第70話 お前を抹殺する魔道具だよ
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「まだまだ、こんなもんじゃないんだけど……」
「嘘だろ?これ以上スピードを上げられたら、
流石に、ついていけねえぞ……」
肩で息をしながらも、マックスは笑う。
「仕方ねえ……だったら、俺にやれる事はただ一つ……
最後に、師匠直伝の抜刀術……」
「マックス、貴方、師匠がいたの?初耳なんだけど……」
「まあな……実は、スカイが、俺の師匠なんだよ……
可愛い姿に、つい騙されるけど、
あいつ、〝龍神〟てだけあって、
めちゃくちゃ強いんだよ?」
「知ってるわよ……
強いって言えば……まあそうなんだろうけど……
師匠?いつのまに……」
「迷宮でな。
お前が、ついていく様に、言ってくれたんだろ?
あの時、一撃必殺ってのを、教えてもらったんだよ。
俺の渾身の一撃、受けてみるか?」
「うん、やってみて?楽しみだわ。
一撃必殺って言うのなら、
避けずに剣を合わせてあげるわ」
ゆっくりと、剣を腰へ。
呼吸が止まる。周りの空気が凍る。
〝ズ……〟
マックスの重心が沈む……筋肉が鳴る。
そして…… 地面が軋む。
「――――ッッッ!!イヤァ~~!!」
一閃。 空気が裂けた。
〝ドンッッッ!!!!〟
音が遅れて追いかけてくる。
斬撃は〝線〟ではない。
空間そのものを切り裂く〝面〟だった。
〝ガァァァァァン!!!!〟
衝撃波が闘技場を揺らす。
観客席の旗が吹き飛ぶ。
「……はは……」
マックスの手が震える。
「……最も簡単に止められたか……」
自分の剣に視線を落とす。
「……おいおい……マジかよ……」
刃が――縦に割れていた。
「二枚刃になっちまった……俺の負けだ……
参ったよ……ここまで完璧に受けられるとはな……」
「勝者、エルフィナ・スタンリー!」
「「「「「「「「ワァァァァァ~~~~!!!!」」」」」」」」
歓声が爆発する。
「良い一撃だったわよ?お疲れ様マックス」
「これより一旦休憩を挟み、
シドニア王国、勇者ジュン殿と、
エスティア王国王立学園、
武道大会優勝者ーー
エルフィナ・スタンリーとの特別試合を行う」
「あの……休憩は必要ありません。すぐ始めて下さい」
「今、決勝戦が終わったばかり。
少し休まなくて良いのか?エルフィナ嬢」
「はい、面倒事は、早く終わらせたいので……」
「面倒事……勇者殿も、それで宜しい……
あれ?勇者殿?何方へ?」
今迄、貴賓観覧席の、ど真ん中に居たはずの、
勇者の姿がどこにも見えなくなっていた。
「あ……あの……勇者、ジュン様は、
お腹が痛くなったそうで……
残念ですが、体調不良で……
今回の手合わせは無し……という事で……」
「「「「「「「「は?」」」」」」」」
「ハハハ……逃げちゃったんだ?良かった……」
エルフィナがため息をつく。
「マックスとの手合わせの後で、
つまらない試合したくないもの……」
「エルフィー……お前……辛辣だな……」
「クッククッ……」
「フォホホホ……」
国王と学園長が、
ほくそ笑んでいたのは、言うまでもない。
「ウギギギ……バカ勇者が……
あんなに自信満々だったのに……」
苦虫を噛み締めている者も2人……
ーーーー
数日後ーー王城。
「マックス、何を騒いでいるの?」
「広い方の玉座の間に、変なものが生えてきたんだよ」
「変なもの?生えてきた?嘘、何それ面白そう……」
「1m位の木の幹の様な物の上に、
30cm程の透明な球が、ガッチリ嵌っていてな……
何しても、幹どころか、
乗っかってる球も、全く動かせないんだよ」
「益々面白そう……」
「面白いもんかよ。禍々しくてヤバそうだぞ?
爆発でもしたら、城が崩れて大変な事になる」
「爆発しそうな感じなの?」
「さあな?全く分からないから、警戒してるんだよ」
「だったら私が、その周りに、結界貼った方が良くない?」
「おお!そうだな。頼むわ」
「これがそう?」
異様だった。
そこに有るだけで空気が淀む。視界が歪む。
「本当だ……気味が悪いわね?
消しちゃった方が良いかも?」
「災いをもたらす物ってのは、間違いなさそうだからな……
少し調べたい気もするが…… 消せるか?」
「そうよね?じゃあ……〝消えてなくなれ!〟」
〝ピィン……〟
球が赤く光る。
「……あれ?魔法が効かない……〝消えろ!〟……だめね?」
「見たか?エルフィーが、魔法を放つ度に、
球が赤く光ってなかったか?」
「無駄だ」
底のない闇のような冷たい声。
「……それに、お前の魔法は効かんぞ」
「えっ……何?今の声、聞こえた?マックス……」
「ああ、聞こえた……底冷えのする様な声だったな……
どこだ?どこに居る?」
「何なの?姿を表しなさいよ!」
「お望みならば……」
空間が歪む。
〝ズ……〟
6つの影が浮かぶ。
空中に袈裟の様なものを着た男が6人……
同時に、この場の空間が大きく広がった。
「あれ?マックスがあんなに遠くに……
て言うか、ここの空間が、広がってない?」
「こう狭くては、お前と存分に遊べないからな?
結界を張り、空間を広げてやったんだよ」
「貴方達は誰?この奇妙な物は何なの?」
「それは、お前を抹殺する魔道具……
エルフィナ……だったかな?今は……」
「〝今は〟?何? 狙いは私?だったら何故お城に?」
「お前の家は、お前の聖魔力残留があって、
設置し難いんだよ。反応してしまうからな……
それに、ここに出現させれば、お前は、必ず出て来るだろ?」
「私を、抹殺するって、爆発でもするの?
私は結界を貼っているから、
そうそう死なないと思うわよ?」
「それは、お前の魔力に特化した魔道具だ。
見ただろ?お前の魔力を吸収したところを。
お前の、その聖魔力のみに、反応する様に出来ているんだよ。
お前の魔力が、全て吸い取られ、枯渇した時……
我らによって、お前は抹殺される」
「魔力が使えなくても、
貴方達にやられるとは思わないんだけど?」
「そのドレス姿でか?しかも丸腰で?笑わせるな」
「丸腰?剣はここにいるわよ?ね、レピちゃん」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




