第10話 義理義理ダンス
主良が話したこれまでのいきさつを、千影にも信じてもらうことができた。
これはアナエルの変身を目の当たりにしたおかげだろう。
「アナエル……さんの、事情はわかったから。
お兄、約束する。
お義父さんとママには、内緒にしたげる……」
「ありがとう、千影……!」
助かった。
家族の留守を良いことに女の子を自宅に連れ込んで同棲してたなんて知られたら、父さんに殺されるところだったかもしれない。
ましてや、千影が寮に入ったタイミングだったし。
「感謝します、妹」と、アナエルも言う。
千影は「その、妹ってやつだけど……」とこぼした。
「妹、妹、って連呼するの、やめてよ……」
「肯定します。では……ちー、と」
「ふえっ!?」
「マスターがそう呼んでいるのを聞きました」
主良はあわてて訂正した。
「いや、あれはつい、出ちゃっただけで……子供の頃の呼び名なんだ。千影もさ、もうそんな年齢じゃないだろう?」
「ん……いや、いいよ。ちー、で」
千影はふにゃ、と笑顔を作った。
「でも、アナエルさん限定……っ!
お兄はダメ、だから」
「肯定します。
マスターは、ちー禁止です」
そんなの……頼まれたって、恥ずかしいから呼ばないぞ。
ともあれ、二人が仲良くなれたなら良かった。
「ところで……。
随分とあっさり、協力してくれるんだな」
「ん……お兄に彼女が出来たわけじゃない、
っていうなら別に何でもいいし」
千影の物言いが、少し引っかかる。
「なんだよ、それ?
千影としては、
俺に彼女が出来ない方が良いってことか……?」
「あっ……!」
アナエルが「理解しました」と言って口を挟む。
「つまり、ちーもマスターにラブ、と」
「にゃああああっ!」
「ラブって……あのさ、アナエル。
千影は俺の妹だよ?」
「肯定します。ですが……」
「アナエルさん、そこまでええええ!!!
もう、ええでしょう!!!
彼氏彼女の事情の話は!!!
そんなことよりさぁ!!!
デッキ構築の話、しよーよ!!!
私たち、カードゲーマーでしょおおお!!!」
声がデカすぎる。
だけど、千影の言うことも最もだった。
一旦、アナエルが作ってくれたご飯を食べて。
主良たち三人は、カードに向き合い始める――
「――で。じゃ、お兄の構築理論を聞くよ。
わざわざリミ1のアナエルを採用した上で、
ちゃんとデッキとして勝ちを狙いに行くっていうなら、
それなりの案はあるんでしょ?」
千影はふてぶてしく腕を組んでリビングに座っていた。
カードゲームの話題になったので、千影は目を吊り上げて闇千影となっている。こうなった千影は、一切の手加減がない。ことカード性能の話については、妥協が無いことがわかっていた。
だからこそ、味方としては心強い……かも。
いや、そうでもないか?
ともかく……
アナエルがカードを揃えて、主良に渡す。
「準備しました。いけますか、マスター?」
「うん」
主良はアナエルと目線を交わし合った。
その表情は氷のように美しく張り付いているが――
きっと、
アナエルも不安だよな。
主良、動きます。
「まずは。
【神造】テーマにおける、
これまでの戦術の変遷についてから……」
こうして、カードの虎に対するプレゼンが始まった――




