第15話 死刑だループ!?
「……遅いな、二人とも」
シャク、シャク、とスプーンをすくって口に運ぶ。
風呂上がりのかき氷は格別である。
ラウンジでしばらく待っていると、
主良の元に浴衣姿の少女二人がやって来た。
「かき氷のブルーハワイ。
抗議します。
マスターだけズルいです」
「お兄、私はいちご味ね……」
アナエルと千影だ。
二人とも肌にうっすらと朱が差し、
だいぶ温泉を満喫した様子である。
「そういえば、
アナエルは人間の食事を食べて大丈夫なの?
前に不要だって言ってたけど」
「肯定します。
不要ですが、嗜好品としてなら摂取可能です。
食べたいです、切札は」
「お兄、私はいちご味っ……!」
二人分のかき氷を自販機で買ってくると、
アナエルと千影は嬉しそうに食べ始めた。
「「おいし~~~(です)」」
なんだか、妹が二人に増えた気分になる。
これからカード以外にも出費が増えそうだし、
バイトを増やすべきだろうか。
アナエルがいきなり温泉に行きたいと言い出したときには面食らったけど、たまたま温泉施設の無料優待券が三枚もあって良かった。
そう、ちょうど……。
「(三枚?)」
違和感。
この券、どこでもらったものだったっけ?
思考を走らせようとすると、ズキリと頭が痛む。
うっ……。
「あ痛たたたたたたっ……!」
「ちー、アイスクリーム頭痛です。
一気に食べてはいけません、冷たいものは」
額を押さえる千影を見て、我に返った。
さっきまで……何を考えていたんだったか?
しかし、こうやって二人を見ると――
「アナエルって、千影のお姉さんみたいだな」
館内着の浴衣姿で並んだ二人は、
どちらも、
きれいに背まで伸ばした銀髪を軽くまとめていた。
「普段はツインテールにしてるアナエルの髪も、
ほどいてみたら千影にそっくりだし」
「肯定します。
切札はちーのお姉さんです」
「いや、アナエルさんの方が妹でしょ。
見た目の割には、
なんかいちいち子供っぽいし……」
「否定します。
子供っぽくなどありません。
それにマスターと結ばれれば、
ちーは切札の妹になるのです」
「うぅ……そんなことさせない。
絶対、アナエルさんを妹にしてやるんだから……!」
「いや、千影がアナエルの姉になる方法は無いだろ」
そう言えば、なんのかんの言っても。
主良がアナエルを使うと決めたのは……
初めて見たときに、イラストに一目惚れしたからなのはある。
「(アナエルが千影にそっくり、か……)」
なんかこの話題、掘り下げるとドツボに嵌まる予感がする。
墓穴ホールになる前に、切り上げるとしよう。
「じゃあ、部屋の鍵を借りに行くか。
えっと……らせんの間、だっけ?」
この温泉施設……名前はなんだっけか……は、宿泊施設も兼ねており、昼間は宿泊用の個室をフリースペースとして貸し出すサービスがある。
誰にも迷惑のかからない、人目の無い個室。
そうとなれば、やることは決まっている。
カードゲームだ!
「ダインスレイフを使わない」という千影の宿題も達成できたはず。
今日は徹底的に……アナエルの可能性を追求するぞ!
「ルームキーはこちらです。
利用時間は5時間までとなっております」
「はい、ありがとうございます」
ロビーの店員さんからキーを受け取る。
それにしても……
「まだ午前中とはいえ、全然お客さんがいないな」
連休初日なのに、やっていけてるんだろうか?
だから優待券を配ってたのかもしれないが。
主良とアナエル、千影の三人は「らせんの間」を開ける。
室内は広々とした和室になっていた。
畳が敷かれた雅な部屋の風景に、アナエルは感嘆の声をあげた。
「まるでセイレン・パブケイブです。
元ネタなのですね、これが」
「セイレン・パブケイブって……歌の魔法を操る人魚や魚人たちが住んでるっていう、深海にある宮殿のことだっけ?」
「肯定します。五・七・五の数字に宿る魔力を言の葉に乗せる彼らの精霊核は、ワビサビと呼称される和の世界観によって強化されます。この室内は、以前に訪れたことのあるセイレン・パブケイブのチャシツそのものです」
そういえば――
「千影の気に入ってた【シケイダループ】のキーパーツは575だったよな。あいつもリミテッド・ワンになっちゃったから、次の環境では使いづらいだろうけど……」
「えっ?
お兄、それ本気で言ってる?
575がリミ1ぐらいで止まるわけないじゃん。
目障りだったアナ神造が消えるし、
普通に次の覇権は【シケイダループ】だよ。
575は元々2枚しか採用されてないし、
それも追放対策でしかないからね。
殺すつもりなら、ゼロ以外あり得ないもの。
あれで本気でデッキごと消せたと思ってるなら、
運営はマジの無能だし……」
千影が取り出したデッキ――
その一番上に見えるのは、
リミテッド・ワン指定を受けたばかりのスピリット。
《電脳執事Cicada Marl/575》だった。




