第14話 温泉回ラスト・リゾート
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「うわっ……!」
千影は思わず、声を上げた。
乳白色の湯船に、アナエルの白い肌が溶け込む。
半身を湯につけながらも、
生菓子のようにつややかで張りのはる乳房に……
千影の目は、
ドンドン吸い込まれナウしていた。
「で、でかすぎ……。
アナエルさん、もしかして……
もう、お兄に揉ませた?」
「否定します。
何度か誘いはかけましたが、
全くのプラトニック・ラヴです。
今のところは」
「よかったぁ……!」
だらり、と湯船の中で脱力する千影。
安心感のあまり、行儀悪く足を伸ばして首まで漬かる。
大浴場の室内は湯気で満ちており、
視界を柔らかくにじませている。
「(はぁ……良い、お湯!)」
早朝ということもあり、
大浴場は二人で貸し切り状態となっていた。
千影が一時帰宅した、翌日のこと。
連休初日ということもあり、
自宅を拠点にして都内のCSをハシゴする予定だったが……。
兄である主良の頼み、
そしてアナエルの「温泉に行きたい」という願いもあり、
三人で近場の天然温泉に繰り出したのだった。
(※主良は男湯)
「ところで、アナエルさんは……
なんで、温泉に行きたかったの……?」
「興味がありました。
ケテルマルクトには存在しない施設ですので」
「ケテルマルクト!
それって背景ストーリーに出てくる、
機械生命の次元だよね」
信じがたい話だけど……
やはり、アナエルはカードの世界からやってきたらしい。
「それと」と、アナエルは続けた。
「この度、リミテッド・ワンになりましたので。
温泉に行くのが定番だと聞きました、
規制を受けたカードとしては」
「あー、ね。
温泉に行くか、監獄に行くかだよね……。
ふひひっ!」
「行きたくないです、監獄には……」
これも、カードゲームあるあるである。
知らない人は「温泉送り」とかで検索!
それにしても、良いお湯だ。
肌もすべすべになっていく。
じんわりと芯から暖まる感覚。
流石は天然温泉と言ったところだろうか。
暖かな湯船に漬かることで、
アナエルの新雪のような肌にも赤みが差していた。
「あったかい、です。最高です……。
ところで、ちー」
「なぁに?」
「ちーは、切札のバストがデカすぎると言いましたが」
「うん……」
「それについては肯定します。
ですが、ちーのバストも大概かと」
「ふえっ!?」
湯気の向こうから、蒼い瞳が千影を見据える。
それは測定器が対象を解析するかの如く……
「ファイロ・ゲノミクスに申請したデータを確認。ちーのバストは日本人・高校生女子の平均を大きく上回っています。現状でも1■■cm、高校生の成長率を考慮すれば2年以内には切札を凌駕する可能性が三十五パーセント!」
「!」
ぶるん、と湯船の上で千影の胸元が揺れた。
成功!したい。
女っ気のない義兄のところに現れた、
まさかのダークホースはカードの美少女。
思わぬ好敵手の登場だが――
こっちはアナエルが刷られる前からずっと前から、
義兄のことを一人の男性として見ていたのだ。
「アナエルさん。
私の目の黒いうちは、お兄は渡さないからね」
「否定します。
きれいな赤色ですが、ちーの瞳は」
「人間の慣用句、なのっ!」
ふと、千影は気づく。
せっかく二人きりなのだから――
兄の前はしづらい話もしておこう。
「……アナエルさん、今のうちに言っておくね。アナエルさんが、またお兄と一緒に戦いたい、っていう話だけどさ」
兄が話していた、錬成戦術。
他所の構築はデフォで否定から入るタイプなので、
つい色々言ってしまったけど……。
実際は、練り込みさえすれば、
十分に環境相手でも勝負を成立させられる余地はある。
(まずはダインスレイフを抜くところからだけど!)
でも――それが永遠に続けられるわけじゃない。
「カードゲームの環境は、常に変動するもの。苦手とするアーキタイプが環境に蔓延すれば、当然だけど通りは悪くなるし。もっと言えば、インフレに置いてかれて、カード性能が終わり散らかす可能性もある。今は、まだアナエルさんは戦えるかもしれない。言うて、リミ1を喰らうぐらいにはクソ強いカードなわけだし……それでも、いずれは、どう頑張っても環境に居場所が無くなる時が来るはず。これは、アナエルさんだけじゃなくって……全てのカードに言える、話……」
「肯定します。優しいですね、ちーは」
「ふえっ……?
な、なにが?
アナエルさん、話聞いてた?
私、アナエルさんがオワコンになるって話してたのに」
「肯定します。
切札に正直に話してくれました、そのことを。
だから、優しいのです」
「そ、そうかな……?
私、お兄以外で初めてそんなこと言われたかも」
「いつか、切札が戦えなくなる時が来る。
もしかしたら、その時こそ……
戻るときなのかもしれません」
「戻る、って……」
相変わらずの無表情のままで、
アナエルはすくっと湯船から出て立ち上がった。
形の良い頭から長い脚まで、
均整の取れた完璧な少女。
ザイオンの生み出した破壊サイボーグ――
アナエルは拳を握って、千影に言った。
「では、ちー。
次は露天風呂に入りましょう!
やはり露天風呂です、温泉と言ったら!」
「えぇー……。
露天風呂って、暖まった分のアドと、
外の寒さで凍えるディスアドを計算すると、
どっちかっていうとアド損じゃない……?」
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