第56話 基本に帰れ! 作中カードゲーム解説(中編)
千影は三種類のカードを机の上に並べた。
「メインデッキに入るカードは、主に三種類。
スピリット、
スペル、
コンストラクト。
とはいっても、実際には他にも……うぐっ」
頭を抑える千影。
ううう、とこめかみの辺りを指でトントンしている。
花流光は形の良い眉を曇らせて、
心配そうな様子で千影を覗き込んだ。
「千影さん、大丈夫?」
「う、うん。スピキャスのメインカードって、基本はこの三種類なんだけど……実際にはインフレによるインフレ、増築による増築を重ねたグラグラの違法建築状態……いわゆる、決戦!九龍城砦になってるの」
「そうなのね……(九龍城砦って何かしら)」
「だから、厳密に言うならカードタイプは十二種類くらいはあんだけど……」
「あるんだけど、ね」
「あ、あるんだけど。普通にスピキャスやる分には、スピリットとスペルとコンストラクトの三種類だけ覚えておけばいいから……うん。ふぅ、はぁーっ、我慢できた。例外処理の早口語り、私、自重できたよ……! 花流光さん、褒めてっ!」
「よしよし。千影さん、よく頑張ったわね」
「ふゆぅ……花流光さん、もっと……」
猫のように丸くなる、千影。
花流光はたおやかな手つきで、
愛でるようにして千影の頭を撫でる。
☆☆☆
聖ハイリース学園の中庭にて――
銀色の髪を伸ばした千影と、
対照的な黒い長髪をした花流光。
麗しき、二輪の花。
学年トップの首席二人組、
生徒たちの憧れの代行天使の交わりを鑑賞して。
淑女たちは、こっそりと沸き上がった。
「あれ……キテますわね」
「キテますわよ」
「やっぱり花流光さん×千影さんですわ」
「千影さま×花流光さまでなくて?」
「はるひ×ちかげだよッ!」
「言い方だけじゃん」
「なんで花流光×影、推したのッッッ!?」
「要チェックですわ……ッ!」
さて。
当人たちはあずかり知らぬ、
モブ令嬢どもの妄想はさておき――
☆☆☆
スピリット(精霊)は場に召喚されることで、相手プレイヤーを攻撃したり、逆に相手のスピリットの攻撃をガードしたりすることが出来るカード。
スピリットキャスターズ(精霊を唱える者たち)の名を冠するカードゲームであることからわかるとおり、このゲームの主役とも言える存在である。
スペル(呪文)は文字通り、呪文をモチーフにしたカード。
キャストすることで強力な効果を発揮できるが、スピリットとは異なり使い捨てのカードとなっている――そのため、使用されるとすぐに墓地に送られる。
コンストラクト(構築物)は、スペルとは異なり、唱えるとスピリットのように場に残り続けて効果を発揮するカードである。ただし、スピリットではないので、基本的にはバトルに参加できない。
「ふへへ……花流光さん、あったかい……あ、あとね。スペルカードは自分のターンのメイン・シークエンスにしか使えないんだけど……インタラプト・スペルという特殊なスペルカードは、いつでもインタラプトとして唱えることができるの」
「インタラプト――介入、かしら。
名は体を示す、理に適った命名規則ね」
「そうそうっ! あ、メイン・シークエンスっていうのはターン内で実行される行程のことで……スピキャスのターンは、以下の行程に分かれて進行するんだよ⇩」
【ドロー・シークエンス】
(メインデッキからカードをドローする)
⇩
【リロール・シークエンス】
(ロール済のオブジェクトとエナジーをリロールする)
⇩
【チャージ・シークエンス】
(エナジーデッキからエナジーチャージする)
⇩
【第一メイン・シークエンス】
(コストを支払ってカードを使用できる)
⇩
【バトル・シークエンス】
(スピリットでバトルをおこなう)
⇩
【第二メイン・シークエンス】
(コストを支払ってカードを使用できる)
⇩
【エンド・シークエンス】
(ターンを終了する)
ターンの進行一覧を確認し――
花流光は手を挙げて、疑問を呈した。
「千影さん、一つ聞いていいかしら。コストを支払う、というのは……具体的にはどうすればいいの? カードの左上に数字が書いてあるから、きっと、これがコストなのだと思うのだけど」
「うん……その質問に応えるには、まずは今のカードの見方を理解する必要があるよね……少し、長くなるよ……!」
次回は、カードのテキストを解説!




