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第23話 温泉郷でデュエル三昧! 紙じゃない、神だ!(前編)

Mission:

Show your sister what's possible.

(妹に可能性を示せ)


 決闘の気運が高まったことで、

 周囲の風景が目まぐるしく変化する。


 ふすまの向こうには、宴会場。

 その先にもふすまがあり、また宴会場。


 騙し絵のようにどこまでも続いていく、

 天然温泉の和のフィールド――


 いよいよ、無限旅館編も大詰めである。


「頼んだぞ、アナエル……!」


 スピリットキャスターズの先攻・後攻はランダムに決定する。

 本来は公式アプリのランダマイザ機能や、サイコロの出目の大小で決めることを推奨しているが――カジュアルの場ではじゃんけんで決めることも多い。


 だが、精霊同士のデュエルの場合は――


「いただきます、先攻を。

 切札のターン!」


 自己申告制らしい。


「まぁ、()()()これでいいか」


 主良しゅらはアナエルを見守ることにした。

 不安そうにしているのは、千影ちかげだ。


「お兄、自分でバトルしなくていいの……?」


「いいんじゃないか?

 そもそもデッキの可能性、って話だし。

 俺と千影がバトルしたら、

 千影の方がずっとプレイングが上手いんだから――

 【シケイダループ】が強いのか、千影が強いのか、

 わかんなくなっちゃいそうだしな」


「うんっ……お兄、弱いもんね……」


 そんなことないよ、

 と言って欲しかったんだけどな……!


 千影に期待するのは、とっくに諦めていた。


「むしろ、アナエルとシケイダがやった方が、

 デッキの可能性はわかりやすいのかもだ」


 アナエルも、デッキの動かし方は理解しているはず。

 なにせ、自分のために組まれたデッキなのだから。


 アナエルは初手から火のエナジーをセットした。


「エナジー、チャージです。

 火エナジーから《スラッシュ&バーン》をプレイ。

 手札1枚を捨てて、

 デッキの上から3枚のカードを墓地に落とします。

 その後、ベジタリアン・カードを回収――」


 理想的な初動である。

 シケイダ側の妨害も、これには間に合わない。


 ベジタリアンは地属性に多く存在するタイプのスピリットだが――火属性のベジタリアンの場合は、デッキのカードを燃やすことでアドバンテージを稼いでいく。


「門前の小僧、習わぬ経を読む――ってやつだな。

 アナエルのプレイングに問題は無さそうだ」

「お兄まで……

 蝉みたいなジジ臭いこと言ってるぅ……」

「そういう、ことわざがあるんだよ!」


 3ターン目になり、シケイダも動く。


「水エナジーをロール。

 《別れ札》をコスト3側でプレイしましょう。

 2枚を手札に、1枚は墓地へ」


 序盤は堅実に、アドバンテージを取りに行くシケイダ。

 エナジーがロールする――隙が出来た。


 先に仕掛けたのはアナエルの方だった。


「《マザル・ド・リンク》を発動――

 通りますか、シケイダ?」


 シケイダは手札に手をかける。

 が、一瞬だけ止まり、言った。


「――通ります。

 唱えるがいい、ユニゾンを」


「素材を選択します、切札のデッキから」


 デッキのカードを広げる。


 指定されたのは、

 《精製の野災ディザスター アボカド・オイル》と、

 《次世代神造姫(ネクス・ハート)アナエル》だ!


「ファイロ・ゲノミクスに申請。

 共鳴条件は【オイル】スピリット1体と、

 【ウォーター】スピリット1体。

 素材代用効果により、

 切札は切札を【ウォーター】の代用にします」


 ちっ、と横で千影が舌打ちした。


「おい、千影……」



「やっぱ、あの裁定は汚いよ……! 同じ書き方の《沼地の魔女》は手札とフィールドでしか代用効果が発動できなかったのに、アナエルだけ《高等錬金術式》とのデザイナーズだからデッキでも代用素材になるのって。しかもテキスト通りに「任意のカード名として扱う」と読んだなら、カード名指定の錬成ユニゾンでは使えても、【オイル&ウォーター】みたいなテーマ指定の錬成ユニゾンでは使えないはずじゃないの……? ああいう風に、ちょっと面が良くて運営のお気に入りで売りたいからって裁定をねじ曲げて汚い裁定出すのって、TCGとしての格が下がるから止めてほしいんだよね……!」



 ループのたびにこれ言ってたんだよな。


「《沼地の魔女》だって、今はアナエルに合わせてデッキでも発動できる裁定になったんだからいいだろ……」


 ともあれ。

 アボカド・オイルが【野災ディザスター】でありながら【オイル】の名称指定サポートを受けられることで、文字通りデッキの潤滑油となってくれている。

 アナエルはユニゾン・スピリットの《スコッチ・ソーダ》をプレイしたが、このスピリット自体には大した役割は存在しない。


 重要なのは、

 デッキ錬成ユニゾンをしたことで――


()()()()()()()()()()()

 火軸の【野災ディザスター】は、

 墓地肥やしからの連続ユニゾンが持ち味のテーマだ」


 これが、俺とアナエルの辿り着いた答えである。

 千影も神妙な顔でうなずく。



「リミテッド・ワンのアナエルさんは、

 手札からの錬成ユニゾンや、

 フィールドからの錬成ユニゾンでは、

 一度しかゲームに絡めない。


 けど、このデッキなら――

 墓地錬成(ユニゾン)からの墓地肥やしで、

 何度でもゲームに絡めることができる。 


 わかるよ、お兄。

 でも――」



 気づいた? と、千影は耳打ちする。


「……あぁ。さっきのシケイダ」


 エナジーが全てロールしてるにも関わらず、

 一瞬だけ、カードに手をかけた。


 おそらく、手札には()()()()()がある。



「《インターフェア》を抱えてる。

 エナジー無しでもプレイできる妨害カードだ。

 ここからは、

 マストカウンターは逃さない――」



 ゲームエンド級の即死コンボ――

 シケイダの着地まで、あと3ターン。

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