第73話 エルフロって何?
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「少しだけ、私の知ってるあの迷宮の話をしよう」
アストラは静かに口を開いた。
「まず――入ると、どこかに飛ばされる」
「それは聞いています」
「だが、それだけじゃない」
指を一本立てる。
「内部にも〝転送トラップ〟が無数にある。
それが、あそこのコアの性質なんだ。
コアから漏れ出した魔素で、あの迷宮の近くでは、
ごく稀だけど、特殊な魔石が発見される事がある。
異世界から人を召喚するには、
その魔石が必要なんだ」
「……だから」
エルフィナが小さく呟く。
「シドニアだけが召喚出来るのね」
「そうなるね。私も魔石を手に入れて色々試したんだが、
召喚出来ても、
こちらから向こうに行くこ事は出来なかった」
「召喚を、してみたのですか?」
「小動物だけどね?
同意なく人を連れてくるわけには行かないからね?」
「そうですね……
で、こちらから向こうに行くこ事は出来なかった。
つまり……」
エルフィナがじっと見つめる。
「貴方達は、異世界に行きたかったと言うことですか?」
「まあ……ね……だから魔道具を使って、
コアを利用しようとして、暴走させてしまったんだ。
僕は、魔道具を作るのが得意でね。
ただ、いくら魔道具を作るのが得意だとは言え、
創造神の造ったコアを利用すると言うのは、
無理があった様だ。
……愚かにも僕は自分の力を過信していた……
装置を起動した瞬間――」
声がわずかに震える。
「〝穴〟が開いた……空間が裂けたんだ。
彼女は――吸い込まれる様に、落ちていった」
「……」
「穴は拡大し続けた。
この世界ごと、呑み込む勢いで……
私は……恐ろしくなって、慌てて魔道具を装置を止めた。
だが――間に合わなかった」
「…………」
「穴は塞がってしまったんだ」
エルフィナは言葉が出なかった。
「ああ……話が逸れたね?
戻すと……そう、あの迷宮……
ただ、迷宮という割に、中の道順はそこまで複雑じゃない。
最下層に行くと、私が開けた穴があり、
更に地下深くのコアの空間に行ける」
「転送のトラップか…… 」
エルフィナが考え込む。
「障壁張るとかして交わせないかしら?」
「残念ながらそれは無理だな。障壁ごと飛ばされるだけだよ?」
「う~ん……」
「これを使うと良い。君にあげよう」
差し出されるペンダント。 深紅の宝石。
「……綺麗……何ですかこれは?」
「トラップを無効化させる魔道具だよ」
「そんな事できるのですか?」
「魔道具を作るのが得意だって言っただろ?」
「本当に頂いても?」
「ああ、使ってくれ」
「あの……厚かましいのですが……
これは一つしかありませんか?」
「今はそれしかないよ。
二つ作ったんだけど……
一つは彼女が付けたまま居なくなった。
それは例の魔石から作ってあるんだよ?
魔石自体が極めて珍しい物なんだ。
外すまでは飛ばされないと思ったんだけどな……」
「異世界への穴には、効かなかったのですね?
一つしか無いんじゃ、1人で行くしかないか……」
「眷属なら連れて行けるじゃないか……
君の異空間に移して、
そして、いつでも召喚したら良い。
眷属ってそう言うもんでしょ?」
「そっか……その方法がありましたね……」
ーーーー
「そんな事があったのか……」
マックスが腕を組む。
「エルフィーは、神と話をしたって事か……」
「元、神だって言ってたけどね」
「で?どうだった?
初めてみる気がしないって言ってただろ?」
「ううん、初めて見る気がしないってのは、
確かにそうなんだけど……
何も分からなかったわ」
「コアが暴走か……なんか危ないな……
本当に行って大丈夫なのか?」
「心配しないで……必ず戻ってくるわよ。
そう確信してるもの……」
ーーーー
「これが例のコアね。誰か何か分かる?」
「「「………………」」」
「魔族領のコアと話ができたのでしょう?
同じ様に、コアに触れて、話しかけてみたらどうでしょう?」
1m程あるコア。魔族領のコアと違って曇っている。
「こう?」
優しくハグするエルフィナ。
「怖がらなくて良いのよ……あれは3年も前の事……
もう大丈夫だから安心して……」
〝……トクン〟
コアが、微かに反応する。
濁りが、少しずつ晴れていく。
「覚えてる?ジュリアナと言う女神がどこに飛ばされたのか?
私をそこに連れて行ってほしいのだけど……」
「エ……エルフロ……様……」
「またそれ?エルフロって何?私はエルフィナよ?」
「あ……貴方の魔力は……とても暖かい……
創造神様によく似ている……」
「私の魔力は創造神様と似ているの?不思議ね?」
「別に不思議ではありません……
そう……ジュリアナ様でしたね……
探ってみます……」
コア内部の光が回転する。
「…………」
沈黙が流れる……
「見つからない?困ったわね……」
「あ……もしや……異次元と言うより、
次元の狭間に、閉じ込められておられるかもです。
そこにジュリアナ様の聖魔力の気配が……」
「私をそこに飛ばせるかしら?」
「危険です。私は、異次元に飛ばす事は出来ますが、
戻す力はありません。
ジュリアナ様も戻れない様ですし、いくら貴方様でも……」
「それでも……」
エルフィナが、静かに笑う。
「私、大丈夫な気がするの……根拠は無いんだけどね?
歯痒くもあるんだけど、いつもこんな感じよ?」
「貴方様なら……それも可能?
確かに以前より遥かに魔力が高まっておられる様ですが?」
「以前?前に会った事ないはずだけど?」
「…………」
「よく分からないけど、やってみてくれない?お願いよ」
「承知致しました」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




