第47話 怪盗と名探偵って同じなのか!!!???
そんなこんなで……千影と相談しながら、対・楠江戦のためのデッキを練りこんでいくことにする。
「あっ、そうか。デッキ自体の根本的なアイデアには俺も気づいてたんだけど……《影牢城》の存在は完全に忘れてた。これならイースの時間停止能力に枷を付けられる……流石だな、千影!」
「にひひ……闇ハンを擦ってるからには、このくらいは当然押さえてるよ。それに、お兄が考えたデッキコンセプトにも合ってるから、ちょうどいいカードでしょ? ただの顔メタじゃなく……それ以外の役割もあるのが私好みかな」
カードをテーブルに並べながら、主良はデッキを形にしていく。
兄妹のやり取りをみた鹿の子は疑問を呈した。
「主良くんの妹に聞きたいのですが。顔メタ、とは何でしょうか?」
「特定個人を対象にメタを張ること。今回、倒すべき相手はイースのマスターだから――必然的に想定する仮想敵はイース専用デッキである【波浪遊宙部】になるの。だから、それを前提にして対面として有利なデッキを組む……本来はマナーとして褒められた手じゃないし、私も野良でやられたらキレ散らかすけど……今回は相手が相手だし、BO1の初見殺しを仕掛けてきたのは向こうが先だからっ!」
「アナエルを取り戻すために万全を期しているのですね。なるほど、主良くんの妹は優秀なカードゲーマーのようです!」
「アナエルさんだけじゃなくて……シケイダも取り戻すの。私、これでもシケイダのマスターだから。それと、鹿の子……さん」
「なんでしょう? 主良くんの妹」
「それっ!」
千影は銀色の長髪を振り乱し、鹿の子を指さした。
「なんでいちいち、私のことを妹、妹って呼ぶのぉ!? アナエルさんも、最初はそうだったけど……カードの精霊って皆、そういう感じ!?」
言われてみると――
主良はアナエルと会ったばかりのときを回想する。
「アナエルもずっと、千影のことを妹って呼んでたな。
ちー、と呼ぶようになってからはすぐに懐いてたけど」
鹿の子は「なぜ、と言われましても」と腕を組む。
「ボクのマスターは主良くんですよ。君は主良くんの妹なのですから、主良くんの妹……あるいは、マスターの妹とでも呼ぶべきかと。それとも君は、主良くんの妹であることに不服ですか?」
「えっ……うーん……不服かっていうと……不服は、不服かも。お兄はいつも、家族として私に優しいけど……優しいのは嬉しいんだけど……その……ごにょごにょ」
「ふむ。これは聞き取り調査ですね――探偵として」
バサッ、とマントをはためかせると――
あっという間に探偵姿に早着替えする鹿の子。
「名探偵・鹿の子は健在です。そのあたり、気になることはとことん深掘りさせてもらいましょう。行きますよ、主良くんの妹!」
「わ、わわわっ!」
主良が止める間もなく、
二人はカーテンに隠れて密談を始めてしまった。
「なっ……二人とも、何の話をしているんだ?」
☆☆☆
「ほほぉ。兄妹でありながら……
「なんと、最初から男性として……
「義理義理ダンス……っ
「つまり……ずっと寄り添ってくれたと……
「そんなの……好きになっちゃいますね……
「わ……わかりますよ、ボクにも……
「しゅ、主良くん……好きだから……
「では……アナエルは邪魔者なのでは……
「アナエルも友達だと……う、ううっ……
「シケイダも……君は精霊を大切にすると……
「う、うわああん……!
「ちーちゃん、良い子ですねぇ……
☆☆☆
カーテンから出てきた鹿の子は、主良に宣言した。
「事情聴取の結果、わかったことがあります。
ちーちゃんはボクの妹です」
「俺の妹だよ」
一体、どういう話の流れがあってそうなったんだ。
「…………っ!」
千影の方は、ものすごく恥ずかしそうにしてるし。
「千影、鹿の子さんと何話してたんだ?」
「な、ないしょ……っ! お兄、鹿の子さんから聞いたりしたら殺すからね!」
「殺されるのは困るな……」
「わ、私……なんで、初対面の人にあんなことベラベラと全部しゃべっちゃったんだろ……!?」
喋るつもりが無かったのに、喋ってしまったと。
「これが、名探偵のスキルってことか――」
主良の疑問に応えるように、鹿の子はウインクした。
「とんかつ屋とDJが同じように――
怪盗と名探偵のスキルも同じなんですよ」
「諸説あるからな」
ともあれ、千影と仲良くなれたなら良かった。
「ちーちゃんが組んでくれた完璧なデッキに、ボクとマスターとの絆。この二つがあるのならば、必勝ですっ!」
「絆、か……」
あの、アンティデュエルでもう一つミスがあったとすれば――アナエルをデッキに採用しないといけない特殊構築レギュレーションにおいて、アナエルが添え物の手札コストにしかならない【ビブリオマン】を選んだことにあるかもしれない。
「精霊使い同士でのバトルは、普通じゃなかった。デュエリストの心にカードが応えてくれる、なんてアニメの世界の話かと俺は思ってたけど――こと、精霊のデュエルにおいては、本当になるのかもしれないな。俺が選んだデッキが【ビブリオマン】じゃなく……【野災】だったなら、勝負の結果は違ってたのかもしれない」
もし、あそこで――
アナエルがデッキのエースとして活躍する【野災】を選んでいたのなら。
「お兄。私は、あのとき【ビブリオマン】を選んだ選択は間違ってないと思うよ。何かを賭けて、真剣に挑むカードゲームは、遊びじゃないから。お兄が【野災】を組んだのは、アナエルさんと楽しく遊ぶため――それは勝利だけを求める場所での選択とは、違うと思う……」
――千影の言うことも、正しい。
「勝利を求めるのは、前提。
でも、それだけじゃない遊び方がある――」
★★★
「制限カードだからとデッキから抜くなんて……
切札とは遊びだったんですか?(ウルウル)」
「はいはい、キャッチコピー回収ね」
★★★
「遊びだったんだよな。俺は、アナエルと……遊びたかった。なのに、せっかく組んだデッキをまだ一度も外で回せてない――このままじゃ、終われない」
あったかもしれない過去よりも――
今は、望む未来を手に入れるための現実を見よう。
スイッチを切り替えて、
今は勝つことだけを考える。
構築と戦術を練り上げる――
運命に委ねるのは、その先の話。
勝利の鍵となるカードは三つだ。
関係者専用のチートカード、
他者のカードを奪うナラクの能力、
そして――俺の相棒。
「今度こそ――アナエルで、勝利をつかんでみせる」




