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第35話 宴の始末

 ナラクが消えた後――

 彼女が盗んだカードは、店長さんに返すことになった。


 閉店前のカードショップ『オネスト』にて。


「助かったよ、主良くん……!

 これはお客様から預かったカードだったんだ。

 弁償しようにも査定を出す前だったので、

 困り果ててたんだよ」


「いえ……見つけたのは、

 俺じゃなくて。

 名探偵の鹿しかさんでしたから」


 名探偵かぁ、と店長さんは感心する。


「あの女の子、まさか本当に見つけてくれるとは!

 店の裏路地にカードが隠されてたってことは、

 やっぱり犯人はイタズラのつもりだったのかな……。

 現場にナラク・カードなんて残すくらいだったし」


「たぶん……そうなんだと思います」


 その怪盗と探偵が同一人物だった――

 ということは、伏せておいた方がいいだろう。


「(理由はどうあれ、鹿の子さんは泥棒だ。でも……)」


 もう鹿の子さんはいないけれど。

 それくらいの肩入れはしてもいいはず。


 ――俺は、鹿の子さんの助手なんだから。


「主良くん。せっかく見つけてくれたんだから、名探偵にお礼を言いたいんだけど……彼女はどこへ?」


「時間が遅くなったので、もう帰っちゃいました。

 家が遠いらしくて」


 主良は店の外に広がる闇を見つめる。


「そんな急いで、帰ることないじゃないかって――

 言いたかったんだけど……


 俺、言いそびれちゃいました」




「マスター。

 切札は、ナラクに嫌われていたようです」


 帰路。

 夜道を歩く途中、ふとアナエルは言った。


「残念です。

 切札は嫌いではありませんでした、

 ナラクのことが。

 もっと、仲良くなりたかったです」


 その表情はいつものように変わらない。

 アナエルは表情で感情を表わさない子である。


 でも、その声色は、その言葉は、

 いつだって真っ直ぐに情を示している。


 それに応えるには、主良も言葉を使うしかない。


「……口では、そう言ってたけどさ。鹿の子さんだって、きっとアナエルのことは嫌いじゃなかったと思うよ」


「そうで、しょうか」


「ああ。俺、思い出したんだ。鹿の子さんがナラクじゃなくて、まだ鹿の子さんのときに言ってたこと」



★★★


「お二人とも。その想いは、どうか御大切に。何事にも、いつか終わりは来るものですが――終わりが来たからと言って、それまでの価値が失われるわけではありませんから。今となっては価値を感じないものであっても――かつて、たしかに手にとったはずの価値を――今の自分ではない自分が感じた価値というものを、見失わないでくださいね?」


★★★



「俺とアナエルに向けた言葉。実体化した鹿の子さんには無かった、精霊とマスターの絆を、今を生きる俺たちには失ってほしくなかったと……そう思ってたんだよ。鹿の子さんは、ちゃんとアナエルのことだって考えてくれてた」


「疑問です。では、なぜ嫌いなどと」


「それは――うん」


 推理、するしかないけど。

 答えは口元まで出かかってたけど……


 それを言葉にするのは、ためらわれた。


「俺には、わからないな」


 これは探偵ミステリーじゃないんだから。

 鹿の子さんの心は、鹿の子さんのものにしておこう。


「……マスター」



 カン☆コーン!



 ここで突然、携帯の着信音が響いた。

 着信元は――


「……千影? 何かあったのか?」

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