第62話 友達だけどね
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「じゃあね。サミーちゃん」
〝ひらっ〟と手を振るエルフィナ。
「帰りにまた寄るのであろ?」
どこか名残惜しそうな声。
「ううん、寄れないと思うわ。
私、学園の休みが、もう残り少ないのよ。
用事が済んだら、
急いで転移で戻らなきゃいけないから……
サミーちゃんにもまた会いたいし、
ここも見て回りたいから、
また日を改めて尋ねる様にするわね。
サミーちゃんとも、ちゃんと遊びたいしね」
「……そうか」
わずかに目を伏せる。
「では、その時は、我が色々案内してやろう……」
「うん、じゃあまた……」
背を向けかけた、その時。
「ちょっと待て。最後に一つだけ、聞かせろ」
「何?」
「エルフィナ……我に何をした?」
「……さ、さあ?」
一瞬だけ、視線が泳ぐ。
「な……何もね……してないけど……」
露骨に怪しい。
「そうか……まあ良い。気をつけて行くのだぞ」
それ以上は追及しない。
「うん、ありがとう。じゃあまたね」
――そして、去っていく。
「魔王様、今の者に、何かされたのですか?」
「……ああ」
サミエルは、あっさりと言った。
「k我はエルフィナの眷属になった様だ……」
「な、何ですって!そ、そんな……」
空気が凍る。
「ほれ、エルフィナが、我を〝サミーちゃん〟て呼んだろ?
あれで名付けされ、眷属になった様だな」
「そんな……我らの魔王様に……なんて事を……」
「良いのだよ」
「しかし魔王様ともあろうものが、人などの眷属に……」
「違う」
即座に否定。
「あれは、人ではないよ」
「えっ?人ではない?」
「気づかなかったのか?」
静かに言う。
「あの膨大な魔力量……
前に一度だけ、女神にあった事がある……
エルフィナの魔力は、
女神のそれをも、遥かに超えておった」
魔族達の息が止まる。
「エルフィナは、もはや神……
いやそれすら、超越したものなのかもしれん……
神の眷属……良いではないか……
神の使いとなるのだぞ」
(使いじゃなくて友達だけどね)
「……っ!?」
サミエルの目が見開かれる。
「誰だ?その声……」
「如何されました?」
「……エルフィナの声が、聞こえた気がした」
――場面転換。
「あの辺りよね?」
エルフィナが空から地形を見下ろす。
「スカイ、ありがとう。
一瞬で着いちゃったわね。
一旦ここで降ろしてくれる?」
「お嬢、一気に迷宮まで行けばいいのに、
何で、離れたここで降りたんだ?」
「迷宮の辺り高い木が多くて、
降りる場所無いんじゃない?それに……」
「それに?」
「ねえ?チッチとか、瘴気大丈夫なの?
体調崩したりしないかしら?
アカシック、分かる?」
「ああ、それを心配していたのですね……
大丈夫ですよ?」
「だってこの子、魔物よ?他のみんなも人じゃないし……
誰にどんな影響があるか分からないじゃない?」
「ああ、皆んなを気遣っていたのか?」
納得するスカイ。
「それは心配ありません。
エルフィナ様の眷属になった時点で、
魔物の分類を外れ、
貴方の眷属と言う括りになりますので」
(神の使い……って言うのが正しいんだけどな……)
「安心していいのね?」
ほっとした顔。
「だったら行きましょ」
「あ~、なんか空気が澄んでいて清々しいわね?
これがサミーちゃん達には毒だなんて、
不思議なものね?」
「いや、あいつはもう、ここでも平気なんじゃないか?」
「うっ……そうか……ごめん、サミーちゃん……」
「これからは、
気軽に愛称で人を呼ばない方が良いんじゃないか」
「はい、肝に銘じておきます!」
〝シュタッ〟と、片手を上げて、
宣誓するように言う。
「でもさ、スカイ。
眷属にするって、相手の合意も必要なんじゃない?」
「うむ……そうだな……まあ、あれだ……
合意してた……そう言う事なんだろ?」
「この円柱型の山で良いのよね?未踏の地だけあって、
木や草がぼうぼうで、
なかなか、入り口が分からないわね?」
「エルフィナ様~!ここですよ~!多分ですが~?」
30mほど先から、
チッチがピョンピョン跳ねながら叫んでいた。
「やだ、仔猫みたいに跳ねて……可愛くない?
ここ? チッチ何で分かるの?」
「要は、木や草を透視すれば良いんですよ?
私そう言うの得意です」
「本当だ~入り口よね?ここ?」
草の奥に隠れた入口。
「凄~いチッチ!」
「恐れ入ります」
覗いてみると、入り口の先は、薄暗い階段になっていた。
細く長い煉瓦の階段。
湿った空気。
「いきなり長い階段降るのね?
しかも暗いし狭いし……
あの先の明るい所が、階段の終わりみたいね?」
降りる。
降りる。
降りる――
「お~!やっと開けたな?って、何だこれ?」
見覚えのある景色。
「あれ?さっきの地上じゃない?ここ……」
「ずっと向こうに、降りた迷宮の入り口が見えるな?
どうなってる?」
「本当だ……さっき掻き分けた草よね?
また階段だし……行くしかない?」
「おいおい……またここか?
もう5回目だぞ?何かのトラップだなこれは……
どうする?お嬢?」
「ねえ、今度は今来た階段、
逆に登ってみない?なんか分かるかも?」
今度は階段を登ってみた。
「おいおいおい、登っても同じ場所だぞ?
あっそうだ!お嬢、階段の途中、
冒険者カードで、階層を確認してみろよ?
本当に同じ場所なんだか、
分かるかもしれないぞ?」
「あれれ?何これ?♾️階層ってなってるけど?
あっ、出たら0階層だ。
多分これエンドレスよね?どうする?」
「ママ……途中に変なとこあったよ?」
「あら、エレーナ。起きたの?」
「エルフィナ様、私も今それを言おうと思っていたのですが、
途中で1箇所、煉瓦に違和感を感じます」
「マジ?エレーナとチッチの感?」
「いえ、これも透視です。
煉瓦は透視しづらいですけどね」
「私は…………わかんない……」
「これか~確かに、これだけ材質が違うかの様に、
風化の感じが違うかも?」
「あれ?お嬢、なんかこれグラグラ……」
〝ガッチャン!〟
「「「「ワア~~~~!」」」」
階段が畳まれ、足場が消える。
ただの急坂になり、滑り落ちた。
滑る。
落ちる。
「ちょっと待ってこれ止まらな――!」
まるで巨大な滑り台。
闇の奥へと、一気に飲み込まれていく――
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