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第14話 温泉回ラスト・リゾート

☆☆☆


 「うわっ……!」


 千影ちかげは思わず、声を上げた。


 乳白色の湯船に、アナエルの白い肌が溶け込む。

 半身を湯につけながらも、

 生菓子のようにつややかで張りのはる乳房に……


 千影の目は、

 ドンドン吸い込まれナウしていた。


「で、でかすぎ……。

 アナエルさん、もしかして……

 もう、お兄に揉ませた?」


「否定します。

 何度か誘いはかけましたが、

 全くのプラトニック・ラヴです。

 今のところは」


「よかったぁ……!」


 だらり、と湯船の中で脱力する千影。

 安心感のあまり、行儀悪く足を伸ばして首まで漬かる。


 大浴場の室内は湯気で満ちており、

 視界を柔らかくにじませている。


「(はぁ……良い、お湯!)」


 早朝ということもあり、

 大浴場は二人で貸し切り状態となっていた。


 千影が一時帰宅した、翌日のこと。

 連休初日ということもあり、

 自宅を拠点にして都内のCSをハシゴする予定だったが……。


 兄である主良しゅらの頼み、

 そしてアナエルの「温泉に行きたい」という願いもあり、

 三人で近場の天然温泉に繰り出したのだった。


 (※主良は男湯)


「ところで、アナエルさんは……

 なんで、温泉に行きたかったの……?」


「興味がありました。

 ケテルマルクトには存在しない施設ですので」


「ケテルマルクト!

 それって背景ストーリーに出てくる、

 機械生命の次元だよね」


 信じがたい話だけど……

 やはり、アナエルはカードの世界からやってきたらしい。


「それと」と、アナエルは続けた。


「この度、リミテッド・ワンになりましたので。

 温泉に行くのが定番だと聞きました、

 規制を受けたカードとしては」


「あー、ね。

 温泉に行くか、監獄に行くかだよね……。

 ふひひっ!」


「行きたくないです、監獄には……」


 これも、カードゲームあるあるである。

 知らない人は「温泉送り」とかで検索!


 それにしても、良いお湯だ。

 肌もすべすべになっていく。


 じんわりと芯から暖まる感覚。

 流石は天然温泉と言ったところだろうか。


 暖かな湯船に漬かることで、

 アナエルの新雪のような肌にも赤みが差していた。


「あったかい、です。最高です……。

 ところで、ちー」


「なぁに?」


「ちーは、切札のバストがデカすぎると言いましたが」


「うん……」


「それについては肯定します。

 ですが、ちーのバストも大概かと」


「ふえっ!?」


 湯気の向こうから、蒼い瞳が千影を見据える。

 それは測定器が対象を解析するかの如く……


「ファイロ・ゲノミクスに申請したデータを確認。ちーのバストは日本人・高校生女子の平均を大きく上回っています。現状でも1■■cm、高校生の成長率を考慮すれば2年以内には切札を凌駕する可能性が三十五パーセント!」


「!」


 ぶるん、と湯船の上で千影の胸元が揺れた。


 成功!したい。


 女っ気のない義兄のところに現れた、

 まさかのダークホースはカードの美少女。


 思わぬ好敵手ライバルの登場だが――

 こっちはアナエルが刷られる前からずっと前から、

 義兄のことを一人の男性として見ていたのだ。


「アナエルさん。

 私の目の黒いうちは、お兄は渡さないからね」


「否定します。

 きれいな赤色ですが、ちーの瞳は」


「人間の慣用句、なのっ!」


 ふと、千影は気づく。


 せっかく二人きりなのだから――

 兄の前はしづらい話もしておこう。


「……アナエルさん、今のうちに言っておくね。アナエルさんが、またお兄と一緒に戦いたい、っていう話だけどさ」


 兄が話していた、錬成ユニゾン戦術。


 他所の構築はデフォで否定から入るタイプなので、

 つい色々言ってしまったけど……。


 実際は、練り込みさえすれば、

 十分に環境相手でも勝負を成立させられる余地はある。

 (まずはダインスレイフを抜くところからだけど!)


 でも――それが永遠に続けられるわけじゃない。



「カードゲームの環境は、常に変動するもの。苦手とするアーキタイプが環境に蔓延すれば、当然だけど通りは悪くなるし。もっと言えば、インフレに置いてかれて、カード性能が終わり散らかす可能性もある。今は、まだアナエルさんは戦えるかもしれない。言うて、リミ1を喰らうぐらいにはクソ強いカードなわけだし……それでも、いずれは、どう頑張っても環境に居場所が無くなる時が来るはず。これは、アナエルさんだけじゃなくって……全てのカードに言える、話……」



「肯定します。優しいですね、ちーは」


「ふえっ……?

 な、なにが?

 アナエルさん、話聞いてた?

 私、アナエルさんがオワコンになるって話してたのに」


「肯定します。

 切札に正直に話してくれました、そのことを。

 だから、優しいのです」


「そ、そうかな……?

 私、お兄以外で初めてそんなこと言われたかも」


「いつか、切札が戦えなくなる時が来る。

 もしかしたら、その時こそ……

 戻るときなのかもしれません」


「戻る、って……」



 相変わらずの無表情のままで、

 アナエルはすくっと湯船から出て立ち上がった。


 形の良い頭から長い脚まで、

 均整の取れた完璧な少女。


 ザイオンの生み出した破壊サイボーグ――

 アナエルは拳を握って、千影に言った。



「では、ちー。

 次は露天風呂に入りましょう!

 やはり露天風呂です、温泉と言ったら!」


「えぇー……。

 露天風呂って、暖まった分のアドと、

 外の寒さで凍えるディスアドを計算すると、

 どっちかっていうとアド損じゃない……?」


☆☆☆

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