第64話 エルフィナがいっぱい
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「エレーナとチッチの言う通り、
本当に入り口があったわね」
鬱蒼と茂った草の奥にぽっかりと開いた通路。
その先は――明らかに空気が違っていた。
そこは灰色の世界。
岩、岩、岩。
乾いた風。
生命の気配は、ほぼ〝ゼロ〟
「やっと次のブロックに進めたな?」
スカイが低く唸る。
「それにしても、ここはなんだか殺伐としているな。
殆どが岩場で、植物が、全然無いからか?
お?何だ?何だ? うわ~魔物が出てきたぞ?」
――ゾロ……ゾロ……ゾロ……
地平の向こうから。
黒い波のように、何かが〝溢れ出してきた〟
「コボルト、ゴブリン、オーガ……オークもか……」
その数。
視界を埋め尽くす。
「何で一度にこれ程まで大量に出てくるの?
……何千?もしかして何万?」
「さあな?愚痴言ってても始まらない。
どんだけ出ようと、行くしかないだろ?
全部叩き潰すだけだ」
「ちょっと待って。面倒だから、
白夜のファイアーで全滅させるわ」
さらっと言う。
「何だその〝白夜のファイアー〟ってのは?」
「前に、突然現れたG目掛けてファイアーしたら、
朝まで白夜が続いたのよ?
〝謎の白夜〟って言われたそうよ?」
「〝白夜の謎〟だろ?って、待て待て待て!
そんなの撃ったら迷宮が破壊される!
全員生き埋めだぞ?普通に倒していこう」
「それもそうか……あ~面倒……
私が10人いたら良いのに……」
ぽつりと言う。
――その瞬間。
空気が、歪んだ。
〝スゥ……〟
エルフィナの両脇に――
〝エルフィナ〟が現れる。
「あっ……あれ?」
さらに。
〝スゥ……〟〝スゥ……〟〝スゥ……〟
増える。
増える。
「な……何だこれぇぇぇぇ!?
お嬢が10人になった~」
「きゃ~!」
本体が一番驚く。
「私がいっぱい!!言ってみるもんね?」
「〝言ってみるもんね?〟で、
出来るもんでもないだろ……
まあ、これで、お嬢並みに強ければ、助かるんだが?」
「さあ?ねえ、そこの私、貴方強いかしら?」
〝コテッ……〟
横に首を傾げるエルフィナNo2。
「…………」
「話せないみたいね?
私と全く同じ能力じゃないなら、強くないのかも?
まあ、やってみるしかないわね?
もう魔物は目前まで来てるし、
試してる時間は無いわ」
「それじゃあ、行くわよ~!」
「「「「行くわよ~!」」」」
「喋ったぁぁぁぁ!?」
目が輝く。
「喋れるんじゃない……だったらもしかして……
私~!皆んな更にそれぞれ10人になって~!」
「「「「「「「「10人になるわよ〜!」」」」」」」」
「どわ~!これ……もしや、お嬢が100人?」
――爆増。
視界が〝エルフィナ〟で埋まる。
「よっしゃ~!いくわよ~!」
「「「「「「「「お~~~〜!!」」」」」」」」
ーー開戦。
100の軌道に100の斬撃……100の加速。
敵が認識する前に、首が飛ぶ。
胴が裂ける。
核が砕ける。
――1分。
それだけで。
数千の魔物は、その存在が消えた。
「凄~い!皆んな強いじゃない!
あっという間に片付いたわね?
小物ばっかりだったとは言え、凄い凄〜い!」
「でかいゴブリンとかオーガも混ざってたぞ?
上位種で、キングとか言われてるのも……」
「キング?そうだった?確かに大きいのも居たかも?
でも動き遅いから、どんなに大きくたって一緒よ?」
「……普通は一緒じゃないがな……
それにしても、お嬢が100人とか……
一体何人迄増やせるんだ?」
「さあ?どうなんだろ?」
「増やしたら、
力が1/100とかになったりしないかと、
心配したが……」
「魔力量は半減した感じがしたけど、
スピードとか力は変わらなかったわね」
「それってもう、エルフィナが、
この世界を支配したも同然じゃないか?」
「大袈裟ね……ってか、支配なんて絶対無理……」
(我が愛子よ……その技は危険じゃよ?
あまり使わん方が良い)
(……創造神様?)
(分身はそれぞれが〝同一〟じゃよ?
1人が致命的なダメージを負った時、
全部がダメージを負うんじゃ。
とても危うい技なんじゃよ?……)
(そ……そうなんですか?それは……危険ですね?
理解しました。ご忠告ありがとうございます。
あの……ここの迷宮も創造神様が?)
答えは返ってこなかった。
「危うい技なのか……残念だな。1人位……」
「えっ?1人位? 何?」
「最近、お嬢が、留守が多くて、
マックスが、寂しがってたから……な?」
「いやよ、別の私を、マックスにあてがうみたいな事……」
「同じお嬢じゃないのか?」
「私は私。さっきも、
別の私の感覚は、分からなかったもの。
あれは私であって私じゃないの。だからやだ」
「確かに、100人の感覚が、同時並行でお嬢に入ってきたら、
精神が、おかしくなるかもな?
この技は、マックスには秘密だな」
「マックスだって、欲しがらないわよ……多分……
でも、絶体絶命!って時には、すごく有効かも?
創造神様も、〝あまり〟って仰ってたから、
〝絶対〟じゃないわよね?」
「それじゃあ、次のブロックね。
どこが入り口なんだろ?」
「草木が殆どないから、上から見てみるか?
なんかわかるんじゃね?」
「何もそれらしい物は見当たらなかった……
どうなってるんだ?」
「任せて、今度は私が、探知してみるわ……」
「う~ん……入って来たところしか穴はないわね?
チッチもやってみて」
「私もさっきから試みているのですが……
怪しい所が見つかりません……」
「ママ、私わかるよ?……
ほんの少しだけど魔力を感じる場所があるの」
「え?ほんと?どこどこ?」
「すぐそこよ? え……と……そこの小さな岩山の後ろ」
「ここ?入って来たとこの直ぐ側なのに次の入り口?
普通、こんな近くに入り口2つもつくんなくない?
あっ……確かに何か……でも大きな岩しかないけど……」
岩を確かめようとした瞬間ーー
〝ガクン……〟
「キャ~~~~~~~~!」
「エルフィナ様が、岩の中に消えた!」
「ん?この岩、何だか変だぞ?
触れようと手を伸ばすと、
岩があるはずなのに、何にも触れない」
顔を岩に付けてみるスカイ。
「あっ、ここ何もないぞ?
岩がある様に見せてる映像みたいなものだ……
〝幻影〟ってやつだな……中は広い階段がある」
「また階段?エルフィナ様は?」
「どこにも見えんな?相当深いぞこの階段。
下まで転がったかも……我らも行ってみるしかないな」
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