第27話 名探偵、登場!
「怪盗……だって!?」
主良は思わず大声をあげた。
それも当然の話だろう。
現代日本において――
怪盗なんて言葉を聞く機会はそうそう無い。
法人は「店長さんから聞いたのだけどね」と言った。
「なんでも、カードが盗まれた現場には、
ナラク・カードが置かれていたそうだよ」
「ナラク・カードって言えば、たしか……。
”死ノ怪盗”ナラクが予告状に使うっていう?」
主良がそう言うと、
アナエルは前のめりになって首を縦に振った。
「肯定します!
暴力と退廃の都、
アルフィー・ヴィクトリアにおいて……
影なる大炉心に生まれ落ちながら、
その心を決して闇には染めない正義の大怪盗――
”死の怪盗”ナラクの象徴、
狙った獲物は逃さないという意思表示!
それこそがナラク・カードです……ッ!」
「フフッ……アナさんは、
スピキャスのストーリーがお好きのようだね?」
「ま、まぁな……」
法人は気取った動作で肩をすくめる。
「とはいえ、だよ。現実的に考えれば、ナラク・カードを残したのは悪質なイタズラであって……正義の怪盗であるナラクとは似ても似つかない、ただの泥棒の仕業だろうけどねぇ」
普通に考えれば、そうである。
だが――タイミングがタイミングだ。
「(俺の元に現れたアナエル。そして、千影の元に現れた、第二の精霊であるシケイダ……!)」
二度あることは三度ある。
本物のナラクが現れたと考えても、不思議はない。
「主良もせっかく来たのだから。
私とフリーしていかないかい?
新環境で試したいデッキもあることだし」
「悪い、法人。
ちょっと気になることがあるから、
店長さんと話してくるよ」
せっかくの誘いだが、盗難事件が気になる。
店長さんのいるカウンターに向かうと――
何やら、もめているようだった。
「何度言ったら、わかるんですか!
ボクは名探偵なんですよ?
事件の捜査状況を共有してくださいッ!」
――名探偵?
「なんだか、怪盗だの名探偵だの……およそ現実では聞くことが無いワードが飛び交ってるな……」
「肯定します。ワクワクが止まりません」
不謹慎だが、気持ちはわかる。
カウンターには制服を着たお巡りさんと、店長、
そして謎の少女がいた。
「店長さん、これどういう状況ですか?」
「主良くん……いや、法人くんから聞いたと思うんだけど、
ウチに泥棒が入ってしまってね……。
警察の方に事情を話していたところなんだ」
「で、この女の子は何者なんです?」
「名探偵……らしい」
名探偵。
たしかに見た目の雰囲気で言えば、
説得力だけはある。
年の頃は十代後半といったところだろうか。
その装いは年齢不相応に落ち着きがあり、
古風な印象を漂わせていた。
濃い色合いのベージュのショートコートは、薄くてスレンダーな身体に合うよう丁寧に仕立てられている。中には白いベストとシャツ、首元には控えめなリボンタイ。スカートは動きやすそうな丈で、足元は磨き込まれたローファー。
短く切り揃えられた黒髪の印象も相まって、
どこか少年らしい――
否、美少年のような中性的な雰囲気がある。
だけど。
「だーかーらー。ボクは名探偵なんです。怪盗には名探偵って相場は決まってるじゃないですかァ~っ! たとえるならキラークイーンとストレイキャットの空気弾! チョコラータに対するセッコ! 荒木飛呂彦の原作に対する上遠野浩平の『恥知らずのパープルヘイズ』!って感じなんですよぉ~っ!」
言動だけ見ていると――
「自認名探偵のヤバい奴だな、こいつ……!」




