第63話 戦闘狂?
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「いってぇ……!」
地面に転がりながらスカイが顔をしかめる。
「悪い、あれトラップだったな……
お嬢、大丈夫か?」
「いたたた……」
体を起こしながら首を傾げる。
「……体の結界効かなかったな……
敵意のある攻撃に絞ってたからね……」
自分の身体をぺたぺた触る。
「怪我はないみたいよ。スカイ。
不慮の事故にも対応できるよう更に改良が必要ね」
「我らにも張れるようしてくれよ?」
「形態が変わるたびに解けちゃうのよね……
工夫してみるわね」
「あっ……お嬢……尻が見えておるぞ?」
「えっ?きゃ~!
擦れてボロボロになっちゃったんだ~
これからは服にも結界張っとかなくっちゃ……
着替え着替え……
スカイ、あんた見たわね?」
「なかなか可愛い尻だったぞ」
「何よあんた、人間の女の子には、
興味なかったんじゃない?」
「汚い尻だったとは言えんだろ?」
「汚くないわよ!マックスには内緒よ?」
「承知した」
「なんか悪い顔になってない?
あれ?よく見たら……何よこれ?
結局また同じとこ?」
眉をひそめる。
「いやよく見ろ、お嬢」
スカイが周囲を見渡す。
「地形は同じ様だが、
木がさっきより小ぶりで、数も少ない……」
「どういうこと?全く訳わかんない……」
「ちょっと待て。皆んな隠れろ!」
ズシン……ズシン…… 遠くの森が揺れる。
「何だあれ?龍?あんなの見たことないぞ?」
エルフィナが目を凝らす。
「違う……羽がない……巨大な爬虫類?
あれって図鑑で見る古代生物?恐竜?
まさか私達タイムスリップしたとか……
あっ、こっち見た!目が合っちゃった!」
地面を揺らしながら突進してくる巨体。
「キャーーー来たーーー!!」
「巨大生物って言うなら、
我の出番だろ?ここは我に任せろ」
「ちょっと……スカイ、劣勢じゃない?
流石にあの数は厳しいのかしら?」
「いえ、そんな事はないはずなんですがね?
龍神ですよ?
最も神に近いとされている生き物ですから……」
「一対一ならそうなんだろうけど、
相手は20頭ぐらいいるわよ?
しかも後から来た半分は、
龍に似た羽があって空飛んでるし……」
「エルフィナ様、2m位のが2足歩行で、
ゾロゾロ此方に向かって来ましたよ?
100匹近くいるんじゃないですか?凄いスピードだ……」
「ここは私もリッチーに戻り……」
「待って!私がやる!行くわよレピちゃん!」
そう言うと、体をクルクル回転させながら、
風を裂きながら敵の中に飛び込む。
エルフィナの通過した軌道上。
〝時間差で〟崩れ落ちる巨体。
その斬撃は――音すら置き去りにしていた。
〝スタンスタンスタン!〟
今度はバッタの様にピョンピョン飛び跳ねながら、
敵の頭上を蹴り――
首を断つ。
胴を裂く。
核を貫く。
その速度。
その精度。
見ている者の声を奪った。
そして……エルフィナはーー笑っていた。
完全に〝遊んでいる〟
あっという間に小型恐竜を殲滅し戻ってきた。
息一つきれていない。
「あっ、スカイさん落ちてきましたよ?」
〝ドッス~ン!〟
「いててて……」
「スカイ、苦戦してる?そっち手伝おうか?」
「久しぶりに大型との戦いだから、
魔法を使わず楽しんでただけだ」
――口を開く。
魔力が収束する。
空気が震える。
「ブレス!?」
ぐるりと一周回りしながら、それを吐き出す。
360度。
――一掃。
空にいた群れが、消えた。
「な?魔法も合わせればこんなもんだ……」
〝パチパチパチパチ……〟
「やるわねスカイ」
そこからは一方的。
次から次へと、鋭い爪で急所の首を両断。
「スカイったら、あの大きな身体で何で、
あんなに早く動けるのかしらね?」
「大っきいのも小さいのも片付きましたね?」
「お嬢、戦闘狂だったのな?」
「?何で?」
きょとん。
「闘いながら横目で見ていたぞ?
嬉々として戦ってたじゃないか?」
「生物を殺すのはや~よ?」
「さっきの爬虫類みたいなのも、生物じゃないか?」
「あれね……魔石出してたから、
古代生物じゃないわよ?多分魔物ね」
「そうか?どこにも魔石など落ちていなかったが?」
「ギルマスに貰った、
この巾着に自動で入ってくのよ?
便利でしょ?」
「我が倒した奴からは、
魔石は出てないんじゃないか?」
「貴方、私の眷属だから、
貴方が倒した分もここに入ってるわよ?」
「ちょっと上空から、ここの様子を見てくる。
空で戦っている時、気になる事があったんでな」
「気になる事?」
「ああ、この迷宮、流石に広すぎる……そう思わないか?
最初、地上と見間違えた程だろ?
こんなのが、地下にあって、崩れない方がおかしい」
そう言うとスカイは空に飛び立った。
〝ドッゴ~~ン!!〟
凄まじい音を残してスカイが、落ちてきた。
「お~いて~」
「大丈夫?どうしたの?戻るの案外早かったわね?
ってか、落ちてきたし……」
頭を押さえながら言う。
「ここは見た目程広くないぞ。遠くの空や山はダミーで、
永遠に続く様に見せかけて、実は壁があった。
周りは円柱状になってるみたいだ。
しかも幾つかのブロックに分かれていて、
透明な何かで仕切られている……お陰で頭をぶつけた……」
「全体が円柱形って事?結界で区切られてる?」
「あれは結界じゃなくて、強固なガラスみたいな、
物理的な物じゃないかな?
上も200m位で天井が有るぞ?
地上の空がリアルタイムで映し出されている感じだな?」
「行ってみるしかないわね?右は急な山だから左から?」
「ああ、それが良いだろう」
「どれ位行ったら壁なの?」
「広くないとは言ったが、それでも3km位あるな……
しかも人の通れる所は決まってる様だぞ?
岩山や湖、崖なんかあって、動線が限られてる様に見えた。
もう一度上から大体のコースを確認してくる」
「ここら辺が、最初の壁だと思うぞ」
「実際に地上部分は、木や草が、
バリケードみたいになってるわね?
無理矢理こじ開ける?」
「いや、そうしても結局壁にあたるな……」
「壁にあたったらレピちゃんで切るわよ?」
「我がたんこぶ作る位、
激しく当たってもびくともしなかったぞ?
切れたとしても、その為に構造が壊れて崩れてもまずいだろ?
お嬢ならやりかねん……」
「じゃ、どうするの?」
「普通、迷宮ってのは、扉や何やらで、
ちゃんと先に進めるもんだぞ?
それを探す方が確実だ」
「又、エレーナとリッチの出番かしら?」
「はい、お任せください。
実は既に怪しい所を見つけております。
中心に向かって800m程行った所に透視……
と言うより索敵ですが……
魔力が跳ね返らない壁があります」
「あそこ?もうエレーナが行ってるみたいだけど?
おいでおいでしてるわよ?」
「は、早っ!」
「あっ、本当ね。ここだけ索敵の魔力が跳ね返らないわね?
ちょっと、周りの草刈って進みましょう」
「エルフィナ様も索敵使えるのですか?」
「チッチの真似して魔力を出したら出来たみたい……」
「私の存在価値が……」
そんな事ないわよ?
チッチがいたから、ここまで来れたんだから」
「お嬢、最近チッチに優しくないか?」
「だって、マント黒猫可愛いんだもん……」
〝ツンツン〟
「あっ、エレーナもね!ありがと」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




