていた。永遠に。
半年前、この座には灰がいた。世界を喰う火の主が、白く削られて、果てた。いま、座は空だった。次の主を待つ空席ではない。二度と主を持たない空席だった。鈴は、その白い座を、長いこと見ていた。母が逃げた座。灰が縛られた座。鈴を月ごとに引いてきた座。そのどれもが、もう、誰のことも引かなかった。糸の切れた座は、ただの白い石の椅子に戻っていた。世界を保つのに、もう、そこに座る者は要らない。八洲じゅうの低い唄が、座の代わりに、世界を抱えていた。
ひとりの、老いた女が、堂の隅に、いた。
半年前、岬の蔵で、鈴に、跪いた、あの老婆だった。解放された者のひとりとして、ここまで、ついてきていた。その女が、鈴の前に、進み出た。跪こうと、して——膝を、折りかけて。
止まった。
跪く理由が、もうない、ことに、気づいて。白き読み手は、もういなかった。座に、誰も、いなかった。鈴は、ただ空の手で、立っていた。神様では、なくなっていた。跪く、相手が、どこにも、いなかった。
老婆は、跪く代わりに、鈴の名を、呼んだ。
「——鈴」
白き読み手さま、では、なく。ただの、名前だった。
「うん」鈴は、答えた。
名のりを、受ける側に、初めて鈴自身が立った。半年前、炉の前で、小夜にした「うん」を、今度は、鈴が、受ける側で。
◆
累は、座の影で、ひとり帳面を、抱えていた。
開いたまま、白い帳面を。八洲の唄を、数えようとして。一、二、三——数えきれず、また、一から。一、二、三。歌う者が、聴く者に、なり、聴く者が、歌う者に、なる。区切れない。始まらない。終わらない。最後の数え手が、数えられない世界に、取り残されていた。
母の頁が、累の手から、落ちた。
累は、それを、拾わなかった。拾う指が、まだ、唄を、数えようと、していた。一、二、三。母の頁が、堂の床に、落ちた。鈴は、それを、拾わなかった。母は、もう、頁の中には、いなかった。母の唄は、完うした。母は、八洲の、唄の中に、いた。紙の、母は、もう、要らなかった。
鈴は、累に、近づいた。
「あんたが」鈴は言った。「数えられないものは、無いんじゃ、ない。——数えなくても、いいものなんだ」
累は、答えなかった。一、二、三。数え続けていた。果樹園の主は、落ちる果実を、待っていた。けれど、果実は、座に、落ちなかった。唄に、解けた。数え手の手の中には、空の帳面と、数えられない唄だけが、残った。
鈴は、それ以上、累に、何も、言わなかった。言うことが、なかった。数える者には、唄は、届かない。届かないものを、無理に、届けることも、また数える者の、やり方だった。鈴は、累を、累のままに、置いた。数えられない世界の、最後の数え手として。
堂の入口で、燼が、聞こえた。
殿の道を、塞ぎきって、登ってきたのだ。背に、矢を受けたまま。それでも、立って。堂の中の、唄の満ちる様を、見て、薄く、笑った。生きて。
縹が、鈴の隣に、立っていた。最初から、跪いていなかった。読まない目で、ずっと鈴を見ていた。これからも、跪かないだろう。いまようやく、世界が、縹の見方に、追いついた。誰も、跪かない世界に。
白き読み手という名は、宿る体を、永遠に、失った。
役目の名だけが、生き残って、次の体を探す——その三百年の連鎖が、ここで、断たれた。座が、空のままになった。座る者が、いなくなった。読む者も。判じる者も。喰う者も。皆が、歌う、一枚の唄になった。
三百年、白き読み手という名は、宿る体を乗り換えながら生き延びてきた。灰が果てれば、次の移ろい火が座へ引かれ、新しい白き読み手になる。役目の名だけが不滅で、宿る体は使い捨てだった。鈴も、その連鎖の、次の体になるはずだった。母の血を継ぎ、座へ引かれ、白く削られて。けれど鈴は、座らずに、自分の言霊を皆に返した。返した先に、白き読み手の座る場所が、もうなかった。役目の名が、宿る体を探しても、引く糸が一本も残っていない。連鎖は、糸ごと、唄に解けた。名は、宿る先を永遠に失って、世界から消えた。
◆
鈴は、堂を、出た。
聖山の頂から、八洲が、見えた。潮の引いた、八つの州。それぞれの州灯が、めいめいの色で、低く、歌っていた。要石の、いない灯。三百年で、初めての、八洲。
夜明けが、来ていた。
大潮の、いちばん高くなる日の、夜明けが。潮は、引いた。世界は、保たれた。一人の犠牲では、なく。皆で。
鈴は、空になった右手を、夜明けの空に、かざした。
糸は、もうなかった。座へ引かれる糸も。要石化の糸も。何も、握っていない、ただの手だった。言霊の、消えた手。名づけられない手。
ただの、鈴の、手だった。
「……あたしは」鈴は、誰にともなく、確かめるように、言った。「ただ、家に、帰りたいだけ」
今度は、続きが、出た。
続きは、ない、ことが、続きだった。どこかへ、帰りたい、ではなく。帰る家が、ある。妹が、いて、読まない目の人が、いて、火を配る幼なじみが、いて、座を降りた少女が、いる。芋の汁の、湯気の立つ家が。
ただ帰る。
夜明けの光が、跪く者のいない堂と、空席の白い座と、解かれた要石たちと、鈴の空の手とを、分け隔てなく、照らした。徴発の朝でも、選別の朝でも、犠牲の朝でも、なかった。ただの、朝だった。
聖山の麓では、潮の引いた泥の上に、流民たちが立ち尽くしていた。何が起きたのか、まだ誰も分からなかった。ただ足元の地面が、昨夜まで足元から抜けていく感じだったのが、今朝は、しっかりと、踏みしめられた。それだけのことが、言葉にならない安堵となって、彼らの膝を、地に折らせかけた。けれど折る相手が、もういなかった。拝む神も、ひれ伏す座も、捧げる薪も。代わりに、隣の者の名を呼ぶ声だけが、泥の上を、低く、渡っていった。
世界の名前の、在り方が、その朝、ひとつ変わった。
誰も、まだ、その朝に、名前を、つけられずにいた。名づける神は、もういなかった。名づけられないものから、新しい時代は、いつも、始まる。




