第20話 第二のマスター
ついに現れた、ループの黒幕。
第二の精霊――シケイダ。
蝉頭のスピリットは、
まるで特撮番組に出てくる宇宙人のようだった。
「兄者殿――
決闘温泉、良い夢かな?」
シケイダの言った言葉を反芻して、
主良は指を折って数える。
「あ・に・じゃ・ど・の、で5。
け・っ・と・う・お・ん・せ・ん、は8。
い・い・ゆ・か・な、で5。
なんだ。
シケイダマール575のくせに、
575じゃなくて585じゃないか……!」
「フフフ。流石は兄者殿。
細かいところに目星が効く。
お嬢様に似て、陰湿でおられますな」
フォフォフォ、と蝉頭のシケイダが笑う。
流暢にしゃべりだした様子を見て、
主良は面食らった。
「五・七・五以外でも喋れるのかよ。
っていうか、兄者殿ってなんだ?」
スッ――と、シケイダは千影を指す。
「某の、千影お嬢の、兄者殿」
「今度は、合わせてきたな……」
以前のループで起きたことを思い出す。
アナエルが実体化した後、
カードのイラストは空白になった。
その空白カードを見た千影の様子が、少しおかしかったが……
「千影。もしかして、こんなカードを持ってるんじゃないか?」
主良が空白カードを取り出すと、
千影の表情は驚きに染まった。
「お兄、なんで知ってるの……?」
「もしかして、って思ってな」
千影がストレージボックスから取り出したのは、
アナエル同様にイラストが空白になったカード。
カード名は――
《電脳執事Cicada Marl/575》だ。
「千影のデッキには、元々は追放対策でシケイダが2枚採用されてた。リミテッド・ワンになって1枚採用になったが――余ったカードの方が、イラストが消えたカードだったんだな、千影?」
「う、うん……まぁ、シケイダは普通に4枚持ってたんだけど。そのうちの1枚が、急に使えなくなっちゃったんだよね……妙なエラーカードなのかと思って罪園の運営に口汚いお便りを送ったんだけど、返事も来なかったし……」
それまで黙っていたアナエルが、口を開く。
「理解しました。
ちーだったのですね、シケイダのマスターは」
「わ、私が……
シケイダの、マスター!?」
「肯定します。切札が、マスターを求めたように。
シケイダも、ちーの元で実体化した。
リミテッド・ワンになったことで――
このループ空間も、きっと。
……ちーのため。
違いますか、シケイダ?」
「愚問だな。
得意になるな、アナエルめ。
我らが精霊は、皆、マスターのためにある。
某の目的も、
無論、千影お嬢様のためだとも」
シケイダが恭しくお辞儀をすると、
三枚のカードが空中に出現した。
《銀の鍵》
《望郷歌・ウィスタリアテイカー》
《スパイラル・ウェーブ》
三枚のカードの中央には、
Tの字に手を広げた三つ編みの女性――
藤原さんの姿もあった。
「シケイダ、お前……!
藤原さんは、一体何者だったんだ?」
「ループを構成するために、外から引き込んだ――夢みがちな一人の一般SCPでございます。この空間はSCPの夢で構成するもの。千影お嬢様、一人ではなく……皆が望み、維持を希望した夢。故に強固な存在なのだと」
「夢、だと……!?
この決闘天然温泉・死刑打流布が……!?」
道理で――
温泉施設の名前に「死刑」
なんて付いてるのは、おかしいと思ってたんだ。
千影は「うそ……」と言葉を漏らした。
「ここが、私が望んで見た、夢……?」
「いかにもです、お嬢様」と、シケイダは礼をする。
「お嬢様は、見たくないと望みました。
兄者殿が頑張って組んだデッキが――
どうしても通用せず、玉砕するという現実を。
デッキを組んでいるあいだは夢を見られる。
理想の動きを夢想できる。
そうしていることが――兄者殿の幸せだと。
千影お嬢様は望んだのでしょう?
夢見ごち――
決闘温泉、良いところ――
字余り」




