↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/65

第39話 アンティデュエル!

 楠江《くすのえ》が取り出したのは、カードデッキだった。


「おいおい……」


 主良《しゅら》は戸惑いの声をあげる。


「まさか、カードゲームで決着つけるって言うつもりか?

 アニメかなにかじゃあるまいし」


「そう、おかしくはありませんことよ。カードゲームの勝敗によって、得るものと失うものがある――アンティルールは、おじい様が大昔に作ったカードゲームでも、公式ルールとして採用されていましたわ。そも、ゲームの歴史を紐解けば――現代では占術の道具とされているタロットカードも、遊戯の道具とされているプレイングカード(トランプ)も、元々はカード賭博のために生み出されたもの。カードゲームの勝敗にスピリット――カードを賭けるのは、言ってみれば、基本に帰るということになりますのよ。いわば、残忍な先祖帰りと言ったところかしら」


 くすくす、と挑発的に笑む楠江。

 アンティルールに絶対の自信があるようだ。


「こっちが勝ったら、シケイダを返す――

 じゃあ、負けたとしたら?」


「当然。そこのアナエルをいただきますわ。

 我が社の不良品は、全て回収しておかないと」


 予想はしていたが、やはり。


「そんなの……っ!

 受けられるわけないだろ!」


 どうして? と、楠江は首をかしげた。


「アンティデュエルは互いのカードを賭けるもの。

 こちらがシケイダを賭けるのですから、

 そちらもアナエルを賭けるのが道理のはず」


「アナエルは……ただのカードじゃない!」


 アナエルが、ここにやって来て――

 この数日、主良はずっとアナエルと一緒にいた。


 それで、わかったことがある。


 変なことばかり言う子だけど……

 カードの時の印象とは違って、

 意外と図太くて、いい性格した子だけど……


「アナエルは一人の女の子だ。

 それを賭けるとか賭けないとか、

 出来るわけないだろうがっ!」


 主良が啖呵を切ると、楠江は気圧された様子だった。


「……っ! そう。ずいぶんと精霊に絆《ほだ》されていますのね。回収《コレクト》が遅れた弊害――それについては謝罪しましょう。こういったことが無いように、次回からは迅速な業務の遂行が必要になると――再発防止に向けた報告書を書かないといけませんわ……」


 主良の横にアナエルが立つ。


「マスター。マスターが切札を大切にしてくれるのは嬉しいです。それでもカードです、切札は。マスターと共に、デュエルで戦うためにある。最初にそう言いました」


「アナエル?」


 アナエルの表情は読めない。

 けど、その言葉には確固たる意志があった。


「切札は戦う覚悟が出来ています。

 ――ちーの元に、

 シケイダを取り戻すために必要ならば!」


「取り戻すための、戦い……か」


 でも、負ければアナエルを失う。

 そんな戦いが、出来るのか?


 主良は戸惑う。

 しかし――


 拒んでも、この妙な空間から出れるかどうかわからない。

 アンティデュエルを受けなければ、

 楠江はまた精霊を暴れさせるだろう。


「(千影《ちかげ》に危害が加えられるかもしれない……)」


 既に、退路は断たれていた――。




 念のため、楠江に条件を確認する。


 アンティで楠江が差し出すのは、

 シケイダの身柄。

 加えて、今後はアナエルたちに手出ししない――。


 逆にこちらが差し出すのは、

 アナエルの身柄と――

 アナエルとシケイダの空白《ブランク》カード。


「空白《ブランク》カードを求めるってことは……処置とやらに必要になるってことか。無理やりカードに戻すつもりなのか……?」


 勝負はスピリットキャスターズNEXTを用いたデュエル。

 一本勝負のBO1。


 また、使用するデッキには――


 必(・)ず(・)精(・)霊(・)の(・)カ(・)ー(・)ド(・)を(・)採(・)用(・)し(・)て(・)い(・)る(・)こ(・)と(・)、という条件がある。




 条件を聞いて、千影は舌打ちをする。


「最悪。アナエルさんはリミテッド・ワンだから――特殊構築レギュレーションでアナエルさんの採用を強制されることで、自動的にこっちは他のリミテッド・ワンが使えなくなる」


「それが楠江の狙いか――?」


 条件を聞いた主良・アナエル・千影は、

 楠江から離れてデッキを組むことにした。


「アナエル。一応、周囲を警戒して、楠江の精霊にデッキ構築を覗かれないようにしてほしい。出来るかな?」

「肯定します。お任せください、マスター」

「お兄、冴えてる……! BO1の一本勝負である以上……情報戦のアドはクソデカいもんね……!」

「ああ。楠江はこちらに一度も精霊の姿を見せていない。きっと、デッキを読まれないために……最初からアンティデュエルを想定して立ち回っていたと思うんだ」


 楠江が操る精霊――

 ヒントとなる要素はDステルスだけ。


「Dステルスを持っている精霊、加えてある程度の大きさがある――人間よりも巨体のスピリット。だけど、これだけだと推理するには条件が広すぎるな」

「ファッティ(重量級のスピリット)にはとりあえず配られがちなキーワード能力だもんね。まぁ、色の役割的に、多いのは水か風か闇あたり……」

「肯定します。ですが、ファイロ・ゲノミクスのデータでカードリストを検索したところ――六つの色と無色を含めて、現在のカードプールでは全ての属性のエレメントにDステルスを持ったスピリットが存在していることがわかりました」

「アナエルさん、それホント? 火水とか火闇はいた気がするけど……火単色っていたっけ?」

「《限りなく透明に近いレッド》」

「村上ドラゴンサイクルかぁー……」

「俺が気になるのは……仮に勝ったとして、楠江が約束を守ってくれるかどうかなんだよな」

「安心してください、マスター。精霊同士のバトルには強制力が働きます――きっと、その作用を利用してアンティデュエルは行われるものかと」

「なるほど」

「ちっ、こっちの負けも踏み倒せないじゃん」

「千影……お前……」

「ドン引きです」

「うそうそ、言ってみただけっ!」


 ともあれ――問題は、デッキ選択になるな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。