第65話 これは人じゃありませんよ?
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「あっ、いたいた。
エルフィナ様、いらっしゃいましたね」
「お嬢……」
スカイが呆れた声を出す。
「何のんきに飯食ってるんだ?」
「遅いわよ~皆んな~」
もぐもぐ。
広げられた布の上には、色とりどりの弁当。
完全にピクニック。
「皆んなを待つ間、暇だから、お弁当食べてたのよ。
お腹空いてきたし……皆んなも食べれば?
もぐもぐタイムしましょ?」
「遅くてもしょうがないだろ?
この階段1kmぐらい降ってたぞ?
お嬢、まさかここまで転がったのか?」
「ホホホ……下まで、転がって行った方が楽かなって……
球体の結界張って、コロコロコロ~って転がって……
でも目が回って……気持ち悪くなっちゃった」
「気持ち悪くなったのに弁当か?何だかな……
で、その突き当たりの右が開いてるが、
そこが次のブロックの入り口なのか?」
スカイが奥を指す。
「ブッブ~残念!見てみなさいよ?」
指を振る。
「だ~!今度は登りが続くのか~!」
「ねえスカイ?この階段広いから、
ドラゴンになって乗せてってよ~」
「ドラゴンになって飛べるほど広かないだろ?
それより、お嬢が、チッチを抱っこして、
我をおぶって飛んでくれよ?
お嬢なら、それ位余裕だろ?」
「お~その手があったか……」
「いや、誰もが思いつくと思うが……
むしろ何故ドラゴンで飛ぼうと思った?」
「両側切り立った岩山ね」
岩山に挟まれた尾根。
風が強い。
空気が乾いている。
「やっと上まで来れたわね……
ほんと長いわ……この階段……」
「あそこからだと、次のブロック迄、
かなり距離があったからな?
この位長くて当然かもな」
「あれ?」
エルフィナが首を傾げる。
「レピちゃんは?」
「……」
「階段落ちる時、入り口で落としたかも?
ちょっと取ってくるわね」
忽然と消えるエルフィナ。
「……は?」
――数秒後。
「ただいま~」
「……」
「ありました~」
「……」
「最初のダミーの岩の所で、
レピちゃん落としちゃったみたい……
ごめんねレピちゃん」
「……」
「……何よ?」
「お嬢、今どうやって取って来た?」
「見てたでしょ?
空間移動に決まってるじゃ……あっ……」
「〝あっ〟……じゃないだろ?
最初からそれで移動すれば良かったじゃないか……
こっち側も見えてたんだから、
それで来れたんじゃないか……」
「テヘペロ」
「〝テヘペロ〟じゃない……って、危ない!」
岩山の上から、矢がエルフィナ目掛けて飛んできた。
ピタッ。
エルフィナの指先で、止まる。
次の瞬間。
――雨。
数百。いや、それ以上。
矢が〝降った〟
――ガキンッッ!!
エルフィナの結界が展開。
透明な壁に、無数の矢が突き刺さる。
見上げると両側の岩山の上に、
黒い波の様に大勢の人影が現れていた。
「ちょっと、あれ人じゃない?
誰も入ったことの無いはずの迷宮に人?
人よね?ここ魔族領よ?それも500人位居ない?」
「500人どころじゃありませんよ?
岩山の向こうには……数千人の反応があります」
「数千人って……それはもう軍隊じゃない?
何でこんな所に?いったいどこの国の?」
エルフィナの表情が曇る。
「これ以上先に進むには無理ね……
だってこの人達を全滅させないとでしょ?
いきなり襲われたとは言え、
人を殺めるのは……」
「お嬢、諦めるのはまだ早いぞ?
空間移動で、1人連れて来て問いただそう。
状況が全く掴めないのだから、情報収集が先じゃないか?」
「うん、それもそうね。分かった」
――転移。
ガッ。
一体を強制連行。
「貴方達どこの国の人?
何故いきなり攻撃を仕掛けて来たの?」
何を聞いても、
〝カタカタ〟不規則に身体を揺らすだけで、何も答えない。
瞳の方向が、左右バラバラで、
いっちゃった目をしている。
「何なのこの人?気味悪いわ……」
「エルフィナ様、これは人じゃありませんよ?
生命反応を感じません」
「チッチ?何それ?どう言う事?」
「確かに人じゃありませんね?」
「アカシック、何かわかるの?」
「最初のブロックから変でした。巨大な爬虫類……
次のブロックは、色んな魔物が、徒党を組んで……
今度は、見た目、人としか思えない敵……
でも人じゃない……動くけど生きてもいない……
これは多分……全てゴーレムですね?」
「ゴーレム?え……ゴーレムってこんなリアルなの?」
「はい、動く精巧な人形……そんなものですね」
「ねえ、スカイ。それ破壊しちゃってよ?」
「我がか?人にしか見えんものを、殺るのはいささか……
まあ、人であるお嬢は、もっと嫌か……」
「私にお任せ下さい」
「チッチ?」
「はい、人形であれば……これをこうして……
ああ、本当ですね?分解できます」
手足、そして頭……バラバラに分解されて、
それでもカタカタ動いていた。
「ああ、なるほどな?うんじゃあこれで……」
そう言うとスカイがゴーレムの核を抜き手で正確に1突き。
動きを止めたゴーレムは、霧の様になって消えた。
後には魔石が一つ。
それも直ぐにエルフィナの巾着に消える。
「人形だって分かれば……何千いようが私が殲滅してくるわ」
エルフィナが一歩前へ出る。
「全部、片付けてくるわ」
――結界展開。
虹色の球体。
シャボン玉のように輝く防壁。
飛んでくる矢……そして魔法。
全てなんなく弾く。
エルフィナはゆっくりと敵陣の中心へ歩く。
そして……
静かに両手を開くと、
今度は何かを掴む様に胸の前に持ってくる。
20cm程開いた両手の間から、小さな輝く球が生まれる。
一つ……二つ……ポン……ポン……ポンポンポン……
増える。 増える。 増える。
やがて――
空間が光で満たされる。
「……綺麗」
誰かが呟いた。
そして。
エルフィナが、囁く。
「――行け」
瞬間光が解き放たれる。
弾丸……いや、意思を持つ光。
それがジグザグに加速。跳躍。分裂。
狙いは一点。ゴーレムの核。
次々に光りが貫いていく。
パシュッ。パシュッ。パシュッ。
命中した瞬間ゴーレムは霧のように消滅していく。
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