表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/65

第48話 パン屋初襲撃

 翌日――三連休、最終日。


 カードの精霊・アナエルがやって来てから始まった奇妙な日常も、いよいよクライマックスを迎えようとしていた。


 都内某所、ハングリー・ベーカリーにて。


 ゴシック調の黒いドレスを着た少女は、

 車椅子の向きを変えると、

 パンを掴むためのトングを神経質に鳴らした。


「わたくしも特命顧客相談室・室長として、クレーマーの処理には慣れてきたつもりでしたけれども――まさか、電話やメール越しではなく、プライベートにまで凸してくる迷惑客がいるとは思っていませんでしたわ。いいえ、これほどの蛮行に打って出ると言うのでしたら、もはやお客さまではありませんわね……主良しゅらさま。どこで、このお店を知ったんですの?」


「車椅子に乗った、お人形さんみたいに綺麗な金髪の女の子――というだけで、君は他よりも目立つんだよ。パンが好きなのは話していたし、それだけ情報があれば手がかりとしては充分だ。こっちには……名探偵がいるんでね」


 ――ランチタイムに間に合ったのは、名探偵の手腕のおかげだ。


 主良の隣で、探偵姿の鹿しかが一礼した。


「ご依頼なくとも、おせっかい。

 名探偵、春井夏 鹿の子――

 ボクがいるかぎり、世に悪の種は栄えません」


「……嫌な匂いがする女ですわね。

 まるで製菓用のバニラエッセンスのように、

 わざとらしい甘ったるい匂い……

 イース、どう?」


 車椅子の少女――楠江くすのえの背後には、長い白髪で片目を隠した、長身の女性が立っていた。

 クラシカルなデザインのロングスカートとエプロンドレスを模した、中世ヨーロッパのメイドを思わせる服装をしている女性――だが、2メートル超の長身から判断するに、おそらくは人間ではなく、楠江の精霊であるイースなのだと主良は判断した。


 前回は主良たちを奇襲するためにDステルスで姿を隠していたが、非戦闘時の日常では、こうやって楠江の身の回りの世話をしているのかもしれない。


 メイド服姿のイースは、主の問いに短く応えた。


「闇エレメント、検知。

 推定、シャドウ。

 ――処置。提案」


「では――回収コレクトを実行しましょうッ!」


 楠江くすのえが指を鳴らすと、イースが両手を広げる――その瞬間に、周囲にあったパン屋の風景は、何もない白い空間へと塗り替わった。


 架想結界の展開――

 精霊同士のバトルの合図!


「話が早くて助かるよ、楠江。アンティデュエルなら、こちらから仕掛けようとしていたところだった。俺と千影ちかげの精霊を、返してもらう」


「アナエルとシケイダを取り戻すため――この短時間で、また新たな精霊を見つけて契約してくるなんて。主良さまは、ずいぶんと精霊におモテになりますのね。うふふ、わたくしにとっても好都合ですわ……!」


 楠江の背後で、イースが髪の毛をかき上げた。


 長い白髪に隠れていた片目は空洞になっており、中には無数の歯車が回転していた――その複雑な内部機構を保護するように、イースは黒い眼帯を取り付ける。


 メイド服は貫頭衣のような白い戦闘装束に変化し、右腕には何重にも黒いベルトが巻かれて、それぞれに異なる時を刻む時計が出現していく。


 戦闘態勢――イースは精霊としての本性を見せた。


「新星」


[【Yith(イース)】ッ!]


 イースの背中から大きな翼が広がり、翼が前面へと広がると、イースの全身を包み込んで球体のような形へと変形していく――空に浮かび上がる姿は、まさしく宇宙空間にただよう機械惑星の模型――巨大な球体時計となり、時を刻む装置と化す。


 デッキを取り出した楠江は、

 アンディデュエルのルールを説明する。


「ルールはわたくしスペシャルルール! 特殊構築レギュレーションとして、互いに精霊のカードを採用し、BO1の一本勝負でゲームを決める。それ以外は通常のデュエルと同じ。アンティの条件として……わたくしが勝った暁には、主良さまの精霊を回収させていただきますわ」


「異存は無い。ただし……俺が勝ったら、アナエルとシケイダは返してもらう!」


「まぁ。そちらが差し出すのは1枚なのに、こちらから2枚を要求するなんて……ずいぶんと欲深いこと。かまいませんわ。どうせ勝つのは……わたくしなのだから!」


 自信満々の楠江。

 その牙城を砕くべく――主良は鹿の子と頷きあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ