第11話 環境最強デッキ選手権Sランク【アナエル神造】
【スピリットキャスターズNEXTにおける錬成について】
「神造」シリーズの興りは錬成サポートに遡る。
早速、錬成について解説しよう。
スピリットキャスターズNEXTの前身となった“カードゲームが出来る乙女ゲー”ことスピリットキャスターズでは、特定のスピリットやスペル、フィールドの効果によって「複数のスピリットをかけ合わせて新たなスピリットを錬成する」、錬成と呼ばれる召喚法がシステムの根幹にあった――
【人造神話】、
【英魂】、
【月光華】、
【錬金闘虫・仮相】、
【セプテントリオン】
【複製された人形劇】、etc、etc…
原作ユーザーにとっては人気の高い錬金関連のテーマだったが、紙のNEXTに導入するには困難なシステムとして知られていた。
中でも「同一の素材スピリットから異なるユニゾンスピリットを錬成できる」「錬成時には大量にある錬成候補から自由に錬成先を選択できる」というデジタルならではの自由度は、現物のカードという物理的制約をもったNEXTでは再現が難しい部分だったのである。
それでもユーザーからの錬成実装希望は根強く、
開発側も試行錯誤を重ねていたようだ。
(罪園CPの公式HPに掲載されている開発コラム『神なき大地の創世神話』を参照のこと)
そして、NEXTのサービス開始から3年――
3rd.Anniversaryパック『進撃のトライ・スピリット!』にて、ついに錬成の代名詞とも言える《神造人間ザイオンX》が実装されたのだ!
紙のカードゲームであるNEXTに錬成を落とし込むにあたり、新たにゲーム外領域であるアストラル・ゾーンが設定されることになった。
アストラル・ゾーンにはユニゾン・スピリットとダーク・スピリットしか置くことができず、錬成または特殊なカード効果によってしかアストラル・ゾーンからスピリットを召喚することはできない。
さて、鳴り物入りで実装された錬成戦術だったが――
当初は環境における目立った活躍は見られなかった。
活躍が振るわなかった理由はいくつかあるが、
・アストラル・ゾーンの枚数制限により、
強みであるはずの対応力の強さを発揮できなかった
・錬成素材の縛りが強く、デッキ構築の制限が多かった
・カード消費が激しい割には、
アドバンテージを得られる効果が少なかった
などが主な原因として挙げられている。
その後、アストラル・ゾーンの最大枚数が5枚から15枚に緩和されたこと、カードパワーのインフレに従って錬成素材の縛りが緩くなったこと、アドバンテージの損失を回復するサポートが多く刷られたことによって、錬成戦術を主軸にしたテーマも環境で多く見られるようになってきたのは周知の通りである。
【神造シリーズがテーマ化するまで】
当初の「神造」はシリーズカードであり、テーマでは無かった。
この「シリーズカード」と「テーマ」というのは公式用語ではなく、スピキャスwiki上での言い回しなのだが、現代では半公式用語化しているので使用させていただく。
「シリーズカード」
⇒類似した名称・効果を持つカードの一群
「テーマ」
⇒名称指定サポートにて指定されるカード名の括り
この定義に従うと、「神造」は以下のように変遷している。
第一期「神造」
《神造人間ザイオンX》と、
「神造○」と名のつくシリーズカード。
《神造人間ザイオンX》や錬成戦術をサポートする。
ユニゾン全般のカードパワーが低かったこともあり、目立った活躍は無かった。
第二期「神造」
「神造の~」と付いたシリーズカード。
コンストラクトカードでありながら、
特定の条件を満たしたときのみスピリット化する。
その性質上、スピリット除去を受けづらい。
コストパフォーマンスに優れる《神造の番犬 ケルベロス》については、グッドスタッフやコントロールデッキで多用されており、環境実績も多かった。
第三期「神造」
初の名称指定サポートカードである《神造核》が実装されて、正式にテーマ化した。
【人造神話】も同時に強化されたため、出張性能が拡大。
特にフィッシュ・スピリットを中心にした【フィッシュ軸Dステルス】にエクストラターン追加目的で《「人造神話」ク・リトル・マーメイド》の錬成パッケージが出張したことで、環境で猛威を振るう。
その後、《神造核》がリミテッド・ワンに指定されたことで他テーマとの共存が難しくなり、環境から姿を消した。
第四期「神造」
10周年記念ネクスト・ディケイドデッキ『神造の鼓動』の発売に伴い、
・《神造核》のリミテッド・ワン解除
・《次世代神造姫アナエル》の実装
により、アナエルをフル投入した【アナエル神造】がアーキタイプとして成立。
スピリットであるアナエル本体こそ《神造核》による踏み倒しに対応していないものの、《神造核》からサーチできる専用サポートである《チーム・レコンキスタの栄光》に加えて、無色エナジーで固めることで《ドラコニアの銅像》を採用できることが判明してからは、2ターン目にアナエルを召喚できる確率が大幅に上昇した。
「先2アナエル」は、
この環境における死刑宣告に等しい。
アナエルからアナエルをサーチすることにより、スピリット除去を事実上無効にできるだけではなく――アナエル自身がアナエルのコストを下げていくことにより、連鎖的にコストを軽減してカードを使用していくことができる。
通常、コスト軽減カードはコストを最低1までしか軽減できないように設定されているが、無色のエレメントを持つアナエルはコスト0にまで軽減できる――この事実を開発部が見落としていたことが、競技環境の崩壊に繋がったのは間違いない。
アナエルでコストを軽減して唱えられる「神造」カードの多くがコンストラクトであり、当時の環境で主流だったスピリット除去の多くを無効化できることも災いした。
デッキ成立後、初の大型大会であるグランプリ京都では、ベスト8のうち7名が【アナエル神造】を使用しており、さらに決勝戦はサイドデッキを除いたメインのデッキ構成が完全一致したパーフェクト・ミラーマッチとなっていたことで――この年のグランプリ京都は、後に悪名高き「アナエルの冬」と呼ばれることになる。
「アナエルの冬」により、プレイヤーからは「冬の女王」とニックネームを付けられたアナエルだが――なんと、グランプリ京都の二か月後にあった初の禁止制限改訂では【アナエル神造】からのリミテッド指定は無く、まさかの無傷。
これが――
SCPにとっての、
長い冬の始まりとなるのだった。
(続)




