第24話 温泉郷でデュエル三昧! 紙じゃない、神だ!(中編)
スピリットキャスターズNEXTにおける、
色の役割――
火エナジーはバースト値のパンプアップや
直接火力による、
速攻戦術――
地エナジーはスタッツに優れるスピリットや
スピリット同士の格闘による、
盤面の面取り――
を、主に得意としている。
しかし、火・地の二重属性で組まれた
【野災】は、
いずれにも属さない例外的な存在。
その実態は、入念な墓地肥やしの準備から、強力なユニゾン・スピリットを早期に展開することによる――疑似的な瞬殺コンボデッキ。
主良はデッキ構築の意図を語り始める。
「本来の色の役割では、墓地肥やしと墓地利用は主に闇エナと地エナが得意とする戦術だが――森林を焼き払い、生じた灰を肥料とする”焼き畑農業”のフレーバーを与えたことによって、火のベジタリアンはデッキから直接カードを墓地に送りこみ、闇の汎用カードを上回る高効率での墓地肥やしを可能としている。充分に墓地が肥えれば、地のベジタリアンが得意とする墓地錬成にキレイに繋がる――ここでなら、デッキでも墓地でも代用素材として扱えるアナエルは、キーカードに成り得ると考えたんだ」
千影は兄の解説にうなずいた。
「カード性能からフレーバーを与えるボトムアップ・デザインの対極、フレーバーからカード性能を逆算して設定するトップダウン・デザインってやつだよね。火エナジーに与えられた色の役割から、明らかに逸脱したデザインだし。故に赤黄というビートダウンのカラーで組まれながら、動きとしては中速コンボデッキそのもの。今年に強化を受けたばかりのテーマだから、カードパワーも安定性も充分以上。けど、お兄――コンボデッキは本来、コントロールにとってはおいしいエサだよ?」
「くっ――!」
千影の言うとおりだ。
全てのカードがライフを削る有効札になるビートダウンとは異なり――カード同士のシナジーを重視するコンボデッキは、核となる動きを咎められるだけでダメージ効率が大きく下がってしまう。
アナエルが唱える錬成スペルは――
「プレイします、
《GMフード・モディファイド》」
「《価値観の断絶》をキャスト。
妨害しますぞ、墓地ユニゾン」
シケイダに容易く弾かれる。
ここからがコントロールデッキの本領発揮。
手札もエナジーも充分に貯まり、
シケイダのプレイにも余裕が生まれ始めた。
いくら墓地が肥えていても、
それを活用するカードが通らなければ――
強力なユニゾン・スピリットを展開することが叶わない。
仕方なく、アナエルはデッキ錬成で出しておいたスピリットでシケイダのライフを詰めていく。
「盤面に《スコッチ・ソーダ》を出せていたのは幸いだったな。あいつの2バーストでクロックを刻んでいけてるが――」
「お兄、わかってると思うけど。【シケイダループ】相手にスピリットを展開するってことは、利敵行為にもなりかねないからね……?」
わかっていた。
場にスピリットがいるということは――
「切札は、ターン終了です」
「エンド時に、インタラプトでプレイする。
《スパイラル・ウェーブ》により、
そちらのスピリットを手札に戻しましょうぞ」
バウンス効果を持つスペルである、
《スパイラル・ウェーブ》の対象先を提供することになる。
「ユニゾン・スピリットである《スコッチ・ソーダ》は、手札に戻す効果を受けた場合、手札ではなくアストラル・ゾーンに戻る――バウンス効果は完全な除去になる。この点では相性が良くないんだよな」
「それだけじゃないよ、お兄。《スパイラル・ウェーブ》が唱えられて墓地に落ちた時点で、【シケイダ・ループ】の準備は完成したようなもの。あとは手札に《望郷歌・ウィスタリアテイカー》か《銀の鍵》のどちらかがあれば、シケイダの着地を許した時点で無限エクストラ・ターンのコンボは完成する……そうなる前に錬成を通せなければ、アナエルさんの負け」
【野災】と、
【シケイダループ】。
コンボデッキと一口に言えば、
どちらも似たデッキではあるが――
コンボに特化した【野災】と、コントロールがフィニッシャーとしてコンボを採用した【シケイダループ】では、その設計思想が大きく異なる。
このマッチアップは、
どちらかと言えばコンボvsコントロールである。
コントロールが余裕をもって妨害を構えたこの局面。
キルターンも秒読み。
本来ならば、ここで負けは決まったようなもの。
しかし――
コンボデッキがコントロールデッキに弱いというのは、
あくまでも一般論の話だ。
環境のメタによって――
あるいは、カードプールによって――
はたまた、カードテキストによって。
何事にも例外は生じる。
スピリットキャスターズにも、もちろん。
他のカードゲームには存在しない、
究極のトップダウン・デザインがある。
「どんな妨害もかなわない――必中必殺のカード・タイプ。
災害は、わかっていても防げない……!」




