第67話 迷宮のコア
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「本当に創造神様が創ったの?ここ……」
(済まんの?我が愛子、エルフィナよ)
その声は静かだった。
(ある目的で、お前達が、
迷宮と呼んでいるものを造ったのはわしじゃ……
但し、迷宮のシステムや性質、出てくる物は、
わしの手によるものではないのじゃ……
ここは、人類の剣士が、レベル100に到達すると、
それをコピーして、ボスに仕立てるシステムの様じゃ。
エルフィナ、お前は、疾うに100に達したのじゃろ?
100になったその時に、コピーされた様じゃな?)
「ねえ、アカシック。
今までレベル100に達した剣士は、あの3人だけなの?」
「そうですねエルフィナ様を除けば、
剣神と呼ばれたあの3人だけです」
「これ以上は増えない訳か……
私もいるのに勝てるかな……」
(勝てるぞ?自分相手に戦いにくいとは思うが……
自分を信じなさい)
(仰るほど簡単ではないと思いますが……
創造神様は、何故、この世界に迷宮を創られたのですか)
(疑問に思うのは当然じゃな?
詳しくは改めて説明しよう。
今は戦いに集中するんじゃ)
エルフィナは静かに剣を握る。
「いくわよ!」
そう言って、飛び出すエルフィナ。
次の瞬間、エルフィナの姿は消えた。
1人の剣神と剣が交差し、大きな火花が飛び散る。
〝キン!キン!ガキッ!キン!キン!キン!〝
金属音が爆ぜる。
あまりの速さに、
剣が交わる音と、交差する閃光しか、
周りの者には認識出来なくなる。
〝キン!キン!ガギィッ!!〟
〝ギンッ!ガンッ!キィィン!!〟
まるで速度が違う。重さが違う。
次元が違った。
剣神の斬撃が置いていかれる。
全てが一拍、遅かった。
〝ザンッ――!!〟
一閃。
剣神が消滅する。
そして……
〝ザンッ!!〟
二人目、崩壊。
「後は貴方だけね?」
〝ガキィン……ザンッ!!〟
三人目、霧散。
「お嬢……剣神3人を秒殺?我達の出る幕は無し?」
「あっ、そうか……
剣神と言ったって……レベルは100……
エルフィナは、150に達しようとしてる……
敵じゃないって事か?」
「だとすりゃ、問題は……」
全員の視線が残る1人に向く。
――もう一人のエルフィナ。
「いや……相手にならないだろう……
エルフィナの圧勝だろ?」
「何故だ?アカシック?
あれはお嬢のコピーだぞ?お嬢同等の力だろ?」
「同等じゃないよ……
あっちはレベル100になった時のエルフィナ……
創造神様が言ってたろ?
100に達した時に、コピーが作られるって」
「ああ……そうか……確かにそうだな……
戦う前から、勝負は決まってるって事か……」
エルフィナが、歩く。
コピーも、動く。
コピーのエルフィナが剣に手を掛ける。
だが――
〝ザンッ〟
抜くより早く。コピーは、一太刀で斬られていた。
コピーは、静かに崩れる。そして消滅した。
勝利……のはずだった。
「……っ」
〝ドサッ〟
膝が落ちる。
「お嬢!?」
「うぇ……」
吐いた……胃の中を、全部。
「だ、大丈夫か!?」
「だい……じょうぶ……」
下を向いたまま答える。
「……ただ」
震える声。
「……自分を斬るって…… 気持ち悪い……」
「……」
「……無理もない。自分と闘わせるとか悪趣味だな……」
スカイが低く呟く。
「精神にくるタイプの試練だな……これは」
「でも……」
エルフィナ、息を整える。
「私も悪趣味……って言ったけど……
私と私を闘わせようとした訳じゃない……
と思うわよ……
どう考えても、たまたまだもの……」
「苦戦を予想したが、楽勝だったな?」
「レベル100になった時のコピーみたいね。
私に連動してレベルが上がる……
なんてのじゃなくてよかったわ」
ーーその時。
〝ズズズズズzzzzzz!!!!〝
空間が揺れた。
白銀の光。
渦を巻く、結晶体。
ドームの口がまた開くと同時に、
中心部分に迷宮のコアが浮き出て来た。
「これで終わりよね?
迷宮の外壁の回転も止まった様よ?
出て来たあれは何?
すごく綺麗……もしかして迷宮のコア?」
光が、生きているように脈打つ。
まるで意思を持つかのように……
「スカイやチッチの所もあんな感じ?」
「いやコアは、最終層よりも更に奥深くにあるらしく、
見た事はないな」
「私も同じですね……
エルフィナ様が来た時に見つけた、
割れたコアは、私が作ったダミーです。
こうやって本物を見ると随分違いますね?
輝く白銀の模様が、渦を巻いている……
何故ここの迷宮のコアだけ、出て来たのでしょう?」
(それ以外は、全部地下深く沈めて、
上に出てくる様な構造には、なっていないんじゃよ)
「創造神様ですか?」
(先ほどの事も含め、少し長くはなるが、説明しようかの……
ここは、わしが造った原初の宇宙。
第1宇宙と呼ばれている。
12ある宇宙は、ここから始まった……
12の宇宙は、それぞれ別の神々が収めておる。
そして第1宇宙の始まりは、この星からなんじゃよ。
つまり、この星は、全ての宇宙の始まりなんじゃ……)
創造神の説明は続く。
(宇宙自体は、回転させる事で、安定させておる。
次の星、次の星……と、造っていく中で、
遠心力……分かるかの?
縄に石を付けてぐるぐる回す。
手を離すと遠くに飛んでいくじゃろ?
それが遠心力。
その、遠心力があるが為に、
回転させると、星が離れていってしまうんじゃ。
それを最初の星……つまり、ここに、
わしの聖魔力を込めた8つの魔石……
お前達はコアと呼んでおるが、
それをバランス良く配置し、
それぞれを連動させ、星々を引き付けておったんじゃ。
10億年掛けて宇宙が完成し、求心力が遠心力と釣り合う迄……
求心力は分かるかの?
水を回転させると中心に向かって、
渦のように吸い込まれていくじゃろ?
それが求心力。
この2つの力が、釣り合うようになって、
役目を終えた時に、必要なくなったコアを止めるために、
ここのコアだけは、上まで出て来る様にしてあったんじゃ)
「……スイッチ……」
「そうじゃ……つまりスイッチの役目をさせておったんじゃな。
稼働は止めたんじゃが、コアには聖魔力が残っておってな……
そのコアが、長い年月を掛け、迷宮を造ったわけじゃ。
人間が街や国を作った様にな。
コア自体もわしが造った物じゃから、人と同じく感情を持ち、
それぞれ個性がある。
個性がある為、迷宮によって、色々多様な物ができたんじゃな)
(では、ここだけ迷宮が制覇されると、
コアが出て来る様にしたのは、なぜですか?)
(うむ……その様な構造にした覚えはないんじゃが?)
「お嬢、そのコアは、お嬢に会いたかった様だぞ?」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




